7-2.
「ガチャガチャうるせぇぞテメェらっ!!! 人が大人しくしてりゃあ付け上がりやがって調子に乗ってんじゃねぇぞクソ共がっ!!!」
すると真中が一歩前に出て短髪君を一瞥し、そして申請書に目をやってから視線を短髪君に戻して声を出した。
「剛堂……だったか、随分と荒々しいアプローチだが、あまり感心しないやり方だな。申請書と言うのは双方の同意の元で受け取りに行き、見届け人となってくれる者と合意の元で署名して提出するものだろう。少々順番が違うようだ。力技も甚だしいのでは無いのか?」
そんな短髪君は、苛立ちの中で真中に言った。
「ふんっ! 力技だろうが何だろうが出しちまえばどっちだっていいんだよっ! 俺様としちゃぁこんなクソめんどい事なんかすっ飛ばしてもいいんだがなぁ。せっかく場所を提供してもらった挙句、相手の命の心配する必要が無いってんだぜ? だったら有難く有効活用させて貰うってもんだろうがよ」
「しかしやり方がな……」と言う真中に痺れを切らしたのか、短髪君は拳を振り上げて叫んだ。
「うっるせぇぇぇっ!!! テメェなんざ用はねぇんだよぉっ! 消えやがれぇぇぇっ!!!」
そう言って振り上げた拳を降ろそうとしても、その腕を握る人物……
と言うより、壁君が短髪君の腕を掴んで、そうさはせなかった。
例えそうしても真中に当たることは無かっただろうし、当の真中も何食わぬ顔でその場に立っていたし。
動きを止められた短髪君は目だけをギロリと壁君に向けてから言う。
「何のつもりだぁ有坂、テメェもこのクソ女共と一緒にぶん殴られてぇってのか?あぁっ!!!」
すると、その大声を聞きつけてあたしの方に1人の女子生徒が駆けつけて声を出したけど、少々誤解があるようで怒りを向ける矛先を間違えていた。
「待て待て待て待てぇいっ! おいコラ龍っ! 何やっとんねんワレっ!? こないな公衆の面前で暴力やなんて許さへんでぇっ! ウチが相手したるっ! かかってこいや、このドアホぉっ!!!」
と言って飛びかかろうとするハヅキチを、後ろから腰にしがみついて声を出すなるぴょん。
「ちょっ! やめりぃやハヅキチ! なんか様子が違ぉとるやん! 落ち着こ! 取り敢えず落ち着こっ!」
そう言うなるぴょんに構わず、ズルズルと進撃するハヅキチは壁君に声を出す。
「どないしたんや龍っ!!! 怖気付いたんかいワレ! かかってこんかぁいっ!!!」
と言って更に進行するハヅキチに、堪えきれなくなったなるぴょんが後ろにいたツクに声を出す。
「ツクぅーーーっ! 力貸してぇや! うちひとりじゃかなわへん、お願いやーーーっ!」
と言われ、慌てたツクがハヅキチに近寄って前に回り込む。
ハヅキチの腰辺りにしがみついて動きを止めようとしている時に、須藤ツインズもやって来た。
「はなしぃや、ツク! なるぴょん! 今ウチが……ウチが龍を更正してやらんと誰も止められへんようになるさかい、止めんといてんかぁっ!」
すると、今度はツクがハヅキチを落ち着かせるように声を出した。
「違うよハヅキチ! 有坂君は何にもしてないよぉ! 逆だから、ホント逆だから! 止めただけだから落ち着いてぇぇぇっ!!!」
ツクがそう叫ぶとハヅキチは「へっ?」と息をもらし、壁君を見上げ、その手が短髪君の腕を掴んでいるのを確認して前進する力を抜いて言った。
「いやぁ、まぁそうやと思ぉたわ。昔っから虫一匹潰されへん男やったさかいなぁ。よぉやったわ龍、よぉ止めた! 偉いのぉ、これでアンタのオカンにえぇ報告が出来るっちゅうもんや」
「ハッハッハッハ!」と、腰に手を当てて大笑いするハヅキチに、なんと壁が……壁君が声を出した。
