第3話 週末の共有

 ふと気がつくと、リイトがこおりの顔を覗き込んでいた。


「うわああああ、どっからわいて出た?!」


 こおりはびっくりして跳ね起きる。


「わかないよ、言わなかったっけ? 監視するって。ずっと傍にいたよ」


 こおりを見て、リイトは気持ちの悪い笑みを浮かべている。こちらが驚きあわてふためくのを、面白がっているのだ。


「ずーっといたよー。金曜日、土曜日、日曜日。ふふふっ、こおりくん本当に頑張ってたよねー。ドリンクまでのんでさー、中にまで……」


 リイトは腰に手を当てて、リズミカルに前後に揺らした。


「えっ、あっ……。お前、見てたのか? 」


「ぷぷぷっ、見てたとか以上に見てたよ。こおりくんの心の声もあいりちゃんの声も! 僕がしたいときだけ感覚共有もできるから、本当に楽しい時間だった。いやー、こおりくん担当で良かったよ」


 リイトはにまにまと下世話に笑う。


 こいつ……なんなんだ?


 こおりはあいりを家に呼ぶ前、初めてリイトに会った後に自宅内を調べてカメラなどが設置されていないか確認した。何もなかったのに、どうやって見ていたというのか。


 こいつは普通の人間ではないのか?


「ぷぷぷっ、普通の人間の訳ないじゃん!普通の人は心読んだり、進出自在に出たりは入ったりできないよ。こおりくんって案外馬鹿なのぉ?」


「なっ! 読んでんじゃねーよ! 俺から離れろ。どっかいけ! 」


「いや、無理ムリムリ!僕もやりたくてやってるわけじゃないんだって。僕も辛い立場なのをわかってよー」


 リイトは泣き真似を始めた。絶対面白がっているだけだ。


「じゃあ……何で俺なの? 教えてよ」


「教えられませーん! こおりくん、あいりちゃんにも言ってたじゃん。人に聞くんじゃなくて自分で考えて行動しろって。あいりちゃん顔真っ赤にして頑張っててさー、あー可愛かったなぁ」


「うるせー思い出すな! 」


「こおりくんが、元カノさんとあいりちゃんを色々比べてディスって、あいりちゃんを苛めるからさぁ、僕は涙が出そうだったよ。それなのにあいりちゃん健気にこおりくんに尽くして、本当に良い子だよねー。あのとき、気持ち良かったぁ。

 まぁ、あいりちゃんは1年後には何もかも忘れて他の男のものになるけどさぁ」


「……俺はあいりをもっと良くしたいだけだ。つい、甘やかしちゃうから、きつく言ってるだけで、そうしないと変わらないだろ? 」


「あいりちゃんはあいりちゃんのままでいいのに? こおりくん今のままでもあいりちゃんにぞっこんなのに。好きな子いじめて楽しい? 小学生並みの恋愛論だね! 」


「お前に何がわかる……」


「わかるさー何でも。でも、僕はあんまり君の気持ちには共感できないかな」


「お前みたいな、人を馬鹿にしたやつになにがわかる! 」


「ははっ、僕は君の唯一の理解者で味方だから、噛みついても良いことないよ。そんなに、あいりちゃんに忘れられたくなくて、他の人に取られたくないのなら……


 殺しちゃえばいいのに」


 ――頭の中が真っ白になった。


 君は消去されていなくなるから、罪には問われないよ。


 こおりの耳元で囁いてリイトは姿を消した。

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