第9話 切り替え
「手強いな…」
ピシャリと閉められた障子を見ながらつぶやく。
そこから動かない障子を見ていると様々な思いが浮かんでくる。
――
――自分の主張に固執することはなかったのではないか。
――一番失敗してはいけない話し合いでやらかしてしまったのではないか。
ネガティブな考えで頭が一杯になって、拳を固く握りしめる。
すると、オロチがすっと立ち上がり俺の後ろまでやってきて、
「いつまでもうじうじしているわけにもいけないですし…他の神のところに行ってみましょう」
「え…?でも…
「いいんですよ。『やるな』とは言われてないじゃないですか。あの上から目線の更年――あの
そうやって言い切るオロチ。
うじうじしている俺とは対象的に飄々としている。
この時代では今のようなことは日常茶飯事なのだろうか。
「はいはい切り替え―!次はどこに行きます?」
口角をあげて、オロチが話しかけてくる。
――ちがう。オロチだって落ち込んでるけど、俺がきりかえるためにわざと明るく振る舞ってるんだ。
どう見ても無理やり作った笑顔。
でも今の俺にはその思いで十分だった。
どうやら、交渉決裂のたびに落ち込んでいてはだめらしい。
これ以上ない悪い幕開けに間違いない。
この先のことが思いやられるけど、しっかりやっていかないとな。
「俺全く他の県神のことわからないからさ、オロチが選んでくれない?」
「あー、そうですよね。わかりました。」
そこから各県神のことを思い浮かべながらうんうんと頭を抱えて悩んでいたが、屋がて決め終わったのか、俺の方に向き直って、
「和歌山県に
「えーっと、
「はい!じゃあ早速いきま――」
「あ、ちょっと待って!その
「えーと……食べ物なら何でも好きだった気がしますけど…どうしたんですか?」
「あー、ほら。さっきみたいに機嫌を損ねられたら困るじゃん?俺が今までいた世界ではどこかを訪ねるときは
「なるほど…。大宮神って意外と賢いんですね!」
「そうだろ。って……意外とじゃないだろ!」
「あー、はい。そうですね。」
「ちょっとぉ⁉オロチィ⁉」
そうやって俺は手土産を一緒に調達してから和歌山県を目指した。
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神様紹介NO.3
古事記の中でも割と最初の方に出てくる神。
水の分配を司る神様。
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