第7話 【R-15】浮気未遂② 理由 4月16日
優しくニットの下から手をいれて誘導すると杏梨ははニットを脱ぎ、上半身下着だけの姿になった。
黒のレースに赤のラインの入ったブラジャーに真っ白い肌、少し割れた腹筋にくびれた腰、艶やかに波打つ髪が胸元にかかる。キスで少し弾んだ息に少し悲しそうな顔がとても綺麗だった。
こんな美人に押し倒されてるとか夢のようだな。
手を伸ばして、ブラジャーのホックをプチンと外す。綺麗な身体に思わずじっと見てしまう。
あまりに凝視していたせいか、杏梨は恥ずかしそうに顔をそらした。
「恥ずかしいから、あんまり見ないでよ。いいから早くっ……しよ? 」
手で胸を隠す。
「なんで? めちゃくちゃ綺麗で可愛いよ」
こおりの言葉に杏梨は悲しそうに首を振る。
「そんなことない。残念そうにされたし」
俺に対しては常に自信満々だった杏梨が、うなだれている。
やっぱり、何かあったのか。杏梨が俺に連絡してくるなんてそんなことだろうと思ったけど。
利用しようかと思ったが、初めて恋をした女の子のような表情をして目を潤ませる杏梨はほっておけなかった。
「彼氏に? なんか言われた? 」
なだめるように杏梨の腕を撫でながら、優しく声をかける。
「だから、別れたって……」
「杏梨が俺に連絡してくるとか、よっぽど弱ってるんだなって思ったよ?
投げやりになって忘れたいことがあったんでしょ? 」
「冷えちゃうから、一旦お洋服きな?」
こおりはニットに手を伸ばし杏梨のお腹の前に乗せたが、手で顔を覆った杏梨は首を横に振る。
「っく、いいから早く……」
杏梨の声が震えている。
こおりは上にまたがっていた杏梨を横に倒れるように誘導し、優しくベットに寝転ばした。布団を身体の上にかける。
「杏梨の望むことしてあげるから、ちょっとあったかくして、落ち着きな? 」
優しく頭を撫でる。
肩を震わせる杏梨はとても儚げだった。こんな杏梨は付き合っているときみたことない。彼氏に対する嫉妬心が沸き上がるが、そんな杏梨にあいりの顔が重なり、しゅんと消える。
連絡返してももらえない俺はあいりの何なの?
俺も悲しい。寂しい。
こおりは杏梨にそっと身体を寄せ、付き合っていた頃のことを思い出していた。
杏梨は実はとても寂しがり屋だ。
会えない時間が長引くと、不機嫌になるし、その分会ったときの欲求も強くなる。
ただ、こおりに対しては寂しいとは言わなかったし、弱気なところは見せなかった。いつも綺麗にしているし、付き合っているときもすっぴんはあまりみたことがない。
仕事終わりで疲れているだろうに、その足でジムにいく。自分磨きに時間も手間も惜しまない。モテるが男に依存したくないと、経済的にも常に自立できるように、株やFXを勉強し手をつけ始めていた。
こおりは常に全力に頑張る杏梨のことを尊敬していた。そんな杏梨に見合う男になりたくて、見栄をはって常に優しく強い男であろうとした。
杏梨は嫌なことあると、口には出さないけど、セックスで忘れようとするから、期待に応えようと頑張った。
もしも、本当に杏梨が彼氏と別れたんだとしても、俺に復縁を望むようになるとは考えにくい。杏梨ならもっと一緒に高みを目指せる相手を見つけるはずだ。
恐らく、嫌なことがあって、傷ついて、それを紛らわしたいがために杏梨を傷つけない格下の俺を選んだのだ。
怒りは沸かない。杏梨がいることで優越感に浸っていたのは自分だし、あいりを同じような視線でみていたのは俺も同じだ。
最低だ。
泣いている杏梨、震える身体に、こおりは利害関係なしに全力で杏梨を慰めたいと思った。
今俺にある価値はそれだけだ。利用されるだけされたらいい。
「杏梨、話したくないなら話さなくていいよ。どうして欲しいか教えて?」
「っく、ぇぐっ、気持ちよくし……て、忘れさせて、っく、全部!」
絞り出すような声を出す。
「わかった。寒かったり嫌だったらいってな」
手で顔を隠して泣く杏梨の手にそっとキスをする。肩や腕に優しくついばむようにキスを落としていく。
お腹、おへそをなで
「きれいなくびれ。まだジムに通ってるの?杏梨はすごいなぁ」
杏梨の頭にキスをして、優しく頭をなでる。ちゅっちゅっと繰り返しながら
耳元で「杏梨は本当にきれいだよ」と囁く。
そのまま、耳に舌をそわせて、ゆっくりとなぞる。
「下着可愛いね。杏梨によく似合ってた」
舌を耳の中にいれて舐める。
「相変わらず、スタイル抜群だよね」
耳元に息をふっと吹き掛ける。
「かわいすぎてみとれちゃった。彼氏がうらやましいわ」
耳を甘噛みする。
「でも今は俺が杏梨を気持ちよくする」
耳を舐め回す。
「可愛いおっぱいみせてほしい」
お願いーっと抱き締めて、頭にキスをすると、杏梨は顔を隠していた手を外して、こおりの顔をじっとみた。
「可愛くないもん…」
涙目で上目遣いでこおりをみつめてくる。
「いや、めっちゃ可愛くて俺が死にそうだけと?」
杏梨の顔を優しく包み、ついばむようなキスをする。
「可愛い杏梨ちゃん、甘えていいよ」
「よく頑張ったね」
鼻の頭にキスをする。
杏梨は照れたように顔を背けた。
「…彼氏とは別れてない。嘘ついてごめんなさい…。」
大丈夫だよというように、頭をなでる。
「彼氏構ってくれなくて、挙げ句の果てに寂しいなら他に男作れって言われて、そのあと連絡もなくて…
全部忘れたくて、そうたに連絡したの…」
「そっか、そんなに俺とのえっちがきもちくて恋しかった~?」
わざとちゃかすように声をかける。
「んっ…それもそうだけど、そうたは私を傷つけないし、優しいから…つい頼っちゃったの。
自分からふっといて、都合いい女でごめんね…」
杏梨の目に再度涙が浮かぶ。
「わかってたよ~、でも俺も同じっ!ははっ正直彼女から連絡来なくて、気分落ちててさ。杏梨きてくれて助かったの。
何か杏梨に頼られるの嬉しいし。俺でもできることあるんだ~?みたいな?
だから、俺のためにも、杏梨は甘えて、俺に癒させてよ」
「…そうた。そうたはいつも優しいね、ありがと」
杏梨からキスしてくれる。
「優しくはないよ…」自虐的に少し笑ってしまう。
「んじゃ、まぁいただきますね~」
笑いながら、そうたは杏梨に覆い被さった。
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