第3章:魔力測定
3-1.
寄宿舎にはテレビが無い為に、『悪魔』の出現とロストのニュースは寄宿舎内の放送で知る事になった。
『私立アリシア学園』の寄宿舎及び訓練所のある山間部は、半径30キロもの広大な魔法陣が施されている為に『悪魔』の影響は極めて低いと判断され、本日の男女合同魔力測定は行われるようだ。
あたし達は、寄宿舎からアリシア専用のバスに乗り込む。山道を30分移動した訓練場で魔力測定の説明を受けるべく、テンションダダ下がりで待機していた。
今現在、私達が説明を受けようとしている所は、駐車場と2つの待機所以外は森の木々だけが全面生い茂っている自然豊かな場所だ。
景色的には、森林浴やキャンプが楽しめそうな所だからいいのだろう。ただ、あたし達女子のテンションを下げているのは当然、男子生徒の存在だ。
魔力測定の説明をするのもアリシア男子校の男性教師なだけに、女子生徒のモチベーションは全く上がらない。
男子生徒の方は女子生徒が気になるらしく、殆どの男子生徒がこちらをチラチラ見ているのがムカつくし。
そんなウザイ状況の中で、本日の魔力測定の内容の説明が開始された。
「あ〜〜〜っ、男子生徒及び女子生徒の諸君、おはよう。俺は、『私立アリシア魔法学園』男子校の武術担任、
と言って、立花担当主任は咳払いをしてから再び声を出す。
「さっそく魔力測定の説明に入るぞ。これより男子4人、女子4人の計8人のグループに分けて魔力測定を開始する。グループ分けはランダムに抽選され、各生徒のスマホに送信されているので確認をしておくように」
そう言って立花担当主任は、腕時計で時間を確認しながら言葉を続けた。
「現在の時刻が午前8時5分、開始時刻が午前8時30分。AからHまでのスタート地点に、1番から3番までのグループは速やかに移動する事。他の生徒は待機所で待ってろ」
そこまで言って視線を戻し、一旦全生徒を見やってから再び声を出す。
「測定の内容は、各コースのスタート地点から8人同時にスタートし、民間の召喚魔法士の方々の協力のもと、森の中のコースに出現する低級悪魔の『ガウドック』や『ジャンプモンキー』に模した召喚獣を倒しながら800メートル先のゴール地点に、5分以内で辿り着くというものだ」
時折タブレットを操作しながら立花担当主任は説明を続けた。
「この『私立アリシア魔法学園』に入学する者ならば、これくらいの召喚獣相手なぞ取るに足らんものだろう。ただし、制限時間の5分を過ぎた者には減点処分が下されるので、時間はきっちりと把握しておくように。以上だ」
っと言って立花担当主任は生徒に一礼をし、そして「速やかに移動しろ」っと、大声を張り上げた。
男子生徒からの視線からようやく解放された女子生徒は、数人を残して女子生徒専用の待機所内に移動する。
あたしとツクとカノっちと須藤ツインズ、ハズキチとさくらで固まり、先程の男子生徒達の態度に怒り心頭で話していた。
ちなみに、マイマイは3番グループの為にスタート地点に向かって行くのを手を振って見送った後で、待機所に入り込んだのだ。
「ったく! 何なんだろうね、あのウザさ全開のチラ見は! 嫌いだわぁ」
あたしがそう言うと、ハヅキチも言ってくる。
「ホンマや! あのスケベぇな視線はごっつムカついたわ! 先生達も男子と女子の間に仕切りでも付けといてくれとったらええのになぁ」
と、腕組みをして憤慨している。
その意見に皆が同意し、プリプリしながら男子生徒への文句を言い合った。
「見てみて、もうすぐ第1組がスタートするみたいだよ。うわっ! 本当に男子と一緒のスタートなんだ……キモっ!」
っと言いながら、さくらが待機所にある数台のモニターのひとつを指さして言った。
モニターの中では男女交互に2メートル程の間隔を開け、AからHのスタートラインに着いて合図を待っている。
女子生徒は進行方向を真っ直ぐ見ているけど、男子生徒はチラチラと女子生徒を見ているのがモニターの中にハッキリ映っていた。
その姿に待機所の女子生徒は一斉にブーイングを上げ、モニターの女子生徒に哀れみと同情を送る。
この魔力測定は、スタート地点から下る様にゴール地点まで一斉に降りて行く。森の中に入り込み、出現する低級悪魔に模した召喚獣を倒しながら制限時間内に走り抜けるという単純なものだ。
召喚獣を倒した数がポイントとなり、個人の成績になるシステムらしい。出現する召喚獣はどれも1ポイントとなっている。
如何に召喚獣を倒しながらゴールに向かうかが重要で、どれだけポイントを稼げるかが鍵となる。
さらに、森の中に設置されている打撃、蹴り、魔力放出の魔力測定ポイントがある。そこに打ち込んで出されたスコアもポイントとして加算され、個人の総合成績となるのだ。
魔力測定ポイントは、それぞれのコースに個別に備えられている。
また、出現する低級悪魔に模した召喚獣は隣のコースであっても横取りしようが何であろうが倒した者勝ち。
つまり男女8人でスタートしたところで測定内容は個人に反映する為に、混合にする意味は全くと言っていいほど皆無なのだ。
男女合わせて480人の生徒を計測するのに6時間もかけるなら、男女に分けて日にちを変えれば3時間で終わるのに。
そんな言葉が待機所のあちらこちらで発せられていると、モニターの中の男女8人から各々主要魔力の色が湧き始めてきた。
待機所内には9箇所、モニターがある。
8箇所のモニターの上には、AからHのアルファベットが張り出されていて、コース毎の生徒が写し出せれていた。
一番大きなセンターモニターでは、全員の成績を表示する様だ。
いよいよスタートの合図かと、ざわめいていた待機所から声が無くなる。全員が固唾を飲んでモニターを見ていると、突然8人の生徒が飛び出して行った。
モニターからは音は出ないようだ。
進行する8人の生徒は常にAからHに振り分けられたモニターに、ライブ映像として映し出されている。
スタートして程なく、森の中に侵入した生徒達が様々な方向から襲いかかる召喚獣を主要魔力を纏った拳や蹴りで倒しながら進行。
魔力測定ポイントに到達した者から打撃や蹴り、放出魔法をポイントに打ち込む。
その測定ポイントを通過すると、各生徒が映し出されたモニターの下にタイムと召喚獣を倒した撃破ポイントが表示された。
ちなみに、魔力測定ポイントで出るスコアは撃破ポイントと放出魔力の数値。そして最終到達タイムを合わせた総合ポイントとして入学式で発表され、そこで学年最初のランキングが決まるのだ。
最初の組がスタートして早い生徒で4分30秒、遅い生徒でも4分55秒でゴール地点に到達した。
すると、突然モニターの画面がスタート地点で待機している2組目の生徒に変わる。
そこにいる生徒は全員が主要魔力を纏った状態で、いつでも飛び出せる体制で停止していた。
程なく生徒達が飛び出して行き、各々の行動を映像が追っていく。
2組目の生徒がゴール地点に到達した後に画面がスタート地点に戻る。と、Cモニターの中で緑色の魔力を纏ったマイマイが進行方向を見つめている映像が映し出された。
直後に飛び出して行くマイマイ。
森の中に飛び込んで、召喚獣を打撃で蹴りで撃破しながら進行。
打撃ポイントや蹴りポイントを見事な体捌きでこなし、魔力放出ポイントではド派手に魔法をぶち込んで森から抜け出しゴール地点を通過。
4分56秒でマイマイの測定が終わって、画面が次の生徒に切り替った。
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