第112話 死亡フラグの匂い

「おい待て。 俺が座っているのが見えないのか?」

「は? 祐也が座っているのが見えているから座るんじゃないの。 祐也が座ってなければわざわざお姉ちゃんと犬飼さんの間なんかに座らないわよ」


 うーん、そう来たか。 まったくもって意味が分からん。


 ぶちゃけ理解が追い付かずに思考停止してしまう。


 というかどの角度で考えてみても『俺が座っているから座る』という思考回路になるのか全く分からないのだが。


「よっと」


 そうこうしていと莉音は俺の膝の上に座って来るではないか。


 なんだろうか? 物凄いやってはいけない行為をしまっている用な感覚になってしまう。


 すみませんお巡りさん。 ここです。 僕がやりました。


「ちょっとっ! 祐也さんが戸惑っているでしょうっ!? 早く降りなさいっ!!」


 そして彩音が俺の膝の上に座った莉音に対して直ぐに降りるように注意をしてくれる。


 いいぞ。 もっと言ってやれ。 と心の中で彩音を応援するのだが、彩音が莉音を注意すればするほど莉音は体重を俺へ預けて来て、今では俺にもたれかかって来るしまつである。


「ごめん莉音。 流石にバスの中は危ないからちゃんと座ってくれないか? 無いとは思うが万が一事故でも起きてお前に何かあったらと万が一の事を考えると流石にこの座り方は許容できない」


 流石にここまでくると俺の御神体がバスが揺れる度に女性特有の柔らかさがダイレクトに伝わり、覚醒してしまいそうなので莉音には申し訳ないのだが、ちゃんと席についてシートベルトもしてもらいたい。


 勿論莉音の安全の事を考慮してという気持ちもあるのだが、もし万が一これで俺の御神体が反応してしまい、その事が莉音にバレてしまったらと思うと、そっちの方が恐ろしいと感じてしまう。


「え? やだ」

「やだって、お前なぁ……」

「じゃぁ私の座った席の隣に座ってよ……お姉ちゃんばっかりズルい」

「するいって言われてもこればっかりはなぁ……」


 しかし莉音は何故か子供のようにぐずりはじめ、一向に俺の膝の上から降りようとしないどころか、隣に座ってくれたら良いと言ってくるではないか。


 さすがに婚約者であり、昨日告白までされた彩音がいる前ではどう返答して良いのか分からず俺はしどろもどろになってしまう。


 これは、死亡フラグの匂いがぷんぷんするぜっ!! 畜生っ!!


「じゃぁ……帰りは隣に座ってやるから、ちゃんと座ってくれないか?」


 そして俺は美咲と彩音の表情を見ながら、莉音にそう提案する。


 美咲も彩音の『まったく。なんだかんだ言ってもまだまだ子供ね』という表情をしているので俺の選択肢は間違って無かったようでバレないように深いため息をつく。

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