第7話「ルイズとざまぁ」

俺は魔王を倒した褒美としてルイズ・グリザードと結婚した。


ルイズは父親が国王最側近のギレイ・ウィズ公爵、母親が国王の三女、


つまり国王の孫であることを鼻にかける令嬢だ。


俺が平民出身っていうのもあるが、魔導学院時代から彼女のそういった部分が好きになれなかった。


そのルイズについて喜ばしい知らせが飛び込んできた。


その知らせを孫の顔を見にきている舅(しゅうと)夫婦に教えることにした。


「デューグの顔つきはウィズ公爵によく似ておられます」


「照れるお世辞だね」


「いえいえ。本心ですよ」


「むしろ目つきは勇者ゼオンによく似ているんじゃないかね? 勇敢な目だ」


「「ハハハハ」」


「ゼオンもお父様もデューグは私に似ていると言ってください。

こんなかわいい子がむさいおじ様たちに似ているなんて言われたらかわいそうです」


「むさい⋯⋯って。父上ショック⋯⋯」


「まったくですよ。仕草なんて子供のときのルイズそのものです。

ねぇ、デューグちゃん」


「お前まで⋯⋯だけどこうやって我々が孫の顔を見れるのはゼオンくんが魔王を倒して世界を平和にしてくれたおかげだ。

感謝する」


「ありがたきお言葉。身に余る光栄です。しかし、あのお方に似ておられないのが少々気掛かりでして」


「あのお方?」


「国王ですよ。デューグは王位継承権をもつ唯一の男児。

いささか気がかりでしたが、その答えを教えてくれた人物がおりまして」


「答え?」


「今日はここに呼んでおります。入りたまえ!」


「お久しぶりでございますウィズ公爵。以前お支えしていたソノリにございます」


「ソノリ⁉︎」


「あら、お久しぶり」


「どうして彼女が⋯⋯」


「今日はルイズのことについて、このソノリからお話したいことがあるそうです」


「私のこと? 私、彼女のような侍従、はじめてお見かけしましたけど」


「公爵夫人⋯⋯本当のことをお話しいたします。あなた様の本当の娘であり、国王の孫君は

聖女ミレイナ様にございます」


「「「⁉︎」」」


「いきなり何を言っているのこの女⁉︎」


「ルイズ、落ち着け」


「急にそんなこと言われて落ち着いていられるわけないじゃない!」


「おや? 公爵、顔色が悪いがいかがされましたか?」


「あ⋯⋯あ⋯⋯」


「お父様?」


「あなた?」


「ソノリ何をした⋯⋯」


「あれは20年前、ギレイ様は侍従をしていた私をお手つきになられました。

それもご夫人と結婚されたばかりの頃にーー」


「ソノリ⋯⋯」


「ほどなくしてご夫人はご懐妊。そしてもうひとり⋯⋯私も。

私は侍従を辞めて、実家に戻り密かに娘を出産しました。

ですが、産まれてきた子が不憫でなりませんでした。

都市に行けば、同じギレイ様の子供なのにご夫人が産んだ女の子は世間から祝福され、

ギレイ様のご寵愛をたっぷりと受けているご様子。

悔しかった⋯⋯

せめてこの子だけでもギレイ様のご寵愛をと思い、面会を試みましたが会ってもらえず、

必死だった私は、屋敷に忍び込みミレイナと名付けていた自分の娘をルイズ様と入れ替えました。

この子には幸せになってほしい。私のとこにいては貧しく暮らすことになってしまう。

だからこの子だけでも⋯⋯」


「それじゃあ⋯⋯」


「ここにいるルイズ様は私が産んだ子です。本当の名前はミレイナ」


「ウソ⋯⋯ウソよ」


「ソノリ!じゃあ私が産んだ本当の娘はどうしたの!」


「嫉妬から殺すことも考えました。ですが同じギレイ様の子供。

手にかけることなんかできず、そのまま孤児院の前に置いて立ち去りました。

しかし、さすがは国王の血を引く者。

聖女となり勇者ゼオンと一緒に魔王を倒す大活躍をされて」


「カッコウよ! あなたはカッコウよ!」


「落ち着け」


「落ち着いていられますか! すべてはあなたのせいよ!

私は何も知らずにこの女の娘を育てていたなんて⋯⋯」


「やめて! お父様もお母様も。 これはウソ。すべてウソ。

何もかもこの女がつくったウソ!

惑はされちゃダメ⋯⋯私はルイズ。

ギレイ・ウィズ公爵の娘にして国王の孫よ」


「ルイズ、落ち着け。お前はソノリさんのれっきとした娘だよ」


「なにをいっているのゼオン!」


「ルイズ、俺はソノリさんの話を聞いて合点がいったんだ」


「それはなぜだ?」


「ウィズ公爵⋯⋯それは魔王との最終決戦のときです。

俺は深いダメージをおって危機的な状況でした。

そのときミレイナは王族にしか使えない大魔法を発動したんです。

そのおかげで俺は魔王にとどめを刺すことができました。

ミレイナはその場のノリでなんかできたと言っていたんですけど、

俺にとってはとても謎でした。

ですが、ようやくその謎が解けました。聖女ミレイナには王族の血が流れている」


「⋯⋯認めざるを得ないかーー」


「ゼオン⋯⋯お父様」


「それに狂気なまでの嫉妬深さはルイズ! ソノリさんにそっくりだよ」


「⁉︎ この貧乏くさくて陰湿そうな女に私が? 何を言っているの? いやだ。信じたくない。こんな女が私のお母さんなわけない」


「認めるんだルイズ! いや、平民のミレイナよ。 この領地から追放だ。今すぐ出て行け!」


「どうしてそうなるのよ! 国王の孫を勝手に追放するなんてありえない。王命に背くおつもりなの!私との結婚は王命なのよ!」


「俺が王命で結婚したのは国王の孫であるルイズ! そうそれは聖女ミレイナ! だから聖女ミレイナこそが俺の真の結婚相手だ!」


「ゼオン⋯⋯あなたは私を愛してくれていたんじゃないの?」


「国王の命に従って致し方なく一緒に居ただけだ。誰が好き好んで革靴を調理する女と結婚するか」


「そんな⁉︎」


「それとウィズ公爵、このことは国王に伝えてあります」


「⁉︎ ⋯⋯ゼオンくん、君は⋯⋯」


国王へ宛てた手紙にはこう付け加えておいた。


ギレイ・ウィズ公爵の目的は王家の血をひかず自分の血のみをひくリュートを

次期国王にすることで、王国を乗っ取る計画だと。


1週間後ーー


ギレイ・ウィズ公爵は国家転覆罪で処刑された。


そして最後まで泣き喚いていたルイズはデューグと一緒に領の外に追放。


寂れた小さな屋敷だが住むところだけは与えてやった。


自分が産んだ子と一緒に暮らせるのはせめてもの慈悲だ。


しかし、その屋敷も何者かに火を放たれて消失。


告発したソノリも謎の死を遂げた。


どれも俺にとっては預かり知らぬこと。


あとはミレイナ、君を見つけだすことだ。


ミレイナ、君はいったいどこにいる?


つづく

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