第11話
『では、まずは先程も少し触れましたがお二人が共有することになるシステムについてご説明させて頂きます。説明を始める前にスマホを出して頂いてもよろしいでしょうか?』
パチンコの女神に促され、自身のスマホを取り出して改めて確認する2人。
「スマホですか?あっ、ホントにちゃんと電波入ってますね」
「えっ?あっ本当だ。さっきここに着いた時には電波入ってなかったのに。佐野さん、どゆこと?」
川口くんの反応を見て、パチンコの女神は佐野さんのスマホと同じ処置を施したという説明をした。
その話を聞いて、もう既にそれだけで立派なチートなんじゃないかと思う川口くんであった。
『では、まずスマホのホーム画面に【ホールメイカー】というアプリがあることを確認して下さい』
「【ホールメイカー】?えーっと、あっ、ありましたありました。川口くんはどう?」
「ちょっと待って…、ああ、あったあった。…あのー、そう言えばこれって他のゲームのアプリとかって出来るんですか?」
「あっ、やっぱそれ気になる?」
自分達の今後に関わる大事なアプリの話よりも、ソシャゲのログインが途切れることが気になる残念な川口くん。
そして、それに対するパチンコの女神からの回答は無慈悲なものであった。
『残念ながら、元の世界とのコンタクトが図れれる可能性のあるゲーム等のアプリケーションに関しては使用不可となっております』
「マジですか!?いやでも、ゲーム内チャットとか無いゲームも結構ありますよ!」
しかし、それでも引き下がれない川口くん。
何故なら馬並みな美少女達のレースはまだまだ始まったばかりなのだから。
でなければスタートダッシュで課金した意味が無くなってしまうのだ。
『プレイヤー名が設定出来る時点で何かしらのメッセージを送ることは可能になりますからね。ゲーム内でのフレンド欄やギルド系コンテンツ、スコアボード、ランキング表示、トレード等、可能性は挙げればキリが有りません。逆に完全オフラインのゲーム等なら使用可能です。買切りゲームなら引き続きお楽しみ頂いても構いません』
「うわっ、それこの世界に転移したこと軽く後悔するレベルだわ。ストーリーの続きとかが気になる所の騒ぎじゃねーよ」
様々なソシャゲにどっぷりとのめり込んでいた川口くんとしては中々受け入れがたい事態であった。
それ程ソシャゲには興味がない佐野さんは、項垂れている川口くんをスルーして別方面からの質問をする。
「音楽とか動画に関しては、どうなんですか?」
『そちらに関しては、既にダウンロード済みのものはこれまで通りに使用可能です。また新規にダウンロードすることも可能です。課金方法に関しては、また後でシステムの説明と纏めてご説明させて頂きます。無料で視聴できるコンテンツに関してもこれまで同様視聴のみ可能になります。但し、評価等やコメント等は勿論することは出来ません』
「なるほど、ダウンロード済みのもの以外にも新規でダウンロード出来るのは助かりますね」
川口くんの落ち込み具合に対して、佐野さんは安堵の表情を浮かべる。
佐野さんと音楽は切っても切り離せない存在なのだ。
スマホに保存されている大量の楽曲が失われるどころか更に追加する事も可能と知って、心に余裕の出来た佐野さんは川口くんに一つアドバイスをするのだった。
「まあ、川口くん。ここは落ち込んでもどうにもならないんだから仕方ないっしょ。それに動画は見れるんだからプレイ動画とかでストーリー追えばいいじゃんか」
「…あっ、そう言われてみればそうか。あれ?ということは、新規の動画とか音楽とかも随時更新されていくんですか?」
佐野さんから齎されたアドバイスにガバッと擬音が聞こえて来そうな勢いで顔を上げる川口くん。
『はい、転移した時点からリアルタイムで日々更新されていきます』
「ということは、アニメや漫画の続きも?」
『閲覧可能です』
「ヒュゥゥー!!」
パチンコの女神の回答に思わず色めき立つ川口くん。
「マジかっ、神ですか!?」
『はい、神です』
「おお、そうだった。…すみません、何だか興奮してしまいました」
興奮の余り思わずパチンコの女神をハグしそうになる勢いだった川口くんは、何とか冷静さを取り戻す。
それをまるで気にすることなく説明を再開するパチンコの女神。
というか、脱線が多過ぎるなこの三人組。
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