第8話 【R-15】浮気未遂③ あいして?4月16日
こおりは杏梨の胸を触っていた。部屋の中に杏梨の控えめな声が響く。
杏梨は声をできるだけ出さないように何故か我慢する。その声が押さえきれないようなすすり泣きと甲高いものになるとき、こおりはいつも喜びを感じた。
どれくらいの間、優しく触っていただろうか
杏梨の息が上がっている。目は先程とは別の意味で潤んでいた。腰はもじもじと動いている。
整えられていたウェーブのロングヘアは少し乱れ、綺麗に整った顔は、キスのし過ぎで少しメイクが落ちている。香水がほのかに香った。少し長めに切り揃えられた爪は薄ピンクに塗られていた。
あいりはいつも短く切り揃えてたな。ネイルもせずに。なんで、切ってるっていってたっけ?
杏梨の手がこおりの顔を包んだ。そのままじっとみつめられる。
「そうた、あいして?」
こおりは杏梨の腰に手を伸ばした。
時間をかけて、こおりは手と口で杏梨を高みに導いた。その際、杏梨はかねださんと鳴いていた。
かねだ?彼氏の名前か、本当は彼氏にあいしてほしいんだよな
よっぽど寂しかったんだな。杏梨かこんなに心からむせびなくような声を出しているのは初めてきいた。
呼んでいるのは違う名前でも、この声をださせているのは俺だ。
こんなに美人で努力家な杏梨の弱いところを慰められるのは俺だ。こおりはあいりにこの光景をみせたいと思った。
終わった後肩で息をする杏梨の顔は安らかで可愛かった。こおりは杏梨を拭いて上げるためにティッシュに手を伸ばした。
不意にあいりの顔が浮かぶ。
『こおりくん、爪が伸びてたら、ふとしたときに他の人が痛い思いするかもしれないでしょ?
傷つけるつもりがなくたって、爪が伸びてたら痛いかもじゃない。
だから、私は爪伸ばさないよ。バイトあるしネイルもしない。…だめ?』
そうだ、だからあいりは爪が短いんだ。そして、俺はそれを聞いて、あいりはそのままでいいよって言ったんだった。
心にずんっと重い重石がのったような感覚を覚えた。
くったりと横たわる杏梨を綺麗に拭いて、布団をかける。こおりは布団越しに杏梨を優しくなでた。
これを知ったらあいりは悲しむだろうか?でも俺には杏梨をほっとくことはできなかった。
ぐっすり寝て、最初より和らいだ表情の杏梨が帰った後、あいりがこおりの家にやってきた。
あいりは顔色がひどく悪かった。
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