第50話

「あのぉ、衣類関係はどうなってますか?」


 一子は大分この状況に馴染んできたのか、目下自分の一番の関心事について質問する。


「Tシャツとジャージとかスエットならあるかな。あとはコスプレ系とか。パチ屋オリジナルのキャラ物の子供服とかもなんでか知らないけどあるな。こういうのって実際に交換してる人いるのかな?」


「あぁそういえば、そういうの景品で見た事あるかも。…あっ、佐野さん。店舗の制服が店舗管理の方から注文出来るみたいだよ。デザインとかもわりと自由に出来るみたいだから外出着はこれで何とかなるんじゃない?」


「あっ!それ、私に決めさせて貰っていいですか?一応、職業がら衣装とかそっち方面は詳しいので」


 川口くんの提案に手を挙げて飛びつくような食い付きを見せる一子。


「いいね。じゃあ、それは高尾さんに任せるとして。後は、ああ、これどうなんだろ?川口くん、ちょっとこれ見て」


「どした、佐野さん?…ああ、なるほどね」


 不意に何かを発見した佐野さんは川口くんに意見を求めるようにスマホの画面を見せる。

 それを見た川口くんは、納得したように頷いた後少し悩み込む様子を見せる。


「でも、これは本人に聞いた方が良くない?選択肢があることは教えてあげないと」


「まあ、そうなるよな。高尾さん、ちょっとこれ見てくれる」


「はい、何ですか?…えっ!?急に何を見せるんですか!?」


 佐野さんに呼ばれた近付いてきて一子は、スマホの画面を覗き込むとその表示されている物を見て2人から距離を取る。

 そこには、際どい女性用下着の画面が映し出されていた。


「いや、男物の下着は普通のがあるんだけどね。女物は、…何て言えばいいのかな?所謂、景品的な側面の強い過激なやつしかなくてさ。ほら一応必要なら選択肢として教えておこうかと思ってね。現地の物で事足りてたなら余計なお世話だったかもしれないけどさ」


「ああ、それは、その、お気遣いありがとうございます。その件はまた後ほどで」


 一子は、顔は逸らしながらも目線だけはスマホの画面から離さない。

 そんな表情を見てきっと大っぴらには出来ないけど、ホントはちゃんと確認にしたいんだろうな。

 そんなことを察する佐野さんであった。

 因みに下着に関しては後々際どい下着を発注後に制服発注の範囲で普段使用の下着が調達出来る事が判明してまた赤面騒動に発展するのだがそれはまた別のお話。


「うん、そうだね。別に無理にこの中から揃えようとしなくても気に入らなければさっき言ったみたいにこの世界で手に入れれば済む話だしね。でも、あれだな。またこういうパターンのやり取りが出て来ることもあるだろうし、そうなると高尾さんにもこのアプリが使えると便利なんだけどな」


「佐野さん、それは流石に難しいんじゃね?」


『出来ますよ』


 佐野さんと川口くんが頭を捻りながらうーん、と唸り声をあげていると突然背後から厳かな女性の声が聞こえてくる。


「えっ?」


 一子は突然背後から聞こえてきた聞き覚えない女性の声に驚いて勢いよく振り返る。

 そこには、これぞ女神というようなゴージャスな美女が優しい微笑みを浮かべて佇んでいた。


「誰!?」


 驚きの表情を浮かべて固まってしまった一子に川口くんがパチンコの女神を紹介する。


「ああ、この人がパチンコの女神様。俺達をこの世界に連れて来て、この能力をくれたんだよ」


「女神様、ホントにいちごちゃんにもこのアプリを使えるように出来るんですか?」


『はい、可能です。でも、それとは別に実は今貴女の存在が神々の世界では問題になっているのです』


「えっ!?私が神様の世界でですか!?」


 パチンコの女神に言葉にこれはまた大きな話になって来たなと顔を見合わせる佐野さんと川口くんであった。

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