第15話 どうにかしたい
「全っ然足りねぇ…」
通帳の預金残高を見て嘆く。
病院から帰って柚子ちゃんの家の借金をどう返すか考えてた。
「出せてもこれくらい…はぁ…これからもやし生活だぞこれ。」
通帳を見て50万くらいならと思ったがさすがにもやし生活はキツいと思った。
「どうしようかな…誰かに借りるしか…」
とりあえず携帯を取り出し岡山に電話をかけた。
「はい、岡山っす。」
仕事やってる時の活気のある声ではなくだらけた声で岡山が電話に出た。
「あっ、岡山か?ちょっと今いいか?」
「なんだ、菊月さんすか…」
「んだよ、その言い方。」
残念そうにいう岡山に少しイラッと来た。
「嘘っす、嘘っす!何でした?」
「ちょっと相談しにくいことなんだけど…」
やはり言い出そうとすると言いにくかった。でも言わなきゃいけない
「金を貸して欲しいんだ。」
「へ?金ですか?珍しいっすね。」
今までそんなこと口にしたことなかったから驚くのは仕方ないと思った。
「そうなんだ…だけど額が…さ。」
「どれくらいなんすか?」
「150万…」
「ひゃっ!?150万!?」
こちらも驚くのは仕方ない。そんな額聞いたこともないと思うから。
「どうしたんすか!?何かあったんすか!?」
「それは言えない…」
岡山が勘繰るのも仕方ないと思う。でも柚子ちゃんのために何とかしたいという気持ちの方が強かった。
「頼む!岡山!」
「いやいや!無理っすよ俺には!大体俺まだ新人すよ!頼むの俺じゃないっすよ!」
「だよなぁ…」
確かに新人に頼む俺が悪いと思う。でも頼れるのが岡山とあと数人の友人しかいない
「菊月さん、俺じゃなくて杉野さんに頼めばいいじゃないですか!」
電話越しから岡山が、ニヤニヤしているのが伝わる。
「は、はぁ!?そんなこと杉野にお願いできるわけないだろ!」
「仲良いじゃないですか!2人!」
またニヤニヤしてるんだろうなと思う。
「とにかく杉野はダメだ!」
「そうっすか…押したらいけそうな気するんすけどね…」
「そ、それマジか?」
「なに気になってんすか!」
気にならないわけがないだろう。
「まぁ、それより岡山ダメか?」
「さっきも言いましたけど俺は無理っす。すんません。」
「了解…ありがとうな。」
「すんません、力になれなくて。」
「大丈夫!俺こそ悪かったな。」
と言って岡山との通話を切った。
通話を切ったことを確認してから携帯をベッドに投げ、自分もベッドへ飛び込んだ。
「マジでどうしようかな…」
とりあえずあと数人いる友人に電話をかけて同じことを言ってみたが、案の定全員に断られた。
「疲れた…」
今日はとりあえず寝た。
-翌日
普段通り仕事を終わらせた。
途中岡山に何故金を借りるのかというのをしつこく聞かれたが、当然黙秘した。
また杉野が俺たちの近くを通るたび、
「杉野さんに頼みましょうよ!」
とゴリ押ししてきたが、硬い意思でなんとか振り切った。
「とりあえず帰るか。」
今日は柚子ちゃんのいる病室へは行く気にはなれなかった。
ごめん!なんとかしたかったけど俺にはどうにもできなかったよ!と言ってもいいとは思ったがなんとかしたいとカッコつけたくなっていた。
「このまま何にもできなかったら俺カッコ悪すぎだよなぁ…」
何もできなかったことを想像し、柚子ちゃんの気を使うような苦笑いじみた表情が想像できた。
家に帰って、俺も消費者金融にお世話になろうかと思ったが、それは違うと思った。
しかし、自分でなんとかしようもどうにもできない状況だった。
「最後の手段使うか…」
俺は携帯を持ち番号履歴からある人へ電話をかけた。
-プルルル
「もしもし?どうしたの蓮?」
「あ、もしもし母さん?」
最後の手段、俺の親にしか頼れなかった。
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