第3話
非通知の無言電話がかかってくるようになってから今日で1週間だ。
あれから毎晩のように非通知の電話がかかってくるようになったせいで精神をやられてしまい俺は完全に寝不足になっていたわけだが、数日前に非通知電話を着信拒否できると気付いたためようやく無言電話は収まった。
しかし、今度は支離滅裂な内容のメールが毎晩大量に送られてくるようになってしまったのだ。
「……これ、犯人は絶対俺の知り合いの誰かだよな」
メールの内容には俺の個人情報が色々と書かれているため、業者から送られてくる迷惑メールでは無く俺のことを知っている個人が書いている可能性が高い。
“私は水神慎二を愛している愛している愛している愛している……”とひたすら書かれたメールが500通近く送られてきた時は流石に狂気を感じた。
「メールを送ってきてるのは多分無言電話と同じ奴だろうけど、一体何が目的なんだ……?」
非通知電話を着信拒否にした途端メールが送られてくるようになった事を考えると、同じ奴が犯人なのはほぼ間違いないだろうが、その目的がさっぱり分からない。
俺にこんな嫌がらせをして相手には一体何のメリットがあるのだろうか。
しかも悪質な事に迷惑メール設定に入れて受信を拒否しても次々とアドレスを変えて送ってくるためキリがなかった。
「マジで気持ち悪い、結局一体誰なんだよ……」
一度お前は誰だと送られてきたメールに返信もしてみたが、水神慎二の未来の妻というふざけた返答しか返ってこなかったため、これ以上相手に聞いても時間の無駄だろう。
「はぁ……考えても答なんてでないし寝よ。今日は寝られるかな……」
精神的にやられているせいでちゃんと眠れるかどうかは分からないが、ひとまず俺はベッドに入ってゆっくりと目を閉じた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌朝、結局よく眠れなかった俺は寝不足気味な表情のままダイニングテーブルに用意されていた朝食を食べて学校へと向かい始める。
それから学校に到着して靴箱の中に手を突っ込んだ俺だったが、違和感を感じた。
「ん? なんだこれ……」
いつもとは違う手触りを訝しんだ俺が靴箱の中を覗き込むと、なんと大量のゴミが入っていたのだ。
「……おいおい、誰がこんな事したんだよ」
大量に入れられていたゴミを取り除きながら上履き取り出していると後ろから聞き覚えのある声がする。
「……酷い、誰がこんな事を」
後ろを振り向くとそこには今登校してきたであろう七海さんの姿があった。
「見ての通りだよ。誰かから嫌がらせを受けてるみたいだ……」
「私も片付けるの手伝うよ」
「いいよ、別に」
俺はそう答えたが、七海さんはそんな言葉などお構いなしに靴箱からゴミを取り除き始める。
そんな様子を俺はただぼんやりと眺める事しか出来なかった。
ゴミを片付け終わった俺達は2人で教室へ向かって歩き始める。
七海さんは俺が冷たく接していたにも関わらず色々と励ましの言葉をかけてくれて、その優しさが身に染みたが雨宮と付き合っている事を思い出して暗い一気に気持ちになってしまう。
だから俺は七海さんを諦めるために心を鬼にして今まで通り冷たい態度を取り続ける。
そんな事をしているうちに教室へと到着したわけだが、中に入った瞬間クラスメイト達から可哀想なものを見るような視線を向けられた。
なぜそんな目で見られなければならないのかと不思議に思う俺だったが、すぐに理由が分かる。
「……あれ、俺の机がない?」
そう、クラスにあるはずの俺の机があるべき場所に存在していなかったのだ。
その光景を見た瞬間、俺の追い詰められていた精神は限界を迎え猛烈な吐き気に襲われる。
教室の中で吐くわけにはいかないと思った俺は荷物をその場に投げ出すと口を押さえたまま男子トイレの個室に駆け込む。
そして朝食べたものを全て便器の中に吐き出し、そこで俺の意識は完全に途絶えた。
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