第13話 最後の問題


『第五問は、「四択問題」だよ。では、第五問! バムコのゲーム「ダルアーガの塔」で、三十九階の宝箱の出し方で正しいのは、どれ? A 盾を炎の前で2回振る。B 剣を炎の前で2回振る。C 剣を炎の後ろで2回振る。D 剣を炎の前で三回振る。』


 士郎は素早く解答ボタンを押す。


『レッドムサシさんが解答するよ!』


 という声が鳴り響くのを待ち、もう一度選択肢を確認してから、『B』を押した。


『正解! ブゲイジャー・チームの勝利ですー!』


「よし!」士郎は小さいガッツポーズを取った。

「さすが、ムサシ」ジンスケが拍手する。「こんな聞いたこともないゲームまで、きちんと攻略法を暗記してるんですね」

「やはり年季の差ね」ガラシャもちょっとだけ士郎のことを見直したような口調だ。「相手チームの表情をずっと見てたんだけど、問題文の最初の一行が表示された瞬間に諦めてたわ。あの子たち、きっとこのゲームを知らなかったのね」

「おれだって、知らねえよ」士郎はメットの中で口元をにいっと歪めた。「これはサービス問題だな。問題文を冷静に読めば、だれでも正解たどりつける。正解がひとつ。そして、それぞれ一か所ずつ正解とちがう選択文が三つ用意されているんだ。そこに気づけば簡単。ガラシャだって、相手チームじゃなく、問題文を見ていれば即答できたはずさ。だのに、最初の一行で諦めちまったら、答えは絶対にでない。あいつらも、まだまだだな。プレイヤーが諦めたとき、それがゲームオーバーなのさ」

「さすが」ジンスケがさらに感心する。が、ひとこと余計なことも付け加える。「でも、現代文の成績は悪いですよね」

「悪くねえだろっ! よくもねえけど。そんなことより、だ!」士郎は余裕の態度で立ち続けている妖怪カイチュウ法師を指さす。「おれたちが勝ったんだから、このゲーセンは返してもらうぜ!」

「いやいや、まだまだですよ。ブゲイジャーのみなさま」法衣をまとったカイチュウ法師がにやにやと笑う。相変わらず右腕を背後に回したまま。なにか隠し持っているようだ。「まだまだ、最後の問題が残されています。わたくしの正体を言い当てていないじゃないですか」

「はん! そんなものは簡単だ」腰の刀に手をかけて、ブラックジュウベエが前に出る。「貴様の名前カイチュウとは、さしずめ解答の『解』に『虫』と書くのであろうさ。解と虫。この二文字を組み合わせて、漢字一文字にすれば答えは『蟹』。きさまの正体は、妖怪『蟹坊主』! それ以外にあるまい!」

「おー」ジュウベエの背後で、士郎とキナ子がちいさく拍手する。そしてそのさらに背後で、あづち姫が、「ま、クイズ合戦挑んでくる下りで、だいたい想像ついてたけどね」と小声でつぶやいていた。

「くっくっくっくっくっ……」カイチュウ法師、いや蟹坊主は、いかにも楽しそうに喉を鳴らして耳障りな笑声をもらす。「正解。いかにも拙僧の正体は蟹坊主。ならば剣豪戦隊のみなさま。これからが本当の最後にして、最大の問題でございましょう。なにせあなた方はこれから、このわたくしめを倒さなければならないのですから」





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