第3話 犯人は宇宙人

私の名はアマリア。


アルタイルから地球の探索に来た。


主な任務は地球の文明と歴史、今後の未来まで記録すること。


地球と呼ばれる星の担当になってからは地球付近の月と呼ばれる衛生の裏側にある基地を拠点とし、定期的に偵察機に乗り込み、地球の探査に行っている。


私の担当地域は日本という島国だ。


今日は東京という都市の調査をしていた。東京湾から少し離れた海岸沿いを飛行していた。


その理由は今回とある海底に居住エリアをつくることになりその下見に来ていたのだが、視察の途中で地球人が海に浮かんでいる所を発見した。


「何をしているのかな」


しばらく観察していると地球人が波に呑まれて勝手に沈んでいった。


慌てて様子を見に行くと波にのまれた地球人は大量に海水を飲み込んで意識を失い、海に沈んでいるところを発見した。


アマリアは下手に干渉せずにこのまま見捨てようかと思ったが、少し考えてせっかくの機会だから助けてみようと思うに至った。


そして折角助けるのであれば、最近この日本という国の一部の人間たちに流行っている異世界への転生経験を題材にした物語があることを思い出した。


もし地球人がその物語の様に異世界に転生し、経験するとしたらどのような反応をし、魂の経験を積むのか。しかし、地球人への過度な干渉を行えば、あとで上司に怒られるかもしれない。


しばらく考え、そのあとアマリアの好奇心の方が勝った。


まず、この溺死した地球人を蘇生させ、他の惑星に移住させる。そして他の惑星で経験したものをモニタリングし、それらを母星に報告するというものだ。


高度に進化した星で育ったアマリアは知的高等生物である。


地球の科学文明は数万年遅れており、自分たちの科学文明では他の惑星に行けないために、それを根拠に宇宙人の存在まで否定している愚かな知性レベルの生き物だ。


そして人間は猿から進化したという学説をまるで真実かのように信じ、他の見解を頑なに否定し信じようとしない。彼らの先祖たちが未来の子孫たちがこの様なレベルまで退化するとは思いもしないだろう。


今の地球人類はまるで自分たちが積み上げてきた積木のオモチャに全く違うピースが出てきた時に、それを載せると全てが崩壊してしまうと信じ込んで新しい知識を拒絶しているようだ。


アマリアは地球人を蟻の観察のように観察し、文明だけでなく、人間の生態や魂の構成などを研究し、観察データをまとめて母星に報告している。


アマリアは溺死した地球人を偵察機で回収し、母船へと運んだ。そして蘇生措置を施し、地球人が異世界と呼ぶ世界に近い惑星を調べた。


『よし、この星が良いな』


それは数万年前に滅びた星だった。


地球の数百年前のある地域に似た文明を有しており、地球人が魔法と呼ぶ力を使える種族が住んでいる地域もあった。


そしてモンスターに近い爬虫類型の巨大生物や一部、人類にとって強大な天敵なども多数生息している惑星だった。


どうせ、滅びた星だし、多少文明に干渉しても問題ないと考え、タイムトラベルと異次元ワープを併用した機械を使って、地球人を転送した。そして念のため、現地の人類型のDNAに合わせて人体の生体操作を施し、ついでにモニタリングしやすいよう体内にチップを埋め込んでおいた。


『よし!実験体である地球人!楽しい異世界体験をしてきてね♡』


アマリアは愉快な顔で目の前のスイッチを押す。


そして目の前に浮かぶ地球人はテレポートで移動したようで目の前から消え去った。


アレク(佐藤明)の異世界転生。


その犯人はなんと宇宙人だったのだ。

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