-15- いちごミルクの女の子
大星と隣の席になって数日間は、緊張して上手く話すことが出来なかった。
でも、休み時間に大星が、
「何を読んでるの?」
と、聞いてくれた。
「うーん。説明するのが上手くなくて。」
「そっか。」
せっかく話すチャンスだったのに、棒に振ってしまった。
昼休みに真夏がお弁当箱を開けると、
「うわっ。加藤の弁当、美味そう!」
「え…」
「いつもこんな感じ?」
「うん。お母さんが、料理研究家で。」
「すご!」
「私のと、交換する?」
「え、いいの?よっしゃあ!」
「大星ー。飯食おうぜ!」
「おう!これ、加藤の弁当。」
「え、何それ。ウケるんだけど。」
大星は、男子の輪の中に入っていった。
交換してくれた大星の弁当は、コンビニのサンドイッチとカフェオレだった。
「加藤さん、お弁当、交換して損してるよ!私のいちごミルクあげるっ。」
斜め前の席の茶髪の女の子が、振り返って真夏に声をかけた。
「え…」
「あ、いちごミルク、嫌いだった?」
「ううん、大好き。」
「私もなんだあ。私の名前、知ってる?」
「乃木さんだよね。乃木、ユウナさん。」
「ユウナでいいよ。真夏って呼んでいい?」
「うん。」
「真夏とずっと喋ってみたかったんだ。大人っぽくて、憧れてたというか、ね。だから、いちごミルク好きなんて知らなかった。まあ、そもそも好きか分からないものあげるなって話なんだけどね。」
大人っぽいんじゃなくて、不器用なだけだよ。それを、そういう風に、誤魔化してるだけ。
真夏は、心の中で思った。
「私、いつもお昼、屋上庭園で一人で食べてたんだけど、じゃじゃん。これから、真夏と一緒に食べてもいいよ。」
「いいの?」
「うん。」
真夏は、段々と、昼休みに昌彦にLINEをしなくなっていった。
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