第7話 ゲームスタート
薄暗いフロアに、さっとスポットライトの光芒が走り、四台の小型筐体が姿を現す。専用シートがセットになった、比較的画面の小さいデスクトップ型のゲーム筐体。
「あ、クエパラか」レッドムサシが声を上げる。なんのことはない。ここのゲームセンターに置いているクイズゲームである。クエパラとは通称で、正式にはクエスチョン・パラダイスというアーケード・ゲームだ。ネット対応で、全国のプレイヤーと対戦できる。
「では、どうぞ、剣豪戦隊の皆々様、席におつき下さい」
カイチュウ法師に促され、レッドムサシ以下四人のブゲイジャーたちはクイズゲームのシートに腰を下ろした。
「対するは、わが寺子屋の教え子たち、四人!」法師が手をサッと振り、通路の向かい側に光が差す。そこにも四台のゲーム筐体があり、それぞれ脇に四人の人影が立っている。逆光になってよく見えなかった四人が、シートに腰かけるために動くと、彼らの顔が明らかになった。
向かって左手から、陽介、航平、小学生のメガネは
「井出ちゃん!」ピンクガラシャが、ちょっとあんたなにやってんのよ!とばかりに大きな声をあげて指差す。
やべえ。士郎はブゲイメットの中で眉をしかめた。そういえば井出ちゃんのやつ、おれのことを探していたんだっけ。さては、おれを探してここにきて、巻き込まれたか。ちょっと責任を感じちまうぜ。
「うーむ、催眠術かなにかで操られている感じだな」ブラックジュウベエは案外冷静に観察しているようだ。「まるでヒトガタみたいに目線の焦点が合ってない」
なるほど確かに言われてみると、その通りだ。ということは、あの四人、わざと負けてこちらに有利なプレイをしてくれたりはしない、ということだ。
まあ、もっとも所詮相手は中学生と小学生&井出ちゃんだ。こちらにはゲーマーであるこのおれ、赤穂士郎と、成績優秀なあづち姫がいる。妖怪に操られたあの四人に、よもや遅れは取るまい。
「ルールは簡単。四人ずつのチーム戦で、五問勝負。三問先取したチームの勝ち。よろしいですかな? よろしいですかな?」カイチュウ法師は嬉しそうに八人のプレイヤーを見回すと、左手の指をパチンと鳴らした。背中に隠した右手は、頑ななまでに前に出さない。
法師の合図で、スポットライトの光が柔らかくなり、筐体画面でゲームがスタートする。オープニングCGが流れ出したが、レッドムサシは赤いグラブの指先でスタートボタンを押してスキップさせる。このままにしておくて、危機に陥った村から主人公が旅に出発するストーリーが延々ながれることになるからだ。
『それでは、ゲーム・スタート!』
筐体のスピーカーから女の子の声が流れる。
『まずは、第一問。でも、その前に、ジャンル・セレクトだよ。チーム戦なんで、選択権はランダム。さーて、どっちのチームになるかなぁ? ……あ、こっちだぁ!』
ピーンという音が鳴って、画面に『相手チームがジャンルを選択します』の文字が流れる。
陽介たちはちらりとドカッチの方を一瞥して、なにやら自信ありげにうなずく。そして『科学』のジャンルを選択してきた。
士郎があづち姫の方へ視線を飛ばすと、ピンクガラシャのメットをうなずかせてあづちが親指を立て、「必ずとるわ」と伝えてくる。
まあ、ここは間違いあるまい。頭脳明晰、成績優秀のあづち姫。よもや小中学生に引けは取るまい。
『では、第一問。最初のクイズ形式は、「連想10ワード」だよ。順番に10個のキーワードが表示されるから、それらから連想して、答えが分かったら解答ボタンを押してね。じゃあ、行くよー』
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