第11話 態度軟化
「ほぉ?お土産とな?」
「はい…」
「ふむ。気が利くな。では頂戴しようとする。開けてもよいか?」
「どうぞ…!」
俺の言葉を聞くやいなや
「ほう?」
この反応は気に入ったのか?それとも…
固唾をのんで俺(とオロチ)が注目するなか、
「桜餅と柿の葉寿司か。外に行かないと手に入れられない代物じゃが、引きこもりのわしには手に入れるのが難しいものなんじゃ。気に入った!どうぞゆっくりしていってくれ。」
と今までとは打って変わって、穏やかな笑みで話しかけてきた。
ホッとしつつ、「失礼します」と言いながらその場であぐらを組む。
さっきのヒヤヒヤで冷や汗がすごいことになっている。
更に井戸の底とあってジメジメとしているから、気持ち悪いことこの上ない。
しかしここは相手の棲み家だ。
ここでなにか言うと、せっかく機嫌が良くなった
だから、耐えろ、耐えろ、耐えろ――
「ん?このジメジメした感じが苦手なようじゃなぁ。」
「ッ!」
いきなり自分が思っていたことを言い当てられて、ビクッとする。
そんな俺の様子を見て
「図星か。そんなに自分の思っていることが顔に出ているうちは日本統一なんて無理じゃぞ。この世界は騙しあいで生き残っていくんだからな。」
「申し訳ないです…」
やっぱり相手も神なだけあって、俺の何枚も上手なようだ。
ただ、
そう思っていつと、
「スキル発動。
瞬間。ジメジメしていたのが一瞬にして消え、過ごしやすいものになる。
「な…」
絶句している俺を前に得意げにフフンと鼻を鳴らす。
「これがわしのスキルの一つ、
今のは、井戸の中にあった水蒸気を水に変えて、井戸の外に出しておいたと説明する
「すげぇ…!」
と声が出てしまう。
自分のよくわからないスキルとは違い、ものすごく便利なスキルだ。
ちょっと、凹む。
一方、その俺の言葉で更に機嫌が良くなった
「で、なんの要件なんじゃ?」
と聞いてくる。
それで本来の要件を思い出した俺は今までの出来事を説明する。
昨日の出来事について話し終わると、先程までの笑顔とは違い、仏頂面をしている。そのせいで、今
「つまり、我が地方の地方神である
「いや、まだ交渉決裂ということは…」
「でも契約がまとまっているわけではないんじゃな?」
「…はい」
「あのな、常識的に考えて地方神と交渉成立していないのに、わしのような県神と交渉をするっていうのはあまり良くないと思うんじゃが?」
「…ですよね。おっしゃるとおりでだと思います。」
やっぱり、県神と交渉する前に
再び面倒なことを目の前に突きつけられて、目の前が真っ暗になる。
俺の表情が暗くなっていくのを見て、仏頂面だった
「しかしな、それは常識的に考えてのことじゃ。実は、わしも
「え…?」
予想外の展開に何も言えなくなる。
――県神って、地方神のことを尊敬してるんじゃないの⁉
「あいつな」
一度言葉を切って、
「引きこもりの風上にも置けないんじゃよ!」
「……ほえ?」
あまりにも意味のわからない理由に俺は変な声を出してしまう。
というか、さっきから、色々自分の考えていたこの世界へのイメージとのギャップで頭がバグりまくってる。
そんな俺を脇目に愚痴をぶちまけていく
「まずな、引きこもりって人に迷惑をかけたらだめだと思うんじゃ。自分の仕事をやって引きこもるならまだしも自分の機嫌で引き込もるとか、まじでありえない。言語道断じゃ!ああいうのがいるせいで、引きこもりのイメージが下がるんじゃよ!」
「はぁ」
「じゃから、大宮神!精一杯サポートさせてもらうよ!安心しておくれ!」
「は、はぁ」
だめだ、頭が混乱するあまり、はぁ、しか言えてない
まあとりあえず……ラッキーだった…のかな?
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