2-9.
「ふ〜〜〜ん、神之原ってメチャメチャ美人って聞いとったけど……なんや、超美人やん! しかも超スタイルええし、ビーナスの再来っちゅうんはホンマやったんやなぁ」
っと、コテコテの関西弁で言われた。
いやぁ、どこで聞いたか知らないけどそれヘイトだよヘイト。
「あたしはそんな良いもんじゃ無いよぉ」と言っても、その子は首を左右に降って否定してくる。
「いぃや、アンタがそないな事言うても、ウチが今この目で見てから言うとんねんから間違い無い。あんたこそ正真正銘の、ミス・アリシアンや」
いや、ミス・アリシアンって聞いたことが無いし。
そんな称号なんていらないし。
今朝知り合った真中や、さっきの真浄寺咲奈ちゃんみたいな美人さんとか。神凪月詩ちゃんや神楽坂歌音ちゃんの方がよっぽど可愛いし。
そんなあたしの意見に、目の前の赤いリボン子ちゃんは、「という事やさかい……」と言ってスマホを持ち上げ言葉を出す。
「ウチと一枚撮ってんか?」
またこのパターンかぁ……と思いつつ、ニカッと笑う屈託のない表情を見るリボン子ちゃん。断る理由も無いもんだから、「まぁ……いいけど」と言って了承する。
そのリボン子ちゃんは通りすがる女子生徒に自らのスマホを渡し、あたしに寄り添って「ポーズやでポーズ」と、楽しげに言ってきた。
あたしは右側のリボン子ちゃんに顔を寄せ、左手でOKマークを作って左頬に押し当てニッコリ。
なのに、スマホを渡された女生徒は何故か画面を見ながら頬を染めて動かなくなった。
「何しとん? はよしてや」と、リボン子ちゃんに言われ、ハッと我に返って撮影を始める。
パシャッ! パシャッ!
撮影を終え、その子はスマホをリボン子ちゃんに返すと同時に自らのスマホ取り出してリボン子ちゃんに差し出す。
「ウチも撮って貰えるかな」と言い、そしてあたしを見て「お願い出来るやろか?」と、恥ずかしそうに言われた。
こちらの子はお下げで、前髪がカーテンのように先端が頬まで伸びている。けど、目元全体は確認出来る程で。
薄いブルーのブラウスで茶色のブレザーの真ん中に深紅の棒ネクタイがアクセントとなって、たわわな胸元まで伸びている。
茶色と赤に、薄いブルーの入ったタータンチェックの膝上スカートが可愛さを強調していた。
そんな子にお願いされ、断るやつは生存する価値は無し。
「いいよ」と言ったあたしの右横に立ち、「あの……さっきのポーズで」と言われたので同じポーズをキメてあげる。
パシャッ!