「力は入っとらんかった……」
なかなかなバリトンボイスに耳心地を持っていかれそうになり、思わず『麒麟です』って言ってって言いたくなる。
「はぁ?」と息を漏らしたハヅキチに、言葉を追加する壁君。
「殴る気ぃはなかった……」
その言葉を聞き、短髪君は「けっ!」と言って壁君から乱暴に腕を引き抜いてあたし達を睨みつけた。
ゆっくりとあたし達を見回す。そしてツクの所で視線を固定してニヤリと笑い、そして言葉を出した。
「おぉ、どっかで見た顔だと思ったら、香川の約立たず一族の恥っさらしじゃねぇか。テメェも此処に来ていやがったのか? はんっ! 今度は誰を裏切るのか、楽しみだなぁ、おい!」
と言って短髪君がツクを睨みつけ、そしてツクは力なく俯く。
すこぶるムカついた。
すると、あたしの後ろから短髪君にマイマイが声を荒らげた。
「ちょっと剛堂、あんたいい加減にしなさいよ! そんな昔のこと、ツクには関係ないじゃない! 産まれる前の事言われたって……それにツクは何も悪くないわ!」
「そうよそうよっ! ツクには関係ない事だし、アンタにも関係ないじゃない!」
と、さくらもマイマイに同調する。
その横で、真中があたしに耳打ちするように言ってきた。
「志乃に喧嘩を売ってるのが
「そんな名前だったっけ?」と言うと、真中が困った顔で肩を竦める。
「はっ! 関係ねぇだと、関係ねぇ事ねぇだろうが! コイツら一族が何をしたか、テメェらだって分かってんだろうが、このクソ共がっ! 四国に住んでるやつの大半はコイツら一族を恨んでだろうがよっ!」
と、マイマイとさくらに噛み付き、そしてツクを睨みつけて言った。
「おい、テメェ! どの面下げて此処にきやがった、あぁっ!? 此処はなぁ、テメェみてぇな腐れた一族が来ていい場所じゃねぇんだよ! それとも何か? ようやく俺様と勝負する気になったってぇのか?」
そう言われたツクは俯いたままだけど、歯を食いしばったのだろう、両頬がピクピクと震えていた。
そんなツクに短髪……
剛堂? 君がさらに恫喝する。
「けっ! やっぱりダンマリかよ、クソがっ! 何にも言わねぇってこたぁ認めてるって事じゃねえかよ、あぁっ! 結局テメェらの一族は卑怯もんなんだよなぁ! テメェもダンマリでよぉ、いつ寝首かくかわ分からねぇしなぁ!」
そう言い放った剛堂君が「けっ!」と言葉を吐き捨て、更に言ってくる。
「テメェの母親も同類のクソだぜ! テメェと一緒で何言ってもダンマリだったしなぁ。親子でまた裏切りの相談でもしてんだろうが、あぁっ! それに、テメェんとこのキチガイババァは卑怯もんだしなぁ。人が『悪魔』に襲われそうになっても黙って見てたそうじゃねぇかよ」
その言葉にツクは歯を食いしばるけど何も言わず、その代わりにさくらが声を出した。
「ちょっとそんな言い方無いじゃない! あの時、ツクのおばぁちゃんはまだ『解縛式』も終わって無かったから、魔力なんて使えなくてどうしょうも無かっただけじゃない!」
そしてマイマイも続く。
「そうよ! きっとツクのおばぁちゃんだって悔しい思いをしたはずだわ! 適当なこと言わないで! あんただって自分の家族の悪口言われたくないでしょおっ!」
そのふたりの言葉を聞き、ニャァと笑って声を出す剛堂短髪君。
「あぁ? 何言ってやがる、テメェらだってそう思ってただろうがよ、こいつら一族にゃ何の価値なんざねぇって事をよぉ。こいつんとこの妖怪ババァもキチガイババァも、それにその後ろに隠れて何にも出来ねぇ母親も……生きてる価値なんてねぇんだよ」
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