聖女は戦わない〜悪役令嬢に追放されてはじまる旅の物語

ドットオー

第1話「魔王の脅威から救った世界で」

私は聖女ミレイナ・イルローネ。


勇者との旅の果て世界に危機をもたらす魔王を倒した。


繰り広げた死闘の中、勇者と私は“この戦いが終わったら結婚しよう”と固く誓いあった。

だが、その約束は破られるためにある約束だと思い知る。


謁見の間


紅絨毯の上に勇者ゼオン・グリザードと2人並んでひざまずき頭を下げた。


「国王陛下、ご報告いたします。我ら勇者パーティーは魔王を討ち取り、この国から脅威を取り払って見せました」


「うむ。見事な働きであった。勇者ゼオンよ。そなたに褒美を取らす」


「ありがたき幸せにございます」


「爵位を伯爵とし、ディルマース領を分け与える」


「はッ!」


戦いは終わった⋯⋯与えられたディルマース領で私たちの新しい生活がはじまる。


“平和な国にしましょう”


そう2人で未来を想い描いた。


2人の子供をたくさんつくって、草原をピクニック。


そこでひなたぼっこでもしながらゆっくりとすごしましょう⋯⋯


『そして公爵ウィズの娘、ルイズをそなたの伴侶とする』


「「⁉︎」」


「それは⋯⋯」


「なにか不満かな?」


「⁉︎ いや、王命⋯⋯もちろん従いまする。この上ないよろこびにこのゼオン言葉を失っておりました⋯⋯」


「よう申した。そして聖女ミレイナよ。そなたには金貨5000枚と魔法石の原石を4種やろう。

アクセサリーにも魔道具にも好きなものにするがよい」


「国王陛下! 恐れながら申し上げます。 聖女ミレイナと私は長きに渡り背中を預け合い魔王と戦っておりました。

できれば彼女を近くに置いておきたいのですが⋯⋯」


「なるほど。聖女ミレイナには兵士1万をつける。勇者の盾となり領地を護るのだ」


「⋯⋯」


言葉が出てこない⋯⋯周りからみればほんの一瞬に過ぎないのだろうが

私にはすごく長い沈黙に感じた。


「ありがたき幸せ⋯⋯」



王命は絶対に逆らえないーー


つづく

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