第37話 当然許すわけもなく

 そして今日も一緒に帰ろうと彩音を誘うのだが、彩音は『アイツの家に泊まりに行くから』『婚約者であるアイツに悪いから』という理由で俺と一緒に下校することを拒み、俺と同じ帰宅路ではなく、彩音の実家とは真逆の方角へと車に乗って帰って行く姿を見ることしかできない。


 そんな自分に腹が立つし、アイツの家でどんな事をされているのかと想像しては感情が爆発しそうになる自分にも腹が立って仕方がない。


 俺が、アイツみたいに金持ちであるのならばもう少し違ったのか? アイツでなく俺を選んでくれたのか? などというたらればを考えてしまう。


「何でこうなったんだよ……」


 そして俺は、もう何度目かになる言葉を俺は呟くのであった。





「おいおい、のこのこ一人で来やがったぞコイツっ!!」

「ガハハハハッ!! やぱり坊ちゃんはいくら噂話が悪かろうと育ちがいいのか何なのか坊ちゃんは坊ちゃんなんだなっ!!」

「取り敢えずお金は持って来たんだろうな? 三百万。 西條家の御曹司なんだから余裕だよな? そんくらいっ!」


 何だろうか?


 罠であるとは思っていたのだが、想像以上の雑魚キャラムーブを噛まされてどう反応して良いのか困ってしまう。


 これが大人であれば俺が西條家の御曹司だと分かった瞬間にその後の報復が怖くて逃げ出すのだろうが、所詮高校生はまだまだ子供というか何というか、かけっこが速いとモテるという価値観がまだ通用すると思っている人間はいるのであろう。


 そういう奴らは経済的な面や権力的な面の物差しはまだ持っておらず、かけっこから喧嘩や部活の実力くらいしか新しい物差しは増えてないのであろう。


 なのでここで俺をボコったとしてもその後に確実に訪れるであろう報復など一ミリも考える事がまだできないのだ。


 だからこそウザいからという理由だけで西條家の御曹司と分かっていながら俺をわざわざ校舎裏にまで呼んでボコろうという発想になるのである。


「所詮は子供の発想だな。 ガキはガキらしく家に帰ってママの作った料理でも食べてれば良いものを」

「オイオイオイ」

「アイツ死ぬわ」

「このボクシング国体三位の俺にそんな口聞いてただで済むと思ってるのか? ここまで馬鹿にされたら慰謝料としてさらに三百万と、そこの隣にいる女も渡して貰わないと気が済まないね。 まずは一発殴らせろやっ!!」


 取り敢えず話してどうにかなるのならばそれで済まそうとは思っていたのだが、それで済むわけもなく、そして慰謝料だとか何だとか何だかんだと理由をつけてさらに三百万と俺の側使えである犬飼を寄越せと言い、さらに殴らせろと来た。


 こうなっては当然許すわけもなく、コイツらには一度物理的に痛い目を見てもらった後に経済的にも痛い目をみてもらうしかないようである。

 



───────


「オイオイオイ」

「アイツ死ぬわ」


( ^ω^ )ちょうど某漫画を一巻から読み返していたのでw




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