第28話 モブ王子は学園生活を満喫する?
アレクが学園に入学して早一か月が経った。
魔法能力の鑑定試験や体力テストではアレクの剣技の素晴らしさと魔法行使での惨劇が瞬く間に全生徒に広がり、同級生たちからは「初代アルテマ王の再来」と言われて密かに恐れられるようになっていたのである。
噂を広めたのはだれか知らないがいい迷惑だと言いながらアレクはうんざりしながら授業を受ける。
実は噂の発信源は隣にいるアイリーンであるのだが、何も知らないアレクはすぐそばに犯人がいるのも知らずに
しかし体力テスト以来、サラが時々話しかけてくれるようになり、その都度アレクの機嫌も回復する。
そして互いに剣技の話で盛り上がるのだが、そうこうして話が進んでいるうちに、なぜかサラと一緒に早朝の鍛錬をやることになった。
その時、アレクの隣にいたアイリーンは冷たく微笑んでいたのだが……。
こうしてアレクは毎朝サラと鍛錬に励むことになった。
サラもボルトの娘だからか父であるボルトの動きに似ており、残念ながらアレクと比べると力が足りないものの、剣での打ち込みや動きのスピードはとても早く、アレクにとっても良い練習相手でもあり、
そうして一緒に朝トレーニングをしているうちに二人の仲は少しずつ良くなり、良き友としてサラもアレクと一緒にいるようになる。
そして朝の鍛錬の中でのサラのいきなりの決意発表はアレクにとっては盛大な勘違いをしてしまうのも仕方なかったのかもしれない。
サラが自分の事を懸想しているとアレクが勘違いをしたことで、アレクの行動にも変化が起きる。
朝の稽古でサラを変に意識してしまい、鍛錬に集中出来ずにいた。そしてサラに一撃良いのをもらってからやっと正気に戻り、その後はいつも通りに稽古ができるといった日がしばらく続いた。
サラはそんなアレクのムラのある状態を不思議に思ってはいたのだが、もともと気分によって強くなったり、弱くなったりと実力に波のあるタイプなのかと勘違いしてしまいアレクを注意することもなかった。
アイリーンも二人の仲が良くなることが悔しくて仕方がなかったが、本性を出すことを恐れたのか、場の空気を読んで我慢することにした。
そうしてしばらく全員が変な勘違いをする日が続いていたのだが、ある日サラの一言で事態が大きく変わることになる。
それはアレクとアイリーンが教室にいる時のこと、教室に入ってきたサラがアイリーンに話しかけてきた。
「ア、アイリーン様!ぜ、ぜひこの私をあなたの護衛騎士にならせてはいただけないでしょうか!」
サラの一言によって周囲は一気に鎮まり、その後すぐにヒソヒソと静かに会話する人たちが増えていった。
「サ、サラ、何故、アイリーンの護衛騎士になりたいんだ?」
困惑したアレクはサラに問いかける。
「え?は、はい、私は将来、騎士となりお二人にお仕えしたいと願っております。ただアレク様は充分お強いので護衛騎士として私は必要もなく到底務まらないと思っていますので、将来王妃になられるであろうアイリーン様のような美しくかつ、しっかりとされた方の下で今のうちにお仕えできればと思いまして……」
そしてサラはアイリーンの手を取り、片膝を地につけて首を垂れた。
「アイリーン様、ぜひこの私を貴女の護衛騎士として命じてくださいませ」
割と美形なサラがアイリーンに騎士として忠誠を誓う姿はまるで宝◯歌劇団だ。ここはベルバラかとアレクはツッコみたくなった。
それにアレクは思ったのだ。
「サラは俺に生涯この身を捧げたいとか言っていなかったか?」
「え?私はお二人に忠誠を誓い、生涯お仕えしたいと申しただけですが?」
(紛らわしいんだよ!)
今日のアレクはツッコミが多い。
そして事の顛末を理解したアイリーンはとても満足した顔で答えた。
「サラ、貴女のような騎士を私は望んでおりましたわ。是非、私の護衛騎士となってくださいまし」
「ほ、本当ですか!?」
「はい、本日より貴女を私の護衛騎士に命じます」
「あ、ありがたき幸せ!」
サラは涙を流しながら首を垂れる。そしてアイリーンは鍛錬用の短剣を取り出してサラの肩に剣を当てた。
その後、騎士の誓いを高らかに宣言し、サラはアイリーンの護衛騎士となったのである。
周囲の生徒たちは拍手をして盛大に二人を祝福した!
数人の女子生徒たちは「す、素敵だわ!」「鼻血が出そう」「尊いわ!」などと騒いでいた。
それ以降、サラとアイリーンは一部の女生徒達から違う視線を送られる事になる。
そうした中でアレクは何やら悔しそうに涙を流していたようだ。
♢
女生徒A「あ!アイリーン様とサラ様がこちらにいらっしゃいますわ!」
女生徒B「お二人ともお美しい……なんて尊いのでしょう!」
女生徒A「あ!サラ様がアイリーン様の手を取ってらっしゃいますわ!」
女生徒B「もう私、我慢ができません!は、鼻血が出そう……」
女生徒A「あ、アイリーン様……」
アイリーン「あなた、素敵なお顔から血が出ていらっしゃいますよ?これでお拭きなさい」
そう言ってアイリーンはハンカチを女生徒Bにそっと手渡した。
女生徒B「あ!アイリーン様!ありがとうございます!すぐに洗ってお返ししますので!」
アイリーン「大丈夫よ私、いつも2枚ハンカチを持ってますから、あなたに差し上げるわ」
女生徒B「あ、ありがとうございます!家宝にします!」
アイリーン「まあ!大袈裟ね。そんなに大した物ではありませんのに……」
女生徒B「いえいえ!そんなことありません!」
アレク「あ!アイリーン!おはよう!」
アイリーン「あら♡アレク様♡おはようございます♡」
アレク「今日も良い天気だね!あ、サラもいたんだね。さあ、教室に入ろうか」
アイリーン「ええ、そうですわね♡」
サラ「はい!」
サラとアイリーンを伴って教室に入るアレク。
そして二人(アレクは数に入っていない)の入室を見守る女生徒AとB。
女生徒A「アイリーン様、素敵だったわね」
女生徒B「ええ、本当に……、今日のサラ様も凛々しくて素敵だったわ」
女生徒A・B「「今日も眼福でしたわ〜!」」
一部の女生徒の間で密かに「花園」と呼ばれるアイリーンとサラのファンクラブができるのであった。
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