第2話 追放

パウルスは神殿での洗礼を受けた後、屋敷に戻るとすぐに父の部屋に呼ばれた。


「父上、失礼します。」


ドアを開けるとそこには厳しい顔をしている父といつもの優しい笑顔の父ではなく、冷たい目をして自分を見つめる父が立っていた。


「パウルスよ、そこに座れ」


父は自分の目の前にある椅子を指し示す。


「はい、わかりました」


パウルスは言われた通りに座り、正面を見ると今まで見たこともないような険しい顔つきをした父がこちらを見ていて少し怖くなった。


「パウルス、お前には失望させられたぞ」


いきなり何を言われるかと思ったら、突然の罵倒である。


「どういう意味ですか?」


自分は父の期待に答えようと努力してきたつもりだ。


「先ほど神官長から魔法通信が来た。パウルスよ、お前のギフトは《アカシックレコード》などという何の役にも立ちそうにないギフトだと言うではないか。この公爵家の面汚しめ。まだギフトだけなら私も我慢してどこか他国の大貴族と婚姻でもさせお前の身が立つように取り計らう事もできたのだが、この世界は丸いなどと妄言まで吐く始末。もうお前にはうんざりだ!」


パウルスは言葉も出なかった。


「この公爵家は代々優秀な人材を輩出してきた名門公爵家だ。その公爵家の次男がこのような無能者だとはな。追放と言いたい所だがそれでは世間体が悪い。お前にヘルボンの地を与える。そこで好きに生きるがよい。我が公爵家の門をくぐることは一生許さん」


ヘルボンの地を与えるとは聞こえが良いが、ヘルボンの地は土地が痩せ作物が育たない不毛の土地である。

しかもモンスターも多く生息しており、冒険者でさえも近寄らない場所であった。

13歳の少年にそこへ1人で行けというのは、すなわち死んでしまえと言っているようなものである。


「父上…承知しました……」


パウルスはそれだけ言うと静かに立ち上がり、部屋を出て行った。


「ふんっ!公爵家の面汚しめ!二度と我が公爵家に戻ってくるでないわ!」


後ろから父の罵声を浴びながら……。

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