第60話 はじめてのデート

アイリーンはようやく復学できるようになった。


メリアとサラも同じくである。


そして久しぶりにアイリーンに会えると言ってアレクは有頂天になっていた。幸せすぎて飛んでいくんじゃないかと思えるぐらいフワフワとしていた。


地に足がついていない。

アレクはまさしく浮き足立っていた。

まるで羽の生えたように軽い足取りでアレクは早々と学園に登校した。


教室の中を覗くとアイリーンとメリアそしてサラがすでにおり、アレクは満面の笑みを浮かべて教室に入った。


「アイリーン!」

「アレク様!おはようございます♡」


アイリーンの背後には白い薔薇が咲き乱れている。(ように見える)


もはや幻想の世界。


アレクは幻覚を見ているのかアイリーンの可憐さに魅了の魔法がかかっているのか。


まあどちらでもいいのだが……、二人は白い薔薇に包まれながら仲睦まじく手を繋いだ。


「アイリーン、おはよう♡」


アレクの両目には♡マークがついており、すでに魅了されているようだ。


今日はまだアイリーンのメンヘラ性を感じていないアレクは超美少女アイリーンの存在をありのままに愛でていた。


アイリーンもアレクへの好意が数割アップしており、側から見ると二人は完全にお花畑にいるようだ。


完全な別世界を作っている二人をサラとメリアは介入をあきらめて無言で見守っていた。


「今日もアイリーンすごく可愛い♡」

「あら♡ありがとうございますわ♡」


えへへ♡

ウフフ♡


「おはようございますぅ!それでは授業をはじめますねぇ!」


二人の世界をぶった切るようにフラン先生がやって来てようやく授業が始まった。


フラン先生の魔法理論はわかりやすくて面白い。すでに神童扱いのアレクでもフラン先生の能力の高さはなんとなくわかっていた。


しかし、それよりも、アレクは授業を受けつつも隣に座るアイリーンが原因でまったく集中できていなかった。


久しぶりに会ったからか、ドキドキが止まらない。なにせアイリーンは今世において初恋の相手である。(妹のマリアは除外)


今までよりもアイリーンを意識し過ぎているのか隣にいるだけでアレクは顔を紅潮させてすこぶる緊張していた。


アイリーンはそこまでの意識はないが、アレクへの好意ゆえか、いつもより可愛らしさが増しているようだ。それがアレクへの魅了アップになっているのだろう。


こうしてドキドキしながらようやく授業が終わり、寮へ帰ることになったアレク。

今日は全く授業に集中できなかった。


しかし、恋の虜になったアレクは全く反省しておらず、むしろアイリーンのことばかり考えていた。


そこにアイリーンが声をかける。


「アレク様、今度お休みの日に街へ一緒に出掛けて行きませんか?」

「え!?」

「聞けば庶民の若い男女はデートといって一緒に買い物したり、食事をしたりと遊ぶそうではありませんか。私たちも一度そういう体験をしてみたらと思いまして」

「う、うん!わ、わかった!」


アレクはもうドキドキが過ぎて大変だ。心臓がオーバーヒートするのではと思うぐらい胸の鼓動の音が速い。


「それではまた明日♡」

「じゃあね」


アレクは手を振りながらその顔はなんとも言えないほどだらし無く腑抜けた顔だった。


「えへへ♡アイリーン♡大好きだよ♡」


部屋に戻ったアレクは最新のアイリーンの姿絵を見ながらデレデレとしてただボケっと寝っ転がっていた。


セバスも「お若いですなあ」とニコニコとして腑抜けたアレクを見守っているのであった。



アイリーンはメリアと共に部屋にいた。


「うふふ♪今度の休みが楽しみですわ♡」

「よろしいのですか?」

「何が?」

「いえ、御家の方々から何か言われるのではないかと思いまして」


メリアは心配そうにアイリーンに意見を伝える。


「心配ないわ、どうせ誰も何もできないでしょうから」

「すみません、出過ぎた事を申しました」

「いえ、心配してくれてありがとう。でも大丈夫よ。でも何かあればよろしくね」

「はい、皆にも伝えておきます」

「サラはお留守番にしておきましょう。メリアは皆と周囲の警護をよろしく頼みますわ」

「かしこまりました」


そう言ってメリアは部屋を出て行った。


うふふふ♡


「当日は何を着て行きましょうか」


アイリーンは楽しそうに最新の洋服のカタログを調べるのであった。


アイリーンは以前サーシャとクレメンスの食事デートを見て密かに憧れていたのだ。幼いながらも大人の付き合いというものに興味を持つお年頃である。


アイリーンは楽しそうに洋服を選ぶのであった。

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