第4話 旅立ち
旅に出る前に爺に用意して貰った旅の道具を確認をしていると、ある事に気づく。
「あれ?この袋は?」
袋の中には金貨が10枚も入っていた。
金貨10枚は貴族には大した額ではないが、爺にとっては十数年かけて、やっと貯めたお金だろう。
「爺……ありがとう。大切に使わせてもらうよ。」
僕の目頭から熱いものが溢れてくる……。
僕はその涙を隠すように俯きながら、ヘルボンに向け街道を歩き始めた。
そして人気の無い所まで来ると、いよいよ《アカシックレコード》のギフトで得た魔法を発動させる。
《ゲート/転移門》
これは自分が行った事のある場所であればどこにでも行ける魔法だ。
あの青い猫型ロボットが出すお馴染みのドアを想像して貰えば分かりやすいと思う。
この魔法はこの世界では扱える者はいない高難度魔法だ。
普通魔法を習得するには時間をかけて魔法の原理原則を学び、魔法を正しく発動させるために幾度も失敗を繰り返し、やっと1つの魔法を習得できる。
しかし僕は魔法を学ばなくても瞬時に使い方を理解し発動させる事が出来る。
頭の中に魔法のビジョンが降りてくるのだ。
僕は人前では簡単な初級魔法しか使わなかった。
転移の魔法などこの世界に存在しない魔法を使おうものなら父は僕の力を利用しようと公爵家に留めようとするだろう。
僕が見たビジョンではその場合は公爵家どころか帝国に大きな厄災が降りかかることになる。
だから僕はヘルボンに行くという選択を受け入れたのだ。
僕は目の前に現れた黒い空間の歪みの中に入る。
歪みはヘルボンに一番近い街カナートの近くに繋がっていた。
ヘルボンには行った事が無いからヘルボン直通の転移門は出すことが出来ないのだ。
「カナートからヘルボンまで更に10日か…まあこれでもかなりのショートカットになったかな……」
カナートからヘルボンまでは大きな街もなく街道も整備されていない。
また危険な魔獣やモンスターとの遭遇率も跳ね上がる。
爺がポーションなども用意してくれてはいたが、もう少し買い足さないとならないかもしれない。
僕は旅に必要な物資の補給するためにカナートの街に寄る事にした。
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