第2話「断たれる未来」
ここはグリザード領。
旧ディルマース領だ。
小さな都市だが商業が盛んで活気がある。
魔王を倒した勇者ゼオンは一国の領主となり日々、政まつりごとに追われている。
伯爵夫人はルイズ・グリザード。
国王最側近のギレイ・ウィズ公爵の令嬢で母親は国王の三女。
ルイズは国王の孫にあたる。
私とゼオンとは国立魔導学院時代の同級生になる。
そして私はというとーー
「ミレイナ。ご苦労様」
「これはこれはルイズ様。このようなところまでわざわざ」
「いいのよ。このお屋敷を護る兵士たちの鍛錬の様子を見ておきたかったのよ」
「さようでございますか」
「ミレイナも伯爵近衛師団の団長聖女としてがんばってね」
私がゼオンの側で聖女として働けるようにとの計らいだ。
「しかも階級は師団長なんでしょ? 国王様も粋な計らいよね」
いらぬ計らいよ。
「ほら、滅びたとはいえ魔王軍が暴れた影響で周辺の隣国は治安が悪いでしょ?
ロイド国なんて国が滅びちゃって職を失った兵士たちが野盗になったと聞くわ。
国を守った英雄もそこまで落ちぶれたら無様よね。笑っちゃうわ」
「無様とは思えないわ⋯⋯これも私たち勇者パーティーの不甲斐なさ。
もっとはやく魔王を倒せていたら⋯⋯」
「ゼオンは悪くないわよ。それよりしっかりと警備しなさいよ。世の中はまだ不安定だから」
***
事件はその夜に起きたーー
『敵襲だーッ!』
城門に駆けつけた松明の炎が闇よから私たちを囲む。
「落ち着いて対処して」
ダメ、対人との戦いなんてしたことない。
なにを兵士たちに命じたらいいの?
こんな血を流す争いをしたくないからゼオンと一緒に魔王を倒したのに⋯⋯
ゼオンと一緒に静かに暮らしたいからがんばったのに⋯⋯
『ミレイナ様ーーッ!』
“ドスッ”
「⁉︎」
背中から痛み⋯⋯
なにか冷たいものが太ももをツーっと
つづく
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