第4章:カノっち
4-1.
あたしがそう言うと、その子達は困惑した表情になった。けど、それでもぎこちない声で言っくれた。
「ホント! かみ……し……志乃。約束だよ」
「かみ……か……し……志乃……絶対だよ」
了解りょ〜〜〜かい、絶対約束っ!
と言って、サムズアップ。
それを見ていた周りの子達も寄って来たので、あたしは全く同じリクエストをした。
皆んな言いにくそうに、それでもあたしを名前で呼んでくれた。だから、あたしも明日の撮影を快諾する。
人の呼び方のイベントは最初のうちに終わらせとくに限るからね。
ようやく手にした制服を自室に持って上がり、早速袖を通すべく、ひとつひとつベッドの上に並べる。
まずはブラウスを着て、ボタンを留めるとあら不思議。
と言うか……
マジっすか? これ?
スゲェ……
確かに先月、制服採寸の時に首周りや肩幅や、胸元はトップとアンダー。ウエストサイズに肩からヒップまでの長さと、とにかく細かく採寸されたけど……
ホント身体にピッタリフィット。
しかも、このブラウスは伸縮性が凄くて上体を左右に捻っても全然窮屈にならない。
そのままの格好でシャワールームの大きめな鏡に自身を写しこみ、再び上体を右に左に捻ってみる。
ブラウスの裾は、捻った方の逆側が少し上がる程度で姿勢を戻してもヨレも皺も入らない。
まぁ、新品だから当然だけどテンションが上がったことは間違いなく、鏡の向こうに写るあたしはブラウスの下はショーツのまんま。
何度も何度も上体を捻ったり、角度を変えてはご満悦。
お母さんが見てたら確実に、ゲンコツ猫パンチを貰っていただろう。
ただ胸の膨らみに合わせて作られたブラウスだけに、下がショーツだけの姿は見事な程にエロエロだ。
なるピョンの制服姿を見るのが楽しみで仕方ない。
部屋に戻ってスカートを履き、ブレザーを羽織ってネクタイを締める。帯状ベルトを腰にまわしてシャワールームに戻り全身チェック。
うん、いい!
あたしは他の子達の制服姿が見たくて見たくてうずうずし始め、とりあえず自撮りで1枚撮って親友グルチャと家族グルチャに送信する。
いそいそと部屋から出た瞬間、チャット受信音が鳴り、スマホを確認すると由乃の名前とアイコンが表示されていた。
考えてみれば天照院学園はまだ春休暇だから由乃もあたしが上げた画像を直ぐに確認し、速攻で返信出来るのかと納得している。と、チャット画面には延々とハートマークが送られ続ける。
怒ればいいのか、喜べばいいのか……
とりあえず1分待ってみて、それでも続くならひとこと言わねばと思っている。すると、きっかり1分で連投が止まった。
さすが我が妹。姉のことを良く知ってるではないか。
最後に、「今晩もリモートしよ」の文字で締めくられる。
OKスタンプを送って移動を始めると、エレベーターの方からカノっちが現れあたしを確認すると手を振って向かってきた。
真新しい制服姿が違反的に可愛かったのだが、制服姿の下の真っ黒なニーハイソックスが破壊力抜群すぎて悶絶しそうになる。
ロングヘアーで小顔の童顔が全国でトップクラスに人気のある制服を纏ったうえに、ニーハイであたしの目の前に現れた。ということは、もう頂いちゃってもいいと言うことでしょうか?
などと思いつつ、カノっちの到着を待っている。と、あたしの前に到着する頃には頬を赤く染めて上目遣いになっていた。
なっ……マズイ……その姿で上目遣いは理性が……
タヒる!
ただまぁあたしがジロジロ見すぎて恥ずかしかったのかなと思っていると、予想外の言葉がカノっちの口から出てきた。
「志乃……綺麗……モデルさんかと思ったよぉ……」
と言って、ウットリし始める。
いやいやいやいや! ナイナイナイナイ!
「この制服を着れば誰だって綺麗に見えるし、ゲスいあたしなんて馬子にも衣装ってヤツだし、カノっちの方がとっても似合ってて、超お嬢様に拍車がかかってるし」
あたしがそう言うとカノっちは驚いた表情を固定し、そして困惑の顔つきで言ってきた。
「ひょっとして……バレてた?」
いやまぁバレてたかと言われれば何となくだったけど、ちょっと話し方と仕草のチグハグさに無理を感じてたけど……と言いながらネタばらしをする。
「確信に変わったのはね、リカリぃ……白鳥立華ちゃんからカノっちの事を聞いたからだよ」
すると、カノっちはパァっと明るい表情になって言葉を出した。
隠してきた本来の自分を晒しながら……
「まぁ、白鳥様からお聞きになられたのですね。
昨夜、リカリぃからの直チャットで、神楽坂家は白鳥家に並ぶ旧家でカノっちとは昔から面識があるので仲良くして欲しいと言われていた。
【神楽坂様はとても社交的で気立ても良く努力家では有りますが、少々頑張りすぎる面も有りますので、気にかけて頂けると有難いです】
ただ、リカリぃに言われるまでもなく、こうして仲良くなってるよとチャットで返す。
【志乃らしくて大変結構です。ただ神楽坂様までが志乃の毒牙に掛かるのは心が痛みますw】
と、返ってきた。
良く分かってるぢゃないか親友よ。
この飢えたゲス女に大好物を与えれば、どうなるかはご存知だろう、ゲッヘッヘ!
【ほどほどにお願いします】
と、リカリぃ。
これでリカリぃの公認は取れたから安心してゲスってやろうと、あたしの中の本能が叫ぶ。
それはそれで良いとして……
良いのかどうかは後回しにして、あたしは隠していたハズの自分をさらけ出してしまったカノっちに聞いてみる。
「どうしてお嬢様って事を隠してたの? 別に内緒にする事でも無いと思うけどさ」
その言葉を聞いたカノっちは困惑顔から恥ずかしそうに顔を赤らめ、モジモジし始めた。
愛の告白でもされるのかなって思っていたら、こんな言葉がやってきた。
「あの……志乃のお部屋で……いいかな? なんか……恥ずかしくて」
っと、上目遣いに言ってくる。
この後のことは全てあたしに委ねるって事ですかぁ…
「いいよ、まだ明るいけどね」
っと言うと、カノっ「えっ?」と言って首を傾げた。
いかんいかん……
本能の方で返事をしてしまったと思いつつ、「何でもない何でもない」と言いながら部屋の扉を開いてカノっちを招いた。
部屋に入ったカノっちは中を見回しながら「わぁ、明るいねぇ」と言ってふたつある窓のうちの、駐車場の見える小窓から嬉しそうに外を見てる。
「角部屋だからね、朝なんて陽の光で目覚めるくらい明るかったかなぁ」
あたしの部屋は東側の唯一の角部屋で、本来なら対面の部屋も角部屋になるはず。だけど、そこは非常用階段となっていた。
その為に、この寄宿舎では東側のこの部屋と真下の部屋だけが角部屋で、西側の角部屋は掃除用具入れになっていた。
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