第46話 自分の子供を見捨てる

 そう言うと西條祐也はゆっくりと立ち上がり、俺の顔の真正面まで近づいてくると小声で話し始める。


「人の人生を、お前が襲った女性の数だけその人生を壊しておいて、お前だけがのうのうと生きていける人生がこれから歩めると思うなよ? あと、権力者に逆らうとどうなるか分かってないみたいだけど、それがどういう事か今回分かってよかったんじゃ無いのか? じゃあな、三下。 行くぞ田中。 もうこんなクズには要はない」

「かしこまりました。 祐也ぼっちゃま。 車を用意して参ります」

「両親も、コイツか自分達のこれからの人生かよく考えて返事をするように。 その返事は一週間後に教えた電話番号までかけてくれ」


 そして西條祐也はようやっと俺の家から出ていくのだが、そこで西條が土足で上がっている事に気づくも、怒る気力も湧かない。


 むしろ怒る事によってその後されるであろう報復の方が怖くて、頭で一発でも殴ってやりに行きたいのだが身体が恐怖で動けないでいる。


 そして、西條祐也が出て行ってから何時間が経っただろうか。


 あれから全く動けずにそのばで立ち尽くしていると、親父が俺へ話しかけてくる。


「出っててくれ」

「……は?」


 親父の口から出た言葉が理解できずに俺は思わず聞き返してしまうのだが、親父、そしてお袋の表情から先程親父が口にした言葉が冗談では無いことが伺える。


「もうお前とは縁を切ると言ってるんだ」

「な、なんでだよ親父っ!? 自分の子供を見捨てるって言うのかよっ!?」

「アンタは……アンタはそうさせても仕方ないと思えるような最低な行為をしてきたのよ。 こんな事になってもまだアナタは自分のしでかした行為の重さが分からないのね……」

「お、俺が何をしたと言うんだよっ!? どうせ俺が犯さなくても別の誰かと裏ではやってんだろうがっ!? それが処女であろうがその内誰かとやる行為だろうがっ!! その行為が俺に変わっただけで何でこんなに俺だけが責められないといけないんだよっ!? むしろそんな事で責められる俺が一番の被害者だろうがよっ!! なのに何でお前ら両親が俺を助けないんだよっ!? おかしいだろうがよっ!!」


 意味がわからない。


 何で俺がここまでこんなに責められなければならないのか。


 どう考えても悪いのは西條祐也で、そしてその西條祐也に騙されて俺を責め始める両親もゴミだ。


「そうだな……親としては失格だな」

「だったらっ──」

「親ならばお前が他人様に迷惑をかけないように世に出てこないように隔離して最後まで面倒を見るべきだろうが……金も覚悟もない。 だから、縁を切るという最も簡単で最低な方法を使わせてもらう。 その件についてはすまないと思っている。 でも父さん達には父さん達の人生がある。 申し訳ないがこの家から出て行ってくれ」


 そして親父はそういうと俺に頭を下げてくるではないか。

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