第74話 修練場での試合①

アレクたちは朝稽古の場所が手狭となったため、新たな修練場所とひて学園の修練場を使わせてもらおうとメサーラ学園長に頼みに行った。しかしメサーラ学園長からの返答は上級生であるカインの許可があれば使用できるとのことであった。


アレクは仕方なくカインに頼みに行くと彼はアイリーンと一緒に鍛錬しないのであれば修練場は使わせないと言い出した。カインは上級生にして騎士団コースのリーダーの立場にありながらも私情丸出しである。アレクたちの抗議によって今度は3対3で試合をしてアレクたちが勝てば修練場を使っても良いという流れになった。


そんな昔の少年誌のような展開にアレクは正直うんざりしていたのだが、思いの外サラとジョージの二人がやる気になっていたのでアレクも試合を受けると同意した。


こうして修練場の使用をかけて闘うことになった3人は木剣を振り回しながらウォーミングアップをしている。


ちなみに対戦相手はこんな感じである。


①ジョージ VS ダレン

②サラ VS セドリック

③アレク VS カイン


上級生メンバーの三人はは騎士コースのトップ3である。対してジョージは騎士コースですらなく、魔法科二年生である。サラも実力はあるものの、騎士コース一年生という立場である。


こうしてみるとアレクが三人抜きしないと話にならない状況であった。しかしジョージはそんなことは考えてもいないのか、緊張することもなく修練場の中央へと歩み出た。


「よし!いっちょやってみるか!」


ジョージは肩をぐるぐると回して準備して運動を始める。


「よし、生意気そうな後輩は俺が指導してやるか」


ダレンも準備が整ったようだ。

二人は向き合って剣を構えた。


「それでは、はじめ!!」


カインが大声で開始の合図を出した。

合図と共に双方は剣を構えて勢いよく前に出た。


「うぉぉ!」


先に剣を振ったのはジョージの方だ。ジョージは木剣を上段から振り下ろした。


カァン!


もちろんダレンは余裕で受け止める。そしてダレンは上段に受けた剣を跳ね返すとそのまま横薙ぎで反撃した。


「おっと」


ジョージは咄嗟に後ろへと離れてダレンと距離をとった。ダレンはそのまま剣を振り抜くと、回転して振り返るとともに勢いをつけて上段斜めに木剣を振り下ろしてきた。


ジョージは木剣を構えて受け止めるがダレンの勢い良く振り下ろされた攻撃によって力負けしてしまい、勢いよく後ろに飛ばされてしまう。


ダレンはニヤニヤとしながらさらに追撃を仕掛ける。ジョージは体勢を整えて剣を構えるがダレンの追撃には間に合わず肩に剣が当たってしまう。


「うっ!」


ジョージは痛みに顔を顰めるものの剣を下段から上に向けて反撃した。ダレンはニヤニヤしたままジョージの攻撃をサッと躱す。


「まだまだだな」


やはり上級生には敵わないのかジョージも僅かな手合わせの中でダレンとの実力の差をまざまざと見せつけられている。


「くそぅ!」


ジョージも敵わないことを理解しているがもう後には退けない。


「うおおお!」


今度はやみくもに剣を振りながら攻撃を繰り返した。ダレンは冷静にジョージの攻撃を受け止める。


カァン!カァン!カァン!


「威勢がいいな」


ジョージは繰り返し何度も木剣を振り繰り返し攻撃をする。


「そろそろかな」


ダレンはジョージの蓮撃を受けながら隙をつくように反撃に出る。


「今度はこっちの番だ」


ダレンの反撃から形勢は逆転し、今度はジョージが守り一辺倒に追い込まれる。


「ほらほらしっかり受け止めろよ」


ダレンはお得意のフェイントを入れながら攻撃を繰り返す。ジョージはまだフェイントに慣れておらずダレンの攻撃を受け止めきれずにいた。


「このまま終わってたまるか!」


ジョージは再度奮起してなんとかダレンに反撃するが、実力の差がありすぎるのか、この試合はもう完全にダレンのペースに支配されていた。


「くそ!」


ジョージも焦りながら剣を振るもののダレンには全く通じない。やはり騎士団コースのエリートとの実力差は抗いがたいものがあった。


ジョージも魔法科の生徒でなければもう少しは通用するぐらいに闘える実力にはなっていたかもしれない。


そうして試合が始まってもう5分経った。


ダレンは全く疲れていない様子だがジョージはゼェゼェと苦しそうに肩で息をしている。


「ジョージ頑張れ!」


サラとアイリーンは大声で応援した。


「どうした?これで終わりか?かわい子ちゃんが応援してくれているぞ?」


いいところを見せなくていいのか?

ダレンはジョージを挑発した。


「うおおお!」


ジョージは勢いよく剣を大振りするとダレンは待ってましたとばかりに攻撃を避けてすぐ反撃した。


「うっ」


ジョージの腹にはダレンの木剣が当たる。


「ジョージ、攻撃が雑になってるぞ!!もっと無駄のない動きを意識しろ!」


アレクは大声でジョージにアドバイスをした。


「す、すまない」


ジョージは苦しそうにお腹に手を当てて痛みに耐えていた。彼の額には大量の汗が流れている。


「そろそろ決着をつけるか」


ダレンは上段に剣を構えるとジョージに向けて剣を振る。ジョージは懸命に剣を構えて攻撃を受け止めた。


彼はジョージに対して油断や手加減をしているように見えるが実際は手を抜かずに真剣に立ち合っていた。


上級生なれど慢心せずにダレンは真面目に仕合に臨んでいるのだ。そのために可哀想なジョージはダレンに太刀打ちできずにいたのである。


これまでか……。


ジョージは圧倒的な実力差に弱気になってしまう。


「ジョージ!諦めるな!」


サラはジョージを叱咤する。


アイリーンはメリアの横に立って肘で小突くとメリアは仕方なく「わかりましたよ」と言ってため息を吐いた。


「ジョージさん!頑張って!」


メリアの応援にジョージは嬉しそうに手を振った。


「よそ見しないで!」


ジョージの呑気な反応を見てメリアが焦った。


「イチャイチャしてんじゃねえよ!」


彼女のいないダレンはつい怒りに身を任せて力任せに剣を振ってしまう。


「隙あり!」


ジョージはダレンの大振りを躱してダレンの額に木剣を打ち込んだ。剣を打ち込まれたダレンは顔を押さえてうずくまった。


「それまで!」

「やったあ!」


女子たちは大喜びではしゃいだ。


「か、勝った」


ジョージはガクッと膝を地につけた。


「ジョージよく戦ったな!私も頑張るぞ!」


次はサラの番だ。


「次の試合を始める!」


「次は私の番だな」


サラの兄であるセドリックが前にでてきた。

二人は互いに剣を構えて向き合うと試合開始となる。


「それでは試合はじめっ!」


「サラ!頑張れ!」

「サラさん!頑張って!」


アレクとオレアリスが声を出して応援する。


「はあぁぁ!」


サラは木剣を横に構えるとセドリックに向けて突進した。

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