第9話 モブ王子剣を習う
アレクが魔法を使えるようになって3年が経ちアレクも8歳になった。弟のイスタルは5歳。妹のマリアは3歳になった。
アレクは毎日毎日、魔法の訓練と王族としてのマナーや歴史などの教育を受けていた。
そう、毎日毎日。
つまりは昔の軍歌にあるところの
「月月火水木金金」
である。
「土日」無し
休み無し。
さすがにこのようなハードモードの人生をアレクも前世でも経験していなかった。
(当たり前だが)
毎日が日曜日なら……。
朝6時起床。
着替えてから朝の運動という名の訓練。
7時半に汗を流したら着替えて両親に挨拶。
8時朝食。
9時から勉強(アバウト先生の講義)
11時昼食と休憩。
13時魔法の訓練(実習)担当ガルシア。
16時お風呂。着替えて両親に挨拶。
17時夕食。
19時魔法の勉強(座学)
21時就寝。
アレクはこの3年間、これを毎日毎日、同じ事を繰り返している。
日々、アバウト先生の厳しいマナー講座やガルシア師匠の過酷な指導のもと、死にものぐるいで魔法の修行をさせられていた。
妹のマリアの笑顔を見ること無しでは無事生きていられたかわからないほど僅か七歳児には過酷な日々であった。
「兄さま〜」
「マ、マリア〜〜!」
「兄さま、どうしてないてるの?」
「マリアに会えたから嬉しくて泣いてるんだよ」
「でもマリア、まいにちアレク兄さまにあってるよ?」
「僕はマリアに毎日会えて嬉しいんだよ」
「そうなの?」
「うん!そうだよ!!かわいいマリアの顔を見れたら疲れなんてなくなっちゃった!」
「よかった〜!マリアうれしい!」
(うぅぅ俺の天使!!)
そう、唯一の癒しであるマリアの存在はアレクの魂の渇きを潤してくれた。
神はアレクの希望を叶えたかのようにマリアは可愛くて甘えん坊で天使のような女の子だった。
無邪気な笑顔を見るたびにアレクの兄願望は満たされていた。
一方で弟のイスタルはアレクほどではないが5歳で王族の教養はちゃんと身につけており礼儀正しく王族らしい子供であった。
ただし、兄のアレクと比べて魔法はまだ使えず、それが兄との比較にされてとても悔しいようだ。
マリアほどにはアレクに懐かず、大人しいが何を考えているか全くわからないタイプの子供だった。
アレクも修行三昧のためイスタルと仲良くする余裕もなく、ガルシア師匠の魔法の修行に付き合わされていたため、ますますイスタルとの兄弟間の距離は開いてしまった。
アレクが9歳の誕生日を迎えて、父である王のもとに呼び出された。
王の執務室の前でアレクは1人考える。
(最近の父上は結構俺に厳しくてなんか苦手なんだよな。特にマリアと一緒に居ようとしたらすぐに追い出されるもんな。今回は何があるんだろう。もしかして、やはり俺は実の子ではないから廃嫡するってことか?まあ、魔法も結構使えるようになったから、廃嫡されても冒険者として生活できるかもしれないしな。あ!でも母上とマリアにもう会えなくなるのか?くぅぅ!母上はともかくマリアに会えなくなるのは嫌だ!はっ!でも血が繋がっていないのであれば将来名のある冒険者、いや勇者になればマリアと結婚することもできるかもしれない。そうなったら毎日マリアと一緒にいられるのか。)
にへへへ。
アレクが締まらない顔をしている中、護衛たちから連絡があり、王から執務室への入室の許可が降りたとのこと。
アレクは執務室に入る。
「父上、アレクただ今参りました」
「アレクか、こちらに来なさい」
「はい」
「アレクよ。毎日欠かさず魔法の訓練をしているらしいな。ガルシアからは目覚ましい成長をしていると聞いている。お前も12歳になればこの王都にある学園に通うことになる。それまでに魔法だけではなく、剣術を学ぶ必要がある。だからお前にはこれから魔法だけではなく、剣術の修行もやってもらう。」
「は?」
「うん?嫌か?」
「い、いえ、ありがたく思います。」
(な、なんだってぇぇぇ!聞いてねぇぇぇよぉぉ!ただえさえキツいのにこれ以上キツくなるのかよぉぉぉ!)
「そうか、では明日からお前を指導する剣の師匠となるボルトだ。こいつは騎士団のなかでも屈指の実力を持ち、実際何度も戦いにおいて活躍していた者だ。少々厳しくはあるが頑張って更なる実力を身につけるべく精進しなさい。」
「あ、はい」
アレクが気のない返事をすると、王の隣にいたゴツいおっさんが前に出てきた。
「わしはボルトと申します。明日から王子に剣術を教えてやることになりました。ちょっと厳しいかもしれませんが、なに、死にはしませんよ。多少の怪我は救護室でポーションを飲めばすぐに治せますからな。まあ、基礎しか教えてやれんのが残念ですが、学園に入るまでには学園一の実力になるように強くなっていただきますぞ?まあ、わしがおれば大丈夫じゃ!安心してくだされ!がっはっはっ!」
「はあ、あはは、ハハハ、はぁ……」
アレクは渇いた笑顔でその場に立ち尽くした。
(くぅぅぅ、やるしか、ないのか)
さらば俺の青春。じゃなかった、子供時代。
ていうか、あと3年後には王都の学園に通うのか。
3年の我慢だ。剣術さえ身につけば冒険者になってから活躍できる。そうすれば有名になって楽に生活できるはずだ。
アレクはよくわからない期待を持ちながら前向きに考えることにした。
「ボルトはもともと傭兵上がりでな。あまりに強かったので騎士団に入ってもらったのだ。言葉遣いは荒いが、実力は確かだ!安心して稽古に取り組みなさい」
(安心なんかできねぇよ!!)
父王のフォローにもなっていない励ましの言葉をもらった後、アレクは執務室を出た。
もう、やるしかねー(涙)
次の日からアレクの修行はさらに過酷さを増した。
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