四角の金魚は魂を運ぶ
長月瓦礫
四角の金魚は魂を運ぶ
ダンボール製の金魚が浮かんでいる。
テープで綺麗に封をされ、宝石を丁寧に運んでいる。
カラフルなマスキングテープを揺らし、虚空を泳ぐ。
宝石が壊れないようにたくさんのクッションを詰めている。
金魚は女神さまが流した涙の海をゆうゆうと泳ぐ。
女神さまの涙は人間界に溶けた。
人間が長生きできるのは女神の息吹が体内を回っているからだ。
人間には女神さまのご加護がついている。
人間は死んだあと、綺麗な宝石になる。
どうしてそうなるかっていうと、女神さまが人間が美しいものであると信じているからだ。
金魚は知っている。
ダンボールは破かれる。
ダンボールは潰される。
ダンボールは積まれる。
中身が何なのかも知らないで、人間はダンボールを適当に扱うのだ。
彼らは段ボールを紙でできた丈夫な箱としか思っていないらしい。
女神さまが悲しむから、真実は伝えない。
金魚は揺れながら、人間界へ魂を届ける。
道を歩いている人々の姿、空の透き通るような青さ。
太陽の光の白さと眩しさ。金魚はあまりの美しさに息をのんだ。
女神さまが涙を流されるのも分かったような気がした。
魂はこれを見て何を思うのだろう。
ダンボールの金魚は揺れながら魂を運ぶ
女神さまがそういうのなら、この世界は美しい。
金魚に悲しいことが起きたとしても。
四角の金魚は魂を運ぶ 長月瓦礫 @debrisbottle00
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