第708話 『性悪キャラ』が登場する物語において、より悪いのは『性悪キャラ』か『性悪キャラ』の性悪さに気づかず『性悪キャラ』を擁護し続けるキャラか? という疑問。

『性悪キャラ』が登場する物語において、より悪いのは『性悪キャラ』か『性悪キャラ』の性悪さに気づかず『性悪キャラ』を擁護し続けるキャラか? という疑問です。


昨日(2023年7月4日)『小説家になろう』様で読んだネット小説の物語の話なんですけど、その物語においては私『『性悪キャラ』が登場する物語において、より悪いのは『性悪キャラ』か『性悪キャラ』の性悪さに気づかず『性悪キャラ』を擁護し続けるキャラか?』という疑問においては、『性悪キャラ』の性悪さに気づかず『性悪キャラ』を擁護し続けるキャラが圧倒的に悪いと思いました。


その物語の概要は……。


・ある領主が、天災で壊滅的な被害を被った領地を立て直す方法がなく、困り果て、追い詰められた末に『悪魔と契約をして領地と領民を救う』という禁断の方法を取る。


・悪魔は契約の対価として『領主の孫娘を花嫁として差し出すように』と要求。領主はそれを了承する。なぜ了承したかと言うと、それしか方法がなかったことと『まだ孫が生まれていなくて、男の孫しか生まれなければ悪魔に差し出さずに済む』と考えたため。


・領主の願いとはうらはらに、孫娘(双子の姉妹)が誕生。妹の手には、悪魔に差し出される証としての痣があった。姉に痣はなかった。


・両親と祖父は、痣のある孫娘(妹)への罪悪感と『16歳になったら悪魔に差し出される運命』という憐憫で、痣のある孫娘(妹)だけを可愛がり始める。

痣が無い孫娘(姉)は家族に放置されて過ごす。


・痣のある孫娘(妹)は自分だけを可愛がってくれる祖父や両親、自分だけを大切に扱ってくれる使用人が大好きで、両親の関心が痣が無い孫娘(姉)に向かおうとすると仮病を使って大騒ぎするようになる。


・使用人たちは、痣のある孫娘(妹)だけを可愛がる雇い主たちを見ていたので、痣のある孫娘(妹)だけに真剣に仕え、痣が無い孫娘(姉)をぞんざいに扱うようになる。でも、雇い主の祖父と両親は『使用人が痣が無い孫娘(姉)をぞんざいに扱っていることに気づかない』という状況。


・生まれた時から常時痣のある孫娘(妹)と違い、生まれた時は痣がなかった孫娘(姉)だったけれど、時々、痣が現れるようになって困惑し、恐怖するようになる。話を聞いてくれない家族に相談することは諦め、仲良くしてくれていた幼なじみの姉弟に「自分も時々痣が出るので怖い」と相談。でも「嘘を吐くのはよくない」と言われ信じてもらえず、人間全部に不信を持ち、悪魔の花婿を切望するようになる。


・双子の姉妹の16歳の誕生日、悪魔に連れ去られたのは姉。痣が常時あった妹は悪魔の花嫁にならずに生き続けることになる。


・残された祖父と両親は驚愕。妹は「自分が悪魔の花嫁にならずに済んだ」と喜ぶ。祖父と両親、幼なじみの姉弟は、双子の姉が残した日記帳を読み、双子の姉の寂しさ、悲しさ、苦しみを初めて知り、後悔する。


・祖父と両親は、双子の姉への償いとして貴族の籍を返上。平民として貧しい暮らしを送る。妹もそれに付き合わされる。

幼なじみの姉弟の姉は、慈善事業に力を尽くし、独身を続け、弟は悪魔と契約するために必要な本を燃やし、悪魔と契約しないようにと布教する活動をする。


***


という物語なんですけど。双子の姉は、悪魔に『悪魔的に』愛されて幸せになり(無関心すぎる家族と違って、悪魔は双子の姉に関心を持ち、伴侶として大事にしてくれる)双子の妹は平民としての貧乏暮らしに不満を募らせる……という結末でした。


***


この物語において、仮病を使って自分だけを見てくれるように大騒ぎする性悪な双子の妹も、被害者の一人だと思います。

そもそも祖父が勝手に悪魔と契約したのが悪いよね。

領地にいる領民の幸福>孫娘の幸福 だったわけだし。


領主としての祖父は素晴らしいけど、孫娘の祖父としては最低なキャラだなあと思いました。そして、悪魔の花嫁になった孫娘(姉)への贖罪として、貴族籍の返上と平民としての貧乏暮らしを選ぶ理由が理解できない。


そんなことして、悪魔の花嫁になった孫娘(姉)が喜ぶとでも……? 完全に自己満足ですよね。悪魔の花嫁にならずに済んだ双子の妹が「どうして私が悪魔の花嫁にならずに済んだことを、誰も喜んでくれないの?」と不満を漏らしていたけど、それは本当にその通りだと思いました。


その物語の祖父と両親って、本当に無駄で無意味なことばっかりしてるなあという印象です。自分たちがものすごく可愛がってきた双子の妹が無事だったのに、悪魔に攫われて、家族も幼なじみも使用人も、人間全部を憎悪するようになった双子の姉のことばっかり考えて『贖罪』とか無意味じゃないですか……。


16歳になるまでは双子の妹ばっかり見てて、16歳になったら攫われた双子の姉ばっかりを想っている。やってることは同じだなあと思いました。


使用人たちは、一応、双子の姉の世話をするようにとは言われていたけど、ぞんざいに扱われている孫娘(姉)に真摯に仕えるのも馬鹿らしいと思ってしまう気持ちはわかります。15年間ずっと、使用人の働き方に目を配らなかった雇い主が悪いと思う。使用人たちはちゃんと、姉妹格差がある状況に気づいていたので、その点では『双子の姉の状態をきちんと見て知っていた』と思います。祖父と両親が気づかず、無関心でい続けたのが異常。


これって、いじめ問題にも言えますよね……。

私、いつも、いじめ発生クラスの担任が「いじめ問題が発生しているのに気づかなかった」っていうの絶対変だと思ってて。


その担任は、いじめられている生徒の『元気な状態』と『いじめられてつらい状態』の違いについてわかってないから「いじめ問題が発生しているのに気づかなかった」って言うんだと思うんですよね……。だって、見てれば絶対わかるでしょ。食欲が落ちたり、友達の話をしなくなったり、学校に行きたがらなくなったり。一瞬だけしか見てないとかだと、狡猾ないじめ加害者の『良い友達の振り』に騙されると思うんですよね……。


***


その物語の妹は、続編で、悪魔に『贅沢な暮らしがしたい』と願って、かえるような容姿の悪魔の花嫁になるという『ざまぁ』要素がありました。

それもこれも、全部、祖父と両親のせいだよね……。

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