第38話 剣術大会②

「それでは二回戦を始めます」


そんなアナウンスにアレクは疑問に思う。


あれ?俺まだ一回戦も出てないよ?

まさか練習中に試合が終わってたのか?


だとしたら恥ずかしい……。


あまりにもの羞恥にアレクはサラたちの前にいられないほどの居た堪れなさを感じるのだった。


「あれ?そういえばオレ、名前呼ばれてなかったよな……」


よくよく考えてみれば自分の名前を呼ばれていないことに気づいたアレクは慌ててトーナメント表を見直してみる。


そうしたら、なんとアレクは二回戦目のシード枠に入っていた。しかも相手は先程サラと戦っていた兄のセドリックだ。


もしサラが勝っていたら次はサラと戦うことになっていたのだ。抽選なのだろうか、選別がえげつない。


「それでは二回戦からシード権のある選手が登場します」


「四年生カイン!」


観客席は大きな声援でカインを讃える。


ワーワーキャーキャーと声援が響く中、カインが出場した。


対して三年生で強そうなガタイの良い生徒が出てくる。


この生徒たちは本当に十代なのか?

いつもの疑問である。


「始め!」


掛け声と共にガタイの良い三年生はカインに攻撃する。ガタイの良い三年生はニヤニヤとしながらカインに攻撃する。


対してカインは冷静に剣を受け止めて切り返す。カインは攻守ともにバランス良く、相手の方は力技で押し込んでいくタイプの選手だ。


しばらくして三年生が仕掛けてきた。


剣で斬り込むようにするところを身体ごとタックルする様にカインにぶつかったのだ。故意であれば反則なのだが、わざとらしくもたまたまバランスを崩してそうなったかのように見せる技術はすごかった。


しかしカインは押し倒されることなくタックルを受け止めて、しかもバランスを崩した相手を投げ飛ばしてしまう。


観客たちは騒ぎ出す。


アレク「反則じゃないのか?」

サラ「いや、ギリギリ大丈夫のようです、審判も何も言ってきませんし」

アレク「投げちゃったよ?」

サラ「そうですね……、大丈夫みたいですね」


三年生は自分から仕掛けたにもかかわらず、思わぬ反撃で恥をかかされたことに腹を立てた。そして乱暴な程に剣を振り回してカインを斬りつける。


カインはそうした三年生の攻撃を鼻で笑い、最小限の動作で攻撃をかわし、剣で受け止め、そして反撃する。


あっという間に劣勢になった三年生は焦りながらも攻撃をするしかなかった。


そしてとうとう優劣が決まる。


「それまで!」


カインは相手の首に剣を当てたあと、とうとう相手も負けを認めて項垂れる。実力の違いを見せつけるような試合だった。


「次の試合を行います」


次に出てきたのは女の子だった。


三年生らしいが年齢がわからないほど小柄な女の子が出てくると観客席から男たちの声援が響き渡る。


「ユランちゃーーーん!!頑張れーーー!!」


まるでアイドル。


男たちは応援幕を張り、小さな旗にはユランの姿絵が描いてある。それを振り回しながら必死で応援していた。


「が、ガチや……」


アレクはその狂気じみた応援に驚くと共に熱狂的なファンを持つユランを恐れた。


「すげえ……」

「アレク様?あんなのが好みなのですか?」


隣ではアイリーンがうふふと笑いながら黒いオーラを放っていた。


「い、いや、応援が狂気じみているなと……」(アイリーンも時々狂気じみているけど)

「確かに凄いですわね」


アイリーンも引くぐらいの熱狂ぶりである。


対して四年生の上級生が入ってくる。同じく女性なのだが、男?と思うほどの大柄な女性だ。


薄緑の髪にお下げは可愛らしいがゴツい彼女にはまったく似合わない。


ユランは紫色の長い髪をツインテールしている。身長は145センチぐらいだろうか。相手とは40センチ以上も差がありその体格差は圧倒的である。ユランは小柄で軽装なのでサラと同じくスピードタイプの戦闘が得意なのだろう。


「始め!」


審判の掛け声と共に両者は動いた。


ドスンドスン!


そんな感じでゴツい女子(名前はアリスちゃん)は猛烈な勢いでユランに接近する。


ぶんっ!!


かつてのドルトン先生の槍投げの時のような凄味のある攻撃をするアリスちゃん。まるで戦斧を振り回すかのように巨大な剣を振り回す。


ユランは余裕で躱して様子を見ている。

先程一回戦の小柄な男性の戦い方に近い。


ユランちゃーーん!頑張れーーー!


うざいほどの男たちの声援が闘技場に響き渡り、その熱狂ぶりにアレクも少しうんざりしてきた。


アリスちゃんは先程の戦いを見て警戒しているのか、隙を見せないように大振りながらも大勢を乱さずに攻撃を繰り返す。アリスも攻撃をするタイミングをみながら相手の攻撃を慎重に躱し続けた。


そうしていつのまにか五分経ち、一向に進展しないほどの膠着状態になった二人だっだが、とうとう痺れを切らしたのかユランが前にでる。


それを待ち侘びていたかのようにアリスちゃんは怖い顔をニヤリと歪めながらユランめがけて剣を振る。


ユランは攻撃を受けるのではなく、受け流して剣を滑らせるように合わせて躱し、すぐさま跳躍してアリスちゃんの首筋に剣を当てた。


「それまで!」


うぉぉぉぉ!!やったぁぁぁあ!


男性陣は大喜び。大歓声である。

ユランはアリスに握手を求めた。アリスも負けを認めて互いに握手すると観客席から大きな拍車が送られた。


次!


さっきのダレンという上級生がやってきた。対して相手のほうは小柄な体格のブレイクという二年生だ。


始め!


二人はお互いの間合いを取り合う。お互い先程の戦いを観ていたからなのか、慎重に隙を伺いながら闘い合っている。


ダレンのフェイントをブレイクはしっかりと見極めて攻撃を躱し、受けて反撃する。その精度は高く、二年生とは思えないほどの技量だ。


ダレンも舌打ちをしながらもブレイクへの攻撃をやめずにフェイントを絡めながらの変則的な攻撃を仕掛け続ける。


ブレイクはダレンがフェイントをかけようとすると一歩引き、必ず距離を取る。そして攻撃を躱すとすぐに攻撃に転じるのであった。


ダレンも段々焦ってきたのか、攻撃が雑になってきた。その隙を狙ってブレイクは剣を絡め取って気がつけばダレンの剣は地に落ちてブレイクの剣はダレンの首筋に止まる。


「それまで!」


二年生が上級生二人を降していくことに観客席の生徒たちの歓声が湧き上がる。


ダレンは落ちた剣を拾い、「やられたよ」と去っていった。ブレイクは額から多汗をかいて荒くなった息を深呼吸によって整えていた。


次!


いよいよアレクの番である。


「よし!行くか!」


少し緊張しながらアレクは試合会場へと移動した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る