第17話 特訓! 特訓?
その日から一週間が経過した。
学校の授業は順調だし、部活も順調だ。ちなみに斎藤は運動部へ入っていた。まぁそりゃそうだよな。絶対ガラじゃないだろうし。
ちなみに部活の人たちは残念がっていた。
まぁ、有能っちゃあ有能だったもんな。
あいつ、ホント何させても無敵だし。基本的に。
ただ、同時にアイツは俺に勝てないと思う。こと、ヒロインのことに関しては。なんてったって、アイツの行動パターンは全て把握しているからな!
はっはっはっはっは!
って油断してたらマズいことになるからな。
気は引き締めていかないと。
「体育交流会?」
「うん」
黒板に書かれた文字を読み上げると、マキはクラスのみんなを前にして頷いた。
今日のLHRの時間の議題だ。
俺はマキと斎藤の説明を聞き流しつつ思い出していた。
そういえば、そんなんあったな。
この学園はエロゲの舞台である。
なので、フツーの高校よりイベントはたくさんあるんだ。もちろんその時その時でいろんなシチュエーションがあって、パッションタイムを上手く発動させればとてもとても眼福な画像を拝める。
……ごほん。
ちょっと忘れよう。エレクトしかけた。
ともあれ、この体育交流会っていうのはクラス対抗のミニ体育祭みたいなものだ。いくつかの団体競技と、チームに分かれてそれぞれの競技でスコアを競う。
「団体競技は縄跳び、リレー。で、チーム対抗戦は、バレー、バスケは二組、フットサル。それぞれ男子と女子のチームに分かれます」
バレーは六人、バスケは五人、フットサルも五人。
うちのクラスは男子が二十一人いるからちょうどいいな。ちなみに女子も同じ人数である。
で、こっからが修羅場になるんだよな、フツーに。
もちろん運動神経いいヤツから得意分野に分かれていく。
で、追随して運動神経が悪くないやつらが組み分けされていく。
残るのは言うまでもなく――運動神経悪い組である。
俺はその筆頭だ。
いや、うん。体力測定が面白いことになったんだよなぁ。筋力とか握力とか、そういうの全然ダメダメで、スタミナは普通。瞬発力と柔軟性はそこそこって感じ。ぶっちゃけ総合成績ではかなり悪い。
で、特別何かしらのスポーツをやってきたわけでもない。
そんな俺の扱いにはかなり困るわけで。
当然のようにどうするか紛糾するわけですよ。
ああ、俺超肩身狭い。まじ狭い。
っていっても、中学校までのような虫けら扱いじゃないんだけどさ。
「とりあえず、狭間くんは瞬発力はそこそこあるし、バレーでいいんじゃないかな」
斎藤の一言で全部決まった。
俺は球技全般苦手なので何でもいい。
ちなみに斎藤もバレーだ。
何でもできる完璧超人だし問題ない。むしろコイツがいれば勝ちが確約されてるまである。
「それでいい?」
一応斎藤が確認をしてくる。
微妙に気まずいんだけど、そんなの言ってられないしなー。
俺は小さく頷いた。
他のバレーチームの面々も異論はない様子だった。後はもうスポーツできるマンたちの独壇場だった。
なんかスゲー盛り上がってんな……これ、ミスったらめっちゃ怒られるパターンでは。
なんか対策取らないと不味くね?
◇ ◇ ◇
で、放課後。
部活も早々に切り上げ、俺は公園にいた。相手はマキと綾瀬ルカちゃんだ。
何をするか、と言うと、単純である。
「良い? バレーの基本はレシーブよ」
特訓である!
正直交流会まで二週間くらいしかない。そんな短期間で何が変わるんだって話だけど、やらないよりはマシ、のはず。
で、コーチ役はマキだ。
スポーツもできるからな、うってつけだ。
「は、はいっ!」
俺の隣で、ジャージ姿の綾瀬ルカちゃんは緊張しながらも返事をしていた。
綾瀬ルカちゃんも運動音痴だ。
だから、こうして一緒に参加する流れになったのである。
うーん、ジャージ姿も可愛い。
「ボールの回転とか、Aパスとか、そういうのは考えなくていいからさ、そんなトッププレイヤーが相手じゃないんだし」
そんな俺を差し置いて、マキは説明していく。
「きつい球がくることも少ないだろうから、まずはしっかりと前に返せるようにしよう」
「分かった」
「ということで、まずは柔軟からね。練習してケガしました。はシャレにならないんだから」
言いながらマキは屈伸を始める。
俺と綾瀬ルカちゃんも真似して柔軟だ。
「やっぱタクミ、あんた身体は柔らかいわね」
「昔からそうなんだよな」
「身体が柔らかいってスポーツの上じゃ重要なんだけどね。なのになんでそんな運動音痴なんだか……」
「しれっと傷つくこと言うのやめてくれない? 泣くぞ?」
「小学生か。で、綾瀬ちゃんはじっくり解したほうが良さそうだね」
綾瀬ルカちゃんには優しいマキである。
なんか理不尽を感じる。
なんて思いつつ。確かに綾瀬ルカちゃんはガチガチに固かった。
「ごめんね」
「いいよいいよ。無理して伸ばしたりするほうが危ないから、じっくりできる感じで解していこう。タクミ、手伝ってあげて」
「俺?」
「うん。私、今電話きてるから」
スマホの画面を見せつつマキはウィンクした。
着信画面には斉藤とある。ちょっとうんざりした様子のマキを見て俺は内心で安堵した。
ウキウキになってたらヤバいからな。
ともあれ、それなら仕方ない。
俺は綾瀬ルカちゃんの柔軟を手伝うことにした。
近くにマキがいるから、パッションタイムも起こらないはずだ。
とりあえず一通りこなしてから、二人で背中合わせになる。ぐっと腕同士を組んで、俺が前かがみになった。ぐいーっと綾瀬ルカちゃんの背中とかが引っ張り伸ばされる。
「ひゃっ、くぅ、うーんっ」
エッロっ!!!!!!
なにその声、エッロっ!!!!!!!!
いきなりしかも耳元でヤバすぎるんですけど!
危うく理性が吹き飛びかけた。
とはいえ、いきなり離したら綾瀬ルカちゃんがケガをするかもしれない。
根性で砕け散った理性をかき集め、俺はゆっくりと背中を戻す。
「ふうっ。もう一回、いいかな?」
綾瀬ルカちゃんからのお代わりきましたー。はいー。喜んでえぇっ!
俺はしっかりとまたゆっくり背中を曲げる。
また吐息とエロすぎる声。いやもはやあえぎ声では。
がんばれ俺の息子っ!
ある意味で修羅場を迎えた下半身に応援を送りつつ、俺はまた背中を戻す。
どうやら二回で満足したらしく、綾瀬ルカちゃんはしゅるっと離れた。
ちょっと名残惜しいけど、なんというか。
いや、パッションタイム起こらなくてもやべぇじゃねぇか。
どんな罠だよっ! どんなっ!
いやそうだよね、これエロゲだもんね! 細かいところまでエロいのがこのエロゲの伝説たるゆえんだもんね!
内心でとりあえずツッコミを入れまくり、俺は気を静める。
「おまたせー。柔軟終わった?」
「うん」
「まぁな」
「オッケー。じゃあはじめようか。まずはレシーブの姿勢から」
マキの号令で、特訓は始まった。
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