第8話 ピンク、燃える


『第一問!』


 アニメーションが動いて消え、出題画面がスタートする。

 隣のジンスケが「これを押すの?」と、操作盤中央のでっかい赤いボタンを示す。士郎は他の三人に分かりやすいように、指でボタンを示して説明した。

「答えが分かったら、このボタンを押す。基本早押し形式だから、最初にボタンを押したやつが解答する。解答は選択式と記入式。選択も記入も画面をタッチしてやってくれ」

 最初のキーワードが表示された。


『自転車屋』


 は? 意味が分からねえ。士郎は首を傾げる。

 が、ピンクガラシャがすかさず反応して解答ボタンを叩く。が、画面に表示されたのはこんな文字。


『ドカッチくんが解答します』


 え?とばかりにピンクガラシャが顔をあげて、相手チームを見る。小学生のドカッチが、眼鏡の位置を直すと落ち着いた様子でパネルをタッチしだした。

 彼の解答はみんなの画面で見ることができる。ドカッチは落ち着いて「ら」、「い」、と打ち込んでゆく。

「ごめん」悔し気なあづちの声がイアフォンから響く。

「いや、ドンマイだ。でも、いまので二人とも、もう答えがわかったの?」

 一応、士郎はガラシャに聞いてみた。

「ジャンルが科学でしょ」あづちの声はすでに落ち着いている。「科学の歴史で自転車屋が出てくるのは、一回だけ。ごめん、答えが『ライト兄弟』か『飛行機』かで一瞬躊躇したわ。向こうは迷いがなかった」

 ドカッチが「ライト兄弟」と入力し終える。

 画面の中で花火が打ちあがった。


『正解!』


 陽介たちは陽気にハイタッチをかまし、ドカッチの頭をくしゃくしゃにしている。操られているとはいえ、ガキどもにやられて、なんか無性に腹が立つ。

「なかなか手強いわね」ピンクガラシャが肩を回す。士郎の反対側では、ブラックジュウベエが指をぽきぽき鳴らした。いや、おまえ、出る幕あるのか?と心の中で突っ込みを入れておく。

 次の問題のジャンル・セレクトは、正解者に選択権が与えられる。陽介たちは迷わず再びの『科学』。ピンクガラシャの全身から、なにか見えない炎のようなものが立ち上るのを士郎は感じた。

 ピ、ピンクが燃えている……。

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