第53話
「俺達がですか?」
「何かしましたっけ?」
いきなり話の矛先を向けられて困惑する佐野さんと川口くん。
そんな二人の戸惑いを察してパチンコの女神はことの経緯の説明をする。
『貴方達は彼女に私の授けた能力を分けたいと申し出ました。それによって私に彼女との縁が出来たのです』
「ああ、なる〜」
「ということは、高尾さんは助かるんですか?」
佐野さんの問いかけに対してパチンコの女神がどう答えるのか、一子は固唾を飲んで見守る。
『助かるという解釈になるかは彼女次第になります。今回は私が提案出来る事は、彼女をゲルゼ・ブラディオルスの管理下から私の管理下に移すことです。そして、その為の下準備は既に終えています』
「「終えています?」」
更に急激に展開が進んでいきそうな言葉を聞いて、佐野さんと川口くんは慎重に事の成り行きを確かめるようにパチンコの女神に問いかける。
『ええ、こちらをご覧下さい』
まるで料理番組さながらにパチンコの女神は調理した食材はこちらですといったようなジェスチャーで自身の右下に召喚した物体を指し示す。
「「えっ!?ええ!??」」
そして、パチンコの女神が指し示した方に視線を向けて絶句した。
そこには一子と瓜二つと言っても顔をした妖艶な美女が市中引き回しの刑にでも処されたかのようなボロボロの出立ちで蓑虫のように太い鎖で簀巻きにされて地面に転がされていた。
「はぁ?高尾さんが2人!?」
「つーか、こっちのいちごちゃんエッロッ!!もう隠す気ないじゃん!?…てか、何でこっちのいちごちゃんはこんなにボロボロで鎖で縛られて猿轡噛まされてんの?並行世界のいちごちゃんはこういうの強めが好きなの?」
「違います!!そもそも私じゃありませんし、私にはこういう趣味はありません!!」
あらぬ疑いをかけられた一子はブンブンと頭と手を振り乱しながらその疑いを否定する。
『そうです。彼女が仰った通りこちらがこの度の諸悪の根源、ゲルゼ・ブラディオルスです』
『んむー、んむーむー』
猿轡噛まされて鎖でグルグル巻きにされた状態で召喚されたゲルゼは、この事態をまだ飲み込めていないようで必死になって何かを叫んでいる。
しかし、猿轡に阻まれていたせいでその言葉は3人には届かない。
「髪の色とか雰囲気とかは違うけど顔はそっくりだな」
「こっちのいちごちゃんの方が何か大人っぽい感じだな。流石は邪神に堕ちたとはいえ、元女神って感じで色んな部分のボリューム感が半端ねーな。でも、何でこんなボロボロなの?」
『それは拘束する際に少々暴れましたので、少々手荒い処置を施しました』
「私が一年前に会った時はもっと子供っぽい感じだったんですけどね。…ていうか、あの最後の呟きは本気だったんですね…」
マジマジと観察し始める佐野さんと川口くんに対して、一子は何とも複雑な表情を浮かべながら自分と同じ顔を持つゲルゼを見下ろしていた。
そんな一子にパチンコの女神は神妙な面持ちで声を掛けるのであった。
『高尾一子さん、私と契約して魔法少女になりませんか?』
「…、はい?」
これまた何だかとんでもねー展開になってきたなと思う佐野さんと川口くんであった。
因みにこの間、リンは序盤で飽きてしまったので岩美の上でお昼寝を開始していた。
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