モブ王子幼少編
第2話 モブ王子の転生記録
「ふ、ふぇぇぇぇぇぇ!?」
(な、なんでだーーーー!?)
う、嘘だ……。
これは悪い夢だ。
現実逃避してみたものの、試しにほっぺたをつねってみると痛かった。
転生して浮かれていた僕に冷や水を頭にぶっかけられたようだ。
今まで異世界転生で浮かれていた僕にはとてもショックだった。
それは僕が2歳になった頃、
母の部屋に行った時のことだ。
ベッドの近くに姿見の大きな鏡があったので今の自分の姿を見てみたくなり、ヨジヨジと鏡に近づいてみた。すると鏡に映った自分の姿は前世の子供の頃の姿そのものだったのだ。
違うのは髪の色と目の色だけ。
顔や髪型もほとんど前世と同じだった。
な、
なんで、
せっかく、異世界転生したのに・・・・・・。
♢
僕の名前は佐藤明。
高校2年生。
平凡な容姿のせいなのか、クラスでは至極目立たない存在だった。
友人は2人。
よく漫画・ゲームの話する濃ゆい仲間だ。
そして友達以外のクラスメイトとはほとんど会話したことはない。
学校の成績はクラスで中の下。
中学生三年の時に同じクラスのエリート層からいじめに遭い不登校になるという辛い経験をした。
高校からはいじめには合わないように学校を選んでいたので今のところ穏やかな学校生活を送っている。
いじめに合わないようには、
とにかく変に目立たないこと。
イジメに合うきっかけをつくらないこと。
これが僕の学校生活における命題である。
しかし、こういったことは意図して防げるのなら苦労はしない。
それは夏休みの時のこと、
そう貴重な夏休み。
妹が海に行きたいと言うので両親は家族で海水浴に行こうということになった。
僕は自宅で有意義な時間(ゲーム・漫画)を過ごす予定だったが、「小遣い」という弱味を握られたために泣く泣く一緒に行くことになった。
しかし、海水浴場には中学の時にいじめていた連中がいたのだ。
僕は浜辺ではアイツらと出会う可能性があると思い、こそこそと目立たないように移動して少し離れたところで海に入り、泳がずに浮き輪でぷかぷかと海に浮かんでいた。
ただ、
気がつけば沖に流され、助けを呼ぶ声も届かず、困惑しているとすぐに大きな波にのみこまれてしまった。
当然、泳ぐことも出来ずにもがいている中で海水をしこたま飲み、溺れて意識を失ってしまった。
しばらくして意識が戻ると、まるで中世の豪華な屋敷の部屋に、ふかふかのベットに横たわる金髪白人の綺麗な女性の腕の中で赤子のように抱かれていた。
ここはどこだ?
この美女は女神さま?
「あら、アレクちゃん起きちゃったの?まだねんねしてて良いのよ♡」
「あ、あぶぅ!?」
そう、僕は異世界に転生したらしい。
♢
異世界転生をしてからしばらく経った。
生まれ変わったばかりの僕はまだ赤子である。何故か前世の記憶を持ったままに新しい人生を得ることになった。
異世界転生。
これは嬉しくもあるが少し悲しいところもあった。
何故かって?
それは、さ、
ついこないだまで僕は高校生だったんだよ。
それがさ、
赤ちゃんみたいに泣かないまでも、おしっこやう◯こは我慢できず、垂れ流し・・・・・・だし、乳母やメイドの若いお姉さんたちにオムツを交換され、男の大事な部分を年若い異性のメイドさんたちに見られるという羞恥。
メイドたちには僕のちん◯んを見て可愛らしいと微笑まれ、ちん◯んやおしりをふかれるという羞恥。
これが何より恥ずかしかった。
母乳は母ではなく乳母が担当してくれているよ。母と同世代みたいで、物腰柔らかで、可愛らしい、全体的にふくよかな人。
母乳は少し甘くて美味しかった。ゲップが出るまで揺らされたり少し背中を叩かれたりするのがちょっとキツかった。
生まれて間もない頃、首がすわるまでは身動きとれず、数ヶ月経ってからようやく動くことができた。
そのうちハイハイが出来る様になり、ようやく移動できるかと思ったら、ここは中世のような世界だからなのか、皆、土足で移動しているため床は汚く、メイドさんたちの監視もあるので勝手に床を這いずり回ることはできなかった。
ただ、僕が生まれて良かった事。はっきりわかった事がある。
それは王子として生まれたこと。
両親はもちろん容姿端麗。
父は国王にして超イケメン。
王妃たる母は超絶美女である。
当然ながら両親の容姿を、そのDNAを引き継いでいることだろう。
・・・・・・と思う。
僕は内心思った。
(ゆくゆくは王様。将来は異世界転生によくあるモテモテ異世界ハーレムできるんじゃね?)
・・・・・・むふふ。
いけね。
思わず顔がにやけてしまう。
いやあ、これからの人生生まれながらにして勝ち組かぁ。
うひ、
うひひ、
笑いが止まらないね。
うへへ・・・・・・。
この日、サトゥーラ王国に第一王子アレク・サトゥーラが誕生した。
王城では王子誕生の報に嬉々とし、王国民は拍手喝采に湧き上がる。そして誰もが王子誕生を祝った。
王城では王子誕生ともあり、侍従たちは大忙しである。
そして生まれたばかりの赤子を見て可愛い可愛いと若いメイドたちはアレクを愛でるのであったが、時折、メイドたちの間では密かに赤子にしては気味の悪い笑みをしているとも噂されるのであった。
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