第78話 披露宴

教会での結婚式を終えて、今度は外で披露宴が始まった。


今回は式の参列者が多いため、各自食事を持ち込みながらの披露宴となっており、披露宴会場には豪勢な料理がこれでもかとテーブルの上に並べられている。


それでもテーブルが足りなかったのか、わざわざ丸太を運んで木材を加工してテーブルを作るほどにみんな盛り上がっていた。


新郎新婦は二人並んで座っており、その周りを囲むように、人だかりが出来ている。

そして二人を祝うためにとやって来た人たちが老若男女、ところ構わず群がっておりワイワイと酒を飲みながら騒いでいた。


「二人ともおめでとう!」


大きな祝福の声は掛け声となり、皆拍手喝采で二人を出迎え祝っている。会場のどこかで勝手に歌う者まで出てきた。まるでお祭りのようだと民の者たちは浮かれている様子だ。実は彼らの多くは結婚式が始まる前からすでにお酒を嗜んでいたようで、そのため披露宴は始まったばかりだというのに一部の者は完全に酔っぱらっており、勝手に酒を煽りながら踊り出す始末。


どうやら披露宴会場は始まる前からすでに出来上がっていたようだ。


すでにその場は出来上がっていたせいでケビンとサーシャは酔っ払いに絡まれないようにと気をつけてちびちびと少量ずつ酒を口にしていた。


それでも結婚式に参加した者たちは皆上機嫌で踊りを踊りながらお酒を飲み、豪勢な食事に舌鼓を打つのであった。


ケビンに憧れていた女たちは、サーシャに彼を取られたと逆恨みをしたり、羨(うらや)んでいたりもしたのだが、結婚式で綺麗に化粧をして純白のウェディングドレスを纏ったサーシャを見た後は、


「負けたわ」

「ハァ……、二人ともお似合いね」


とサーシャの美しさに驚いてしまい、女たちは渋々ケビンのことを諦めたようだ。


ケビンと同年代の男たちもサーシャの美しさに驚いて「俺も告白しておけばよかった」などと後悔した者もいたようだ。


そうして幾人かはトボトボと家路につき、残った者たちは宴を楽しむ。


いつしか宴は落ち着きを見せると楽器を持った者たちが次々と音楽を奏で始めた。軽快な曲に合わせて、参加者たちは手拍子を加え、メロディを口遊みながら立ち上がり、今度は踊り始めた。


貴族たちの社交界ダンスとは違い、この領地では庶民が嗜む踊りがある。フォークダンスのように男女ペアでくるくるとまわりながら踊るようだ。


皆楽しく手拍子をしながら楽器を弾いたり、笛を吹いたりと楽しそうだ。そしてその場にいたほとんどの者たちが音楽を口遊みながら楽しく踊っている。


もちろん本日の主役の二人もそんな場で踊らないわけにはいかない。ケビンは嬉しそうにサーシャの手を取った。


「サーシャ僕たちも一緒に踊ろうか」

「私踊るの下手よ」

「昔はよく踊ってたじゃないか」

「子供のころでしょ?」

「大丈夫だよ、ほら一緒に踊ろう!」


ケビンは強引にサーシャの手を引くと踊りの中に入っていった。


サーシャも踊り始めは記憶を辿りながらオロオロとしていたが、ある程度すると体がリズムに合わせて勝手に動くようになり、ケビンと共にリズムに身を任せて楽しく踊り始めることができるようになった。


ケビンも嬉しそうにサーシャに合わせて踊ると曲は軽快な音楽からしっとりとしたムードのある音楽に変わる。二人は音楽に合わせて身体を寄せあい、ゆっくりとした流れで唇を合わせるのであった。


こうして楽しい宴は終わり、新郎新婦が先に見送られることになる。


サーシャの手を引いてケビンは馬車まで移動する。


本当ならば白馬の馬車に乗せていくのがよいのだが、ケビンには愛馬がいるため、二人はみんなに見送られながら愛馬の馬車(略して愛車)に乗って自宅へと戻るのであった。


父パトリックは号泣し、サーシャの妹たちはサーシャの花嫁姿に憧れながらいつかは自分たちもと浮かれている様子。


この星での季節は秋。


うっすらと桜のような花を咲かせる並木道を愛車は通っていた。ケビンは馬車を操縦して隣にはサーシャが座っている。サーシャは幸せの余韻に浸りながらケビンの隣で身体を寄せてピッタリとくっついている。


「ウフフ♡やっと結婚式が終わったわね。これで私たち晴れて夫婦になったのね」

「そうだね」

「まさか私がケビンのお嫁さんになれるなんてね。子供のときには考えられなかったわ」

「え?そうなの?」

「え?どうしたの?」

「いや、ぼ、僕は、その、昔からサーシャのことが……」


「え?」

「好きだったんだ。もう、ずっと諦められなかったんだ」


隣で恥ずかしそうに照れるケビン。


「ありがとう♡ケビン」


ウフフ♡とサーシャは幸せを噛みしめている。そして恥ずかしそうに照れる旦那が可愛くて仕方がないとばかりにサーシャは花婿ケビンの頭を優しく撫でまわすのであった。


ケビンは懐いたペットのように


「でも、やっとつかまえることができたよ」

「そう、私、捕まえられちゃったのね」

「もう離さないよ」

「ええ、ずっと一緒にいましょうね」


愛車の中で再び口づけを交わす新郎新婦。

甘々である。

たとえ馬車が時々揺れようとも、そんなことなど気にもせず二人はイチャイチャとくっつき合うのであった。


晴れやかな秋の日のこと、


二人はようやく結ばれ、こうして結婚式は無事終了したのであった。

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