「ありがとう、神之原さん。ウチは兵庫県の私立淡路女子学園から来ました、
と言って七瑠ちゃんはフワリと微笑んで踵を返し、スキップしなから行ってしまった。
きっと正面から見ると、あのたわわが上下に弾んでるんだろうなと思いつつ、去り行くリボン子ちゃんに視線を向ける。と、何やらスマホ画面をニヤニヤしながら見ている。
「おぉっ……スゲェ……ほんまもんの神之原やぁ。しかもごっつ可愛いやんけぇ。自慢しよぉ……友達に送りまくって自慢したろぉ」
そう呟きながらニヤケ顔で歩き始める。
いやぁ……お名前はぁ……
っと、思いながら眺めること暫し。10メートル先でリボン子ちゃんが何かを思い出したのか突然ピシッと背筋を伸ばし、急に反転してこちらにダッシュ。
あたしの前でビタッと止まって名乗ってきた。
「ウチ、大阪の私立箕面学園から来た
と言って再び振り返り、スマホの画面を見ながら歩き始める。
「待ち受けにしとこ」
そう呟いて去っていった。
なんだろう……
おばぁちゃんやお母さんの言った通り、アリシアってホント個性的な子ばっかりなんだなと思いつつ、あたしも約束の場所に行くべく移動を開始した。
フードコートに侵入したあたしは真っ直ぐにドリンクコーナーに向かう。と、そこには既に月詩ちゃんと歌音ちゃんが待っていた。
そして歌音ちゃんの後ろに佇む様に、ひとりの女子生徒が立っているのか確認できる。
「お待ちぃ」と言いながら近づくと、二人は笑顔になって手を降ってくれた。
歌音ちゃんの後ろの子は、身長は歌音ちゃんと同じくらい。
ストレートのロングヘアで無表情。白のブラウスに黒のブレザーとスカートで、胸元の金色の天使の羽根を模したエンブレムが印象的。
姿勢正しくし、ただただ真っ直ぐにあたしを見ているだけだった。
あたしが到着すると、直ぐに歌音ちゃんが後ろの子に手を向けて紹介してくれる。
「神之原さん、この子は私と同じ東京都出身で、私立聖アムラエル女学院から来た
その安寧ちゃんはペコりとお辞儀をしたもんだから、あたしもそれに習いお辞儀して自己紹介する。
「初めまして、あたしは……」
と言ったところで、安寧ちゃんが遮るように声を出す。
「知ってる……神之原志乃さん。……有名だから」
そうっスか、そりゃ話が早いッス。
なんて思いつつ、安寧ちゃんを見つめている。
その安寧ちゃんも、あたしを見つめたまま無言で無表情だけど何故か頬だけは高揚し始めていた。
すると、歌音ちゃんが慌てるようにあたしに言ってくる。
「あの、神之原さん。安寧ちゃんはすっごくシャイで、あまりお話も得意じゃ無いんです。それと、安寧ちゃんも大の『神之原家』ファンで、神之原さんのファンって知ってるから連れてきたんです」
「迷惑でしたか?」と、上目遣いに言われ、その表情に対して「迷惑です!」と言うヤツが居るなら、あたしはグーパンチをお見舞いしてあげる自信がある。
「全然いいよ、お茶する時は多い方がいいからね」
そう言うと、歌音ちゃんは嬉しそうに顔を
どうしたのかな? っと思っていると、安寧ちゃんの左手にはスマホが握られているのに気がついた。
「えっと……写真撮るの?」
あたしの声に安寧ちゃんは無言で顔を高揚させたまま、カクカクと頷く。
しかしまぁ世の中こんなにも物好きが多いというか、ゲテモノ好きが多いと言うか。
こんなあたしの何がいいのかねぇ。
あたしの中身なんて美少女好きでゲスで欲望の塊なのに。
等と思いつつ、あたしが「いいよ」と言うと、安寧ちゃんは無言のままスマホを歌音ちゃんに押し付ける。そしてあたしの横にやってきた。
「こっち向いてぇ、安寧ちゃん笑顔エガオぉ」っと言いながら、歌音ちゃんはスマホをあたし達にかざす。
だけど、なかなかタップ音は聞かれない。
「安寧ちゃん、こっち向いて」と、歌音ちゃんは何度も言うけど一向に撮影は行われなかった。
その横で月詩ちゃんも「須藤さん、笑ってくださぁい」っと、声をかける。
あたしはチラッと安寧ちゃんを覗き見ると、安寧ちゃんは顔を真っ赤にして俯いているだけだった。
しかも、隣で触れている左腕が微かに震えているようだし。
そしてあたしは考える。
考えて考えて考える。
そして素早く行動。
あたしは少し膝を折って安寧ちゃんの顔の高さに合わせ、自らの右頬を安寧ちゃんの左頬にキュッと付ける。更に、左手でOKマークを作って自らの左頬に押し当てた。
右手は安寧ちゃんの背中から回し、安寧ちゃんの右頬にOKマークを押し当ててニッコリする。と、ようやくスマホからシャッター音が聞こえてくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます