6-4.
「「「「うわぁぁぁっっっ!!!」」」」
「「「「きゃぁぁぁっっっ!!!」」」」
「「「遺伝子残させてぇぇぇ!!!」」」
いや無理でしょっ! って、だからプラスって何っ!?!?
それに何その数値っ!?!? 『神之原』ってだけで忖度してないっ!?!?
と、突っ込んであたしは立ち上がり、その瞬間に女子生徒全員が立ち上がって拍手をしてくれる。
まぁ悪い気はしないかなと思い、あたしは保護者席視線を向ける。と、お母さんが微笑んで軽く手を振ってくれていた。
あたしも小さく手を振り返してからステージ下に向かう。
ゆっくりと右側の階段を上がり、真ん中の空いている隙間、真中と男子生徒代表君の間に立って講堂内を見渡す。
ステージ真ん中から見る講堂内は、向かって右側の男子生徒はポカンとこちらを向きながらパチパチと拍手。左側の女子生徒は嬉しそうな生徒や頬を高揚させている生徒、うっとりと見つめる生徒がバチバチと拍手していた。
保護者席からは珍しいものを見たような表情が多く向けられている。
「以上がランキング上位10名となり、9月までの男女総合の対外試合の選抜メンバーとなります。試合の予定としては……」
眞鍋先生の話の中、隣に立つ男子生徒代表君が話しかけてきた。
「さすがは神之原さんだね、あの数値には驚かされたよ。僕も少しは自信があったけど、まるで歯が立たなかったみたいだね」
穏やかな話し方があたしの左上から降ってくる。あたしは前を向いたまま「そうかな」と言うと、更に言葉を出してきた。
「神之原さんの噂はメディアや配信ニュースでよく見てたけど、やっぱり直に目で見て雰囲気を感じないと、その強さは理解できない。こうして同じ学園に通い、同じ選抜メンバーに選ばれた事を誇りに思うよ」
そんな嫌味にならない口調は普通の女性ならば気持ちが上がるもんなんだろうなと思いつつ、あたしもこんな言葉を返す。
「あんな数値なんて気にする必要もないよ」
と、目も合わさずに言った。
すると、男子代表君は驚きながら声を出した。
「それはどう言うことなんだい? あれ程の魔力数値を気にするななんて。君の出した魔力数値は、恐らく現時点で世界一の記録だよ。それを無視する事なんて無理なんじゃないのかな。それとも何か理由でもあるのかい?」
多分あたしを見ながら話してるんだろうけど、そんな男子代表君を見ずに話し続ける。
「どれだけ高い魔力数値を叩き出したとしても、結局はその人の基準にすらならない無用な基準だとあたしは思うけどね」
「それはどう言うことなんだい?」と、先程の爽やかな話し方のトーンを落とし不思議そうな口調で聞いてくる。
「簡単だよ、あんな無機物にいくら強い魔力を打ち込んでも意味無くない? 本来あたし達が相手をするのは頭脳を持った対戦者か、破壊力を持った『悪魔』なんだからね」
あたしがそう言うと、男子代表君はこんな反論をしてくる。
「そうかな? それでも魔力数値は対戦相手の基準になるし、『悪魔』の討伐時のパーティ編成の基準にもなるんじゃないかな」
そんなご最もな反論に、あたしは答えた。
「魔力数値なんて気にしててもリアルな戦いにはあまり関係無いんじゃない? 打撃や蹴りの魔力数値がいくら高くても対戦相手の身体能力で
男子代表君は少し沈黙し、それから感心したように話し始めた。
「生きた数値か……なるほど、そんな風には考えた事も無かったよ。さすがは神之原さんだね、似たようなことを幼い頃に聞かされたけど、やっぱり君も『神之原』なんだね」
と言う言葉に、少し引っ掛かったあたしは「どゆこと?」と男子代表君を見ずに聞いた。
「僕は昔、地元で君のお兄さんに会った事があるんだよ」
あたしの兄貴に?
と考えて、確かこの男子代表君はカノっちの知り合いだったんだっけ?
だとすれば東京の人なんだろうから、どちらの兄貴かは簡単に推測出来る。
「
「うん、そうだね、神之原斗哉さん。僕が小学生の頃に学園交流会の一環で武術指導をして貰った事があってね。魔力無しの体術でも全く歯が立たなかったどころか、拳や蹴りの一発すら届かなかったよ。小さい頃から体術には自信があったんだけど、圧倒的な力の差を見せつけられてね。その頃から神之原斗哉さんは僕の憧れなんだ」
そんな事があったのかと、意外なところで『神之原』と接点があったんだなと思っていると更に言葉を出してきた。
「その時にね、こう言われたんだよ。『目に見えるものや人の理解出来ることにばかり目を向けていたら強くはなれない。いつでもその先を見据えていないと高みには登れないよ』ってね」
と言う男子代表君に、あたしはその時の事を想像しながら言った。
「斗哉はね、優しいヤツだからいくらでも相手をしてくれたんじゃない? それこそ満身創痍になるくらいに」
すると、男子代表君は感心したように言葉を出した。
「へぇ、よく分かったね。君の言う通り、僕は一矢報いたくて何度も勝負を挑み、それこそ僕が動けなくなるまで嫌な顔ひとつ見せずに相手をしてくれたんだ。その時に僕は思い知らされたんだ。この人こそが真の強者なんだってね。その日から僕は君のお兄さんに憧れて日々精進して来たんだ。そしていつか君のお兄さんに肩を並べれる魔法使いになりたいと思ってるよ」
まぁ、伊達にあの兄貴の妹を15年間やってる訳じゃないからね。
最も、一緒に暮らしたのはあたしが11歳までだけど。
ただまぁ斗哉と肩を並べるなんて大きな目標を持ってるみたいだけどと思いつつ、あたしは男子代表君にこう聞いてみる。
「実際のところ、斗哉の事を男子代表君はどう思ってるの」
あたしの言葉を聞いた男子代表君は、一泊置いて言ってきた。
「ぼくの名前は
と言ってきたから、「そっ」と前を見たまま返事をした。それを聞いた男子代表……仮屋島君は言ってくる。
「そうだね、君のお兄さんは僕にとっては果てしなく遠い存在かな。それでも必ず追いついてみせるよ」
なんて格好よく決めた仮屋島君に、あたしは言った。
「そうなんだ……それはまた、ぬるま湯の様な夢物語だね。せいぜい頑張るといいよ」
そんな言葉に仮屋島君は怒ることも無く、驚いた様な声を出してくる。
「それは一体どう言う意味なんだい? まるで僕の努力が無駄みたいな言い方だけど」
そう言った仮屋島君に、あたしは言葉を続けた。
「そうだね、そんな気持ちで努力したって斗哉には一切通用しないって断言してあげるよ。本当にあの男を超えたければ命をかけて対峙して、命を取る気で戦わないと足元にも及ばないからね」
そこであたしはようやく、仮屋島君に視線を向けて言ってやる。
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