ないものねだりの2人
全6話の短編の、第1話となる『出会い』を使用しました。
あ行の名字だからとか、1番前の席だからとか、そんな理由はどーでもいい。最初に俺を指名したからってずっと雑用を押し付けてくるなんて、うちの担任はなに考えてんだ。
提出物の回収を終えた俺は、職員室までの道のりを孤独に歩む。
早く席替えしてくれー。
そうすればこんな損な役回りから解放される、はず……、だよな?
高校に入学して早々、俺は担任の雑務担当として働かされている。それが、クラス替えをしない限り永遠に続くような気がして、思わず頭を振った。
やめろやめろ。
俺は、高校で、青春を謳歌するんだ!!
心の中で誓いを立て、角を曲がった瞬間、裾を踏んだ。
「うおっ!?」
高校生になったら大きくなるからと、自分の体に合っていない制服を着ていた俺は、母親を恨む。
その時、いい匂いがして、柔らかく暖かいなにかが俺を支えた。
「大丈夫?」
これが澄んだ声か、っていうぐらい綺麗な声がして、俺は倒れかけのまま固まる。
女の子に抱きしめられるとか、俺の人生で初めて……じゃねーわ。マスコット的に抱きしめられてたわ、くそっ!
嫌な思い出が蘇り、俺は現実に戻った。
そしてそのまま上に視線をずらせば、声に似合う、綺麗な人と目が合った。
背、たかっ。
「……君、本当に男の子?」
女子にしては身長が高いな、なんて事に気を取られている間に、綺麗な声が心をザックリ斬り付けてきて、泣きそうになった。
「これでも、男です。あの、ありがとうございました」
初対面で自分のコンプレックスを刺激され、俺はすぐにでもこの場を立ち去るべく、一歩下がってしっかり頭を下げた。
「「あ……」」
なにしてんの俺。
ノートが雪崩を起こしたぞ!?
頭だけじゃなくて体までしっかり倒して、見事に散らばったクラスメイトの提出物。いろいろと情けなくて、下だけを向いて集める。その視界の中に、別の手が入り込む。
「あの、もう大丈夫なんで……」
「これのどこが大丈夫なの?」
そりゃそうだよな。
俺だって同じ立場なら、拾うわ。
なにも言えなくなり、ノートを集める事に集中する。けれどそれを、彼女が邪魔してくる。
「君、1年生なんだね」
「……はい」
「私、2年生」
「そうですか……」
もういいじゃねーか。これ以上、俺に構わないでくれ。今日のは事故だ事故。
ノートを集め終わったら、また見知らぬ他人だ。
こんなどこぞのマンガみたいな出会いなんて、現実じゃなんも進展しない。
それに俺は決めてるんだ。
俺より小さくて可愛くて守ってあげたくなるような子と、アオハルするってな!
中学ではクラスで自分より小さい子がいなくて、ましてや
そのせいで、男にまで告白された俺のどこが羨ましいんだよ。
ふつふつと黒い感情が湧き上がる中、ようやく拾い集め、俺達は立ち上がった。
「運ぶの、手伝おうか?」
「いえ、大丈夫です」
なんか普通に、良い人なんだな。
失礼な事を言われたのを除けば、彼女がとても親切なのがわかる。そう思ったからか、さっきまでのモヤモヤした気持ちがなくなり、子供じみた俺が恥ずかしくなった。それを誤魔化すように、きちんとお礼を告げる。
「いろいろと、ありがとうございました!」
ちゃんと目を見て、笑顔を向けたはずなのに、彼女は冷ややかな眼差しを向けてきた。
「君も、そっち側なんだ」
え……、なんで怒ってんの?
そっち側ってなに?
訳がわからなくて、そのまま聞き返す。
「そっち側って、なんですか?」
その瞬間、彼女の顔が真っ赤になった。
「えっ? 俺、変な事言いましたか?」
「……今の、忘れて」
なに? なにが起きてんの?
綺麗な人って綺麗なままなのかと思ってたのに、可愛くもなるんだ、とか、脳内で彼女の情報が追加される。
そのせいで、俺の口が勝手に開いた。
「先輩、名前教えてくれますか?」
「な、名前?」
「俺、
「……私は、
名前まで綺麗だな。
どれに心臓が反応したかわからなかったが、これが恋に落ちた瞬間なんだって自覚した俺は、最初から敗北を悟った。
ここからがAIさんです。
「これからよろしくお願いします」
「うん……。じゃあ、教室戻るね」
「はい! 本当に、ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがと」
軽く会釈をして歩き出す彼女を見送る。
そして、なぜか俺の顔が熱くなって、その場にしゃがみ込んだ。
一目惚れなんてあるんだな。
俺には縁がないと思っていたけど、まさか入学してすぐとは。
恋をすると世界が色づくとか言うが、そんなの嘘だとばかり思っていた。
だって俺の世界は、いつも灰色だったから。
だから俺は決めた。
俺より小さくて可愛くて守ってあげたくなるような子がいい。
それが叶わないなら、せめて身長差が30センチ以上あって、包容力のある人がいい。
「よしっ!!」
とりあえず、明日からもっと頑張ろう。
俺は気合いを入れて立ち上がり、教室へと向かった。
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以下、ソラノです。
この続きはですね、私の物語の方が負けた!!となりました。
物語の流れもそうですが、特にそう思った理由がこちら。
『それが叶わないなら、せめて身長差が30センチ以上あって、包容力のある人がいい。』の部分です。
そうか、最初からここまで振り切った方がもっと主人公に好感が持てるなと、勉強になりました。
まぁ、冷静に考えると、湊の背が低すぎ、紗衣の背が高すぎ、って事になるんですけどね(笑)
30センチ以上を他の言葉に置き換えれば、普通に良い小説になるというね…。
あと、Amazonのリンクもあるのですが、これは本当にAmazonに繋がりました。
なんでこんなものが用意されているのかは、わかりません(笑)
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