生命の鼓動
俺の中に芽生えた反骨精神、大いなる者への反逆。
人の身では恐れ多いとさえ思える思想に、『幽霊』である俺は躊躇する事は無い。
何故かそうした者への恐怖は薄く、怒りさえ感じている程。
よくある悪しき者が聖なる者を憎むとかそういう補正がかかっているのかも知れないが、
それすらも心地いい。
「・・・心機一転、決意を新たに出発する感じなのだが、最大の問題があるんだよな~」
そう、俺には最大の問題がある。
それは・・・・。
「物に触る事が出来ないってね・・・・」
幽霊なのだから仕方ないと諦めてしまいそうになるが、流石にどうなのよ。
冒険はこれからだって感じで張り切った心が萎みそうになるが、諦めてなるものか。
俺が出来なくてもそれ以外の方法が必ずある筈だ・・・・そう、何かが。
俺はそう決意すると、手にした魂を手持無沙汰にぷにぷにしてやる。
「んんん、スライムゼリーっぽい触感・・・・・」
近頃感じた事の無い久方ぶりの触感に、思考能力が低下するのを感じる。
ぷにぷに楽しい・・・・ぷにぷに・・・・ぷに? ぷに?
「・・・・ぷにぷに?」
俺が今悩んでいる物事と正反対の感触という感覚に、一瞬頭がフリーズするが・・・。
「いや、触れてるじゃねえか」
いきなり手に入った解答に、理解するべく思考を巡らせてみる。
「物には触れないがこれには触れる・・・そしてこれはこの世界の栄養みたいなもんで・・・世界を構成する要素みたいなもの?」
自問自答しておいてますます分からんが、何となく答えに近づいている気もする。
「んんん~~~~」
ぐるぐると思考は回るが明確な答えには至らない。
そもそも塊に触れるからって何なんだ? 塊が気持ちいいからといって何にもならんし、
俺が欲しいのは現実に影響を与える手段であって・・・・。
「・・・ワウン?」
「・・・んん?」
唐突に聞こえた獣の声。何が起こったのかと目線を下げてみるとそこには・・・。
「子犬?」
「ワン!」
正しく子犬としか呼べないモコモコの綿毛が両手に収まっていた。
無意識にむにむにと触ってみるが、触感はスライムゼリーとはまったくの別物。
白色という特徴は一緒なのだが、それには生命力が溢れていた。
「・・・・もしかして、あの白いのには生命に変化する性質があるって事か?」
「ワウゥウン?」
俺が自問していると子犬は分かる訳ないだろうと首を捻って声を絞り出した。
まぁ、当然理解不能だし、今の俺としても結果が伴えば仮定はどうでもいい。
つまるところ、手段を手に入れたという訳だ。
「ならよろしくな、犬っぽい奴」
「ワ・・・ワウン?」
犬っぽいと言われた事で多少自信を無くしたのか、曖昧な返事を返してくれるが、裏を返せば高い知能の証。これならば抵抗勢力を構築するのも夢物語ではあるまい。
「ふっふふふふふ」
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