第45話 バァーーーーーカ

「お、俺が何をやったって言うんだよっ!? こんな暴力沙汰を起こしてタダで済むと思うなよっ!? 西條ぉっブヘッ!?」


 明らかにこの状況は西條側が悪いにも関わらず、いきなり俺は親父に右頬を殴られたではないか。


 しかも予期せず殴られたせいで衝撃を殺すこともできずにモロに喰らってしまった為歯が何本か折れたみたいで、口の中に転がるのと同時に血の味が広がる。


「何んで俺を殴ってんだよ親父っ!! どう考えても悪いのは西條の方だろうがよっ!! なんで西條じゃなくて息子である俺を殴ってんだよっ!?」

「お、お前っ! 今まで自分が何をして来たのか分からないとは言わさんぞっ!! 今まで何人の女性を襲ってきたっ!? お前は女性を襲う為に今までその身体を鍛えてきたのかっ!?」


 恐らく西條祐也に何かを吹き込まれたのであろう。


 でなければあの親父が俺を殴り、さらに殺意の篭った目で俺を見る訳がない。


 一体何を吹き込まれたのかは知らないのだが所詮西條は他人である。


 息子である俺が訴えかければ西條祐也が吹き込んだ事など信じないだろう。


「ち、違うっ!! そうじゃなんだ親父っ!! 西條に何を吹きこまれたのか知らねぇがコイツの言っている事は全て嘘なんだっ!! 頼むから俺の話を聞いてくれよっ!!」

「私の……私の育て方が間違っていたんだわ……。 もういっそこの化物を殺して私も死んで、被害者の方々に償うしか……っ」


 そして俺は親父に西條の話ではなくて俺の話を聞いてくれと訴えかけるのだが、俺のその姿を見て今度はお袋が俺の頬を泣き叫びながら叩くではないか。


「お、お袋っ!? 何を言ってんだよっ!?」

「何を言ってるかですってっ!? アンタのしでかした事を償うにはアンタのような化物を殺して、その化物を産み育てた私自身も死ぬ事以外に出来ることが分からないって言ってんのよっ!!」

「だ、だからっ! それは西條がでっち上げた──」

「ほう、我が西條グループが金を注ぎまくって手に入れた証拠の数々がでっち上げだとでも言いたいのかな?」


 ここで何故か西条が俺の話を遮って喋り始めるではないか。


 腕と足を組み他人の家で踏ん反り返りやがてからに……絶対にお前だけは許さねぇ。


 俺をここまでコケにした償いは絶対にさせてやる。


「証拠……だと……?」

「とは言ってもお前の犯行の証拠なんか時間も金もかからずに直ぐにかなりの数が集まったがね」


 そして西條はそういうと座卓の上を指で指すではないか。


 そこには数多くのボイスレコーダーと共に、昨日犯そうとした女性とその行為の一部始終の写真があった。


 確かに、言われてみれば昨日は良い所で路地裏に深夜にもかかわらず人が来やがったと思ったら……そういう事かよ。


「西條、貴様……この俺を嵌めやがったな?」

「何変な事を言ってんだよ。 嵌めたんじゃなくて自分で穴を掘って自分で落ちただけだろバァーーーーーカッ!」

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