Episode.2

「よっ」


「よぉ」


 放課後。


 蒼空が帰り支度をしていると、クラスメイトで友人の小花おばな優音ゆうとが声をかけてきた。


「なぁ、今からみんなでハンバーガー食いに行くんだけど、アオも行かね?」


「みんな……って、誰だよ」


「えー、リックン、イッチー、ハルル、ミナピー、ツムツム、かな」


「はあぁ?」


 最初の二人は仲の良い男友達だから分かったものの、残りはもはや呪文か何かにしか聞こえない。


 誰とでもすぐ仲良くなれる能力を持っている優音は、みんなに愛称を付けて呼ぶ。


 蒼空そらの事を“アオ”と呼ぶのも優音だけだ。


「待て待て待て。名字で言ってくれ。リックンとイッチー以外は誰だか分からん」


「えーと、何だっけ?まあ、そこの廊下にいるメンバーよ」


 優音が指差す方を見ると、廊下で男女が集まって何やら話していた。


 男子二人の他はほとんど話した事のない女子ばかりだったが、まあ優音達と話しておけば大丈夫だろう。


「うん、俺も一緒に……」


 行く、と言いかけた時、蒼空のスマホが鳴った。


<今日は久々に早く帰れそう!>


 颯汰そうたからのメールだった。


「ごめん、やっぱ今日はパス」


「えー、何で」


「用事思い出した。今日は帰るわ」


「そっかあ、残念。また今度行こうぜ」


「うん、また今度な」


「じゃあ俺もう行くわ。アオ、ばいばーい!」


「ばいばい」


 大きく手を振りながら走って行く優音に、蒼空も小さく手を振り返して見送った。


(今日は駅前のドラッグストアでトイレットペーパーが安売りだったな。商店街のスーパーはタイムセールで肉が安かったし……。今から出れば間に合うな。よし、買い物して帰ろう)


 急いで鞄に荷物を詰め込むと、蒼空は足早に教室を後にした。

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