EP4 偽り


 女40歳

 ニックネームハム

 職業自営業

 趣味運動


 男35歳

 ニックネーム夏色

 職業公務員

 趣味ソロキャンプ



男「初めまして」


女「初めまして」


男「今から会えませんか?」


女「先約があるので少しの時間なら大丈夫です」


男「では、今から向かいますね」


女「はい」



 待ち合わせ場所にて。



男「ハムさんですか?」


女「夏色さん?」


男「写真の通り綺麗な人でよかったぁ」


女「そんな事ないでしょ」


男「そんな事ありますよ!それじゃあここでは何ですし移動しますか」


女「先ほども言いましたが時間があまりないので近くにしてもらえますか」


男「もちろんです」


 男が選んだ店に入る。


女「こんな所にお店なんてあったんだ」


男「ここ僕の行きつけなんですよ、雰囲気いいでしょう」


女「そうですね」


 男が椅子を引いて女を座らた。


男「ハムさん髪綺麗ですね」


女「そんな褒めても何も出ませんよ」


男「いえいえ、出すのはこちらの方ですから」


女「どうゆう意味?」


男「お気になさらず。それより何か頼みましょう」


女「‥‥はぁ」


男「何飲みます?」


 男はメニューを女に見せる。


女「じゃあビールで」


男「分かりました」


 男はビールを二つとつまみを頼んだ。


女「いつもここに女性を連れてくるんですか?」


男「いつもは連れてきませんよ。女性で一緒に来たのはハムさんが初めてです」


女「そんな訳ないでしょう。慣れてるように見えるわ」


男「正直このサイトで会った女性は何人かいます。でもハムさん程綺麗な人は初めてですよ」


女「まぁそうゆう事にしておきましょう」


男「絶対信じてないですよね」


 ビールとつまみが到着する。


女「とりあえず乾杯でもしましょう」


男「そうですね!」


 乾杯する。


男「そう言えばハムさん先約があるって言ってましたけど何時までいけますか?」


女「とりあえず一時間くらいかな」


男「よかったぁ」


女「何がよかったの?」


男「一時間は確実にハムさんといられると思うと嬉しくて」


女「まだ私の事よく知らないでしょう」


男「会った瞬間にビビってきたんですよ」


女「今どきビビって」


 女は鼻で笑った。


男「やっと笑ってくれましたね」


女「え?」


男「ハムさんもしかして緊張してます?」


女「そんな、緊張なんてしてないわ」


男「ずっと顔がこわばってたから」


女「そう見える?」


男「はい」


女「実は私人をあまり信じれなくて、勝手に壁を作っちゃって、だからそう見えたのかも」


男「どうして信じられないんですか?」


女「ちょっと昔色々あって‥‥」


男「大丈夫ですよ。僕のことは信じてください」


 男が女の手を握った。


女「ちょっと‥‥何するのよ」


男「え?ハムさん顔がすごく赤くなってますよ。もう酔っ払いました?」


女「酔ってないわ」


男「僕達会ったばかりですけどきっと相性いい気がします」


女「何言ってるんだか」


男「僕の家すぐそこなんですけど来ません?」


女「ちょっと。誘うにしても早過ぎない?それに私先約あるって言ったよね?」


男「そうでしたね。すみません。じゃあこれ飲んだら解散しましょう」


女「これ飲んだらってまだ一時間経ってないけど」


男「あれ?もしかしてもっと僕と居たいんですか?」


女「そんなことないけど、少しだけなら伸ばせるわよ」


男「本当ですか?じゃあもっと色々お話ししましょう」


女「そうね」


男「そう言えば趣味に運動って書いてましたけど、どんな事してるんですか?」


女「基本はジム行ったりヨガ教室も行ってる」


男「ハムさんスタイルいいですもんね」


女「そんな事ないけど、一応気は使ってるつもり」


男「僕の事も何か聞いてくれます?」


女「あ、うん。それじゃあ結婚とかしてるの?」


男「ハムさんったら質問がおかしいですよ。結婚してたらマッチングアプリなんてしないですよ」


女「それもそうね、ごめんなさい」


男「ハムさんは恋人とかいないんですか?」


女「居たらマッチングアプリなんてしないわよ。あっ‥‥」


男「フフッ。僕たち似てますね」


女「ほんとね」


 女は微笑みながら俯いた。


男「ハムさん‥‥」


女「ん?」


 女が顔を上げると男の顔がすぐ側まで迫っていた。


女「‥‥‥」


男「逃げないってことはいいって事ですよね」


 女は黙って目を瞑った。


男「そう言えばもう一時間経ちましたね」


女「はっ‥‥。からかわないでよ」


男「ハムさんって純粋なんですね。可愛い‥‥」


女「ふざけるんなら本当にもう行くわよ」


男「わかりました。では、また会えたらいいですね」


女「‥‥本当に帰るんだから」


男「もしかして引き止めてほしいんですか?」


女「なんだか少し飲み足りない気もするけど‥‥」


男「素直じゃないんだから‥‥。でもいいですよ、二件目行きますか?」


女「そうね」


 支払いを男が済ませると二人は店を出て夜道を並んで歩いた。


男「次はどこにしますかね。って大丈夫ですか?」


女「急に酔いが回っちゃって」


男「飲み足りないって言ってたくせに‥‥。少し休みましょう」


女「うん」


 女は男に寄りかかりながら連れて行かれたのは男の家だった。


男「結局来ちゃいましたね」


女「なんかごめんなさい」


男「いいんですよ、元々誘ってましたし」


女「おじゃまします」


男「水持ってくるんで楽にしといて下さい」


女「ありがとう」


男「落ち着いたら送りますね」


女「‥‥うん」


男「寝ちゃダメですよ?」


女「寝る訳ないじゃない」


 女は少し残念そうに水を飲む。


男「少し落ち着きました?」


女「うん、ありがとう」


男「じゃあ、行きますか!」


女「うん」


男「どうしたんですか?歩けます?」


女「ねぇ、帰りたくないって言ったらどうする?」


男「それは困りますね。今日会ったばかりだし、それにハムさん先約はどうしたんですか?」


女「実を言うとね、先約があるってのは嘘だったの」


男「嘘?」


女「あまりいい人じゃなかったら帰る口実になるでしょ?だから予めそう言っておいたの。でも夏色さんならいいかなって」


男「そうだったんですね。じゃあ僕も正直言いますね」


女「うん」


男「実は僕女なんですよ」


女「え?女?」


男「はい、体は男ですけど心は女なんです」


女「待って頭が混乱して」


男「ハハッ、そうですよね。色々疑問ありますよね」


女「うん。まずなんでアプリしてるの?」


男「うーん。最初は綺麗な女性のしぐさとかを研究したくて登録したんです。男のままだと会いやすいじゃないですか?それに女性の方もこっちが男だと女らしくなるって言うか」


女「色っぽい事を研究出来るから?」


男「それもありますね」


女「なんかどうゆう反応していいのか分からないわ」


男「怒りました?」


女「怒ったっていうか‥‥。でも体は男なのよね?」


男「そうですよ