ギフト《アカシックレコード》持ちの公爵家次男は忌み子と嫌われ辺境へ追放され無双する

イチコ

第1話 不肖の息子

これは地球とは別のとある惑星の物語。

この惑星の文明はまだまだ発展途上で、地球より1000年くらい遅れている感じだ。

この星の人々は住んでいる世界は平面で、この世界に果ては無いと信じている。

この世界には3つの大陸が有り、その1つを「中央大陸」と呼ぶ。

中央大陸には大陸の4分の1を占めるナジャリア帝国があり、皇帝が君臨していた。

そして帝国には皇室の血脈を受け継ぐ三大公と呼ばれる三つの公爵家があった。

その中の一つに「白銀公」と呼ばれる公爵家の当主アドルフ・フォン・ベルンシュタインがいる。

彼は齢40歳を過ぎても衰えぬ美貌と鍛え抜かれた肉体を持つ美丈夫であった。

彼は幼い頃から美しい銀髪と深い青の目を持っていたため、「白銀公」と呼ばれていた。

彼は15歳で妻を迎え正妻と二人の側室の間に5男2女を儲けた。

公爵家の跡取りで長男のカールハインツは父親譲りの銀髪と眉目秀麗な顔立ちをした青年だった。

文武両道でいずれは帝国の宰相か大将軍かと噂されるほど優秀な男だ。

次男のパウルスは母に似た金髪碧眼の優しげな雰囲気を持った少年である。

今年で13歳、学問も優秀、兄には劣るが剣の腕もなかなかで、長男にはない魔法の才能もあった。

一見優秀な息子だったが、この次男パウルスこそが公爵の頭痛の種でもあった。


「パウルスはあの妄言を人前で言ってはおらんだろうな?」


アドルフはパウルスの教育係でもある執事長のオイゲンに向かって言った。


「はい、旦那様。ぼっちゃまには決して他人の前でそのような事を言ってはいけないと口を酸っぱくして言い聞かせておりますゆえ、大丈夫だと存じ上げます」


アドルフは深い溜め息をつくと執務机の上に肘を置き両手を組んで顎を乗せると思案する表情になる。


「まったく…この世界は球体で出来ておるなどと妄言を言うとは……。これが異端審問官などに知られたら我が公爵家とてただでは済まんぞ……」


オイゲンはこの主人の言葉を聞きながら冷や汗を流していた。


「旦那様、私の教育不足です。申し訳ございません!」


オイゲンは自分の責任だと思い謝罪をする。

しかし、そんな彼を叱責する事もなく、逆に労うように言う。


「よいのだ。お前はよくやってくれている。そういえばパウルスは今日は神殿で洗礼の儀式を受ける日であったな?洗礼の日にギフトが判明するからな、楽しみにしているよ」


丁度そこへ神殿から魔法通信が入った。


『公爵閣下、神官長のダレンです』


「おお!ダレン殿か、久しいな。元気にしておったか?」


『はい、おかげさまで。ところで本日の件なのですが、パウルス様のギフトが判明いたしました!』


「ほう!それでどのような能力なのだ!?」


長い沈黙の後に神官長のダレンは答える。


『それが……その……』


神官長がこんなに言いにくそうにしているのは、余程役立たずのギフトなのかと心配になった。


「どうした?何か問題でも起きたのか?」


『いえ……パウルス様に授かった能力は【アカシックレコード】というギフトでございます』


「なんだそれは?聞いた事がないぞ?」


『私共も初めて見るものです。どのような能力かも一切不明でございます。』


アドルフは頭痛の種のパウルスであったが、勉強もでき剣も魔法もそつなくこなすパウルスに期待する心があっただけに落胆が大きかった。


(まさか我が息子ともあろう者が《アカシックレコード》などと訳のわからん役立たずなギフトを授かるとは)


「頭痛の種がいよいよ役立たずのお荷物になってしまったか……」


思わず本音が出てしまう。


『では私はこれで…』


「ああ、わざわざすまないな」


魔法通信を終えると公爵はある事を決意していた。


「オイゲン、パウルスが帰ったら私の部屋に来るよう伝えてくれないか?」


オイゲンは主人の顔に不穏なものを感じ取り、嫌な予感を感じながらも承知致しましたと返事をしてその場を去った。

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