第22話 今あの子はどうしているかな?

今日は日曜日だ。

親に借金を返すため仕事を増やしたものも、まさか土曜日まで出勤をして平日人がいる時にはできない仕事をやっていた。

もちろん夜遅くまで。

ようやくこの疲れ切った体を休める日が訪れたのだ。

まさかここまでキツイとは思ってもみなかった。

土曜まで約1週間続けてみたが、相変わらず仕事に慣れないし、体は所々悲鳴を上げている。今まで人並み以下ぐらいにしか運動してこなかった自分を恨んだ。


「あっちこっち痛すぎなんだよ…」


もう何枚湿布を貼ったことか分からない。

それくらい体にガタが来ている。


「もっと運動できていたら…」


そう思っても仕方ない。ここまでしないと俺が掲げた目標には届かない…はずだから。


「今日はせっかく休みだから思う存分休める!そして寝る!」


やっぱり人の休息は寝るに限る。

今は午前9時。1回起床したが眠気が襲ってきた。もう寝たら熟睡できるレベルの。


「よし、寝よう…」


もう目を閉じたら意識が遠のいていった。



何時間経っただろうか。特に夢など見ることなく熟睡していたようだった。起き上がって携帯を見ると


「うわ、もう17時じゃん。」


辺りももう暗くなっていた。


「さすがに寝過ぎたかな…」


と思ったが、今の自分の体の状態を考えれば仕方ないだろう。変に納得できた。

立ち上がるとまだ体は痛むし、もう少し眠っていたいとも思う。

まだ覚醒しない頭でふと思った。


「柚子ちゃん大丈夫かな?」


あの日、カッコつけたあの日以来一切病院へ行ってない。行く時間がほぼ無かった。

日曜は病院休館日だし、平日はしょうがないにしろ土曜まで仕事で潰れてしまったら行ける日がない。

それになぜかあの日帰ったあと嫌な予感がした。


「何もなければいいけれど…」


木塚先生はいた容態が悪化するか分からないと言っていたし、直近までは精神面でも良くない状況が続いていたから本当に何があってもおかしくない状況だった。


「俺がしてあげれることって何もないんだよな…」


ただお見舞いに行って水ようかん渡して話してるだけ。病院に通ってた日は本当に柚子ちゃんの親族らしき人は誰も来なかった。木塚さんや看護師の人に言われたから病院に通っていたというのもあるが単純に心配だった。


「身寄りがないってのは本当かな…でもあの様子じゃ本当っぽいし…」


誰か来て欲しいとは思うけど絶望的な状況だろう。代わりに俺が拾ってあげても…と思ったが、


「俺には無理か。」


一瞬で笑って諦めた。

仮に柚子ちゃんに


「もし、身寄りがいないなら俺の家に…」


と言って柚子ちゃんにドン引きされるの嫌だし、実は身寄りがいて裁判事になってもごめんだ。

でも本当に身寄りがなければ俺が…

そう思ったがもう考えるはやめた。今は柚子ちゃんが元気になってくれるのを祈るだけ。


「来週1回でもお見舞いに行けたらいいな…」


携帯のカレンダーを見ながら思った。もうすぐクリスマスだし何か1つでも楽しいことをしてあげたいなと思った。


「クリスマスって何したらいいんだろう?」


1人で暮らすようになってからクリスマスに加え他のイベント事は何もしてこなかったから何したらいいか分からなかった。


「こういう時ってやっぱり彼女がいたらなぁ…」


彼女いない歴=年齢の自分が恥ずかしい。焦ってはいないけど。でもこんな俺でも彼女が欲しいとは思う。最近の女の子は可愛い子多いし、隣に立ってくれたらなんて考えたらワクワクする…


「もう考えるのやめよう。」


虚しくなるだけだから考えるのをやめ、晩ご飯にしようと思ったが、作る気もないしそれに冷蔵庫を開けて、


「料理しなさすぎなんだよな、俺。食材無さすぎ。」


冷蔵庫の中はほぼ空っぽの状態だった。


「外に食べに行こう。」


出かける支度をした。

24時間が長いと思っていたが、こんなにもあっさり過ぎてしまった日曜だった。


次の日、先週と同じく過酷な作業をしていた。

太田さんには笑顔で大荷物を持たされ走り、窓拭きをして…と過ごしていたら定時近くの時刻になった。


「俺には関係ないけど…」


未だ1週間経っても4枚しか綺麗になっていない窓を磨きながらつぶやいた。

すると太田さんがこっちに向かってきた。


「菊月!今日はもう上がっていいぞ!」

「え?まだ仕事終わってないですよ…?」


今日もいつも通り遅く帰るのだろうと思っていたから、いきなり上がっていいと言われて困惑した。

太田さんは俺の肩に手をポンと置いて、


「最近会ってないだろ?女に。」

「ちょっ…!何言ってるんですか!」


まだ、太田さんは俺に彼女とかできたと思っていたのか…これは誤解を解くまで時間がかかるかもしれない…


「本当、違いますから!勘弁してくださいよ!」

「まぁまぁ、今日はもういいから早く帰った帰った!」


太田さんは俺の背中をバンバン叩いて俺を帰らせようとした。


「本当にいいんですか?」

「大丈夫だから。早く行ってやんな。」


違うんだけどな…と思いつつ柚子ちゃんのことは気にはなっていたので言葉に甘えて、


「ありがとうございます!お疲れ様でした!」


なぜ今日は早く帰してくれたのかはとても疑問だったが、とにかく早く柚子ちゃんのことが確認したかったのであとは太田さんに任せて病院へ急いで向かった。

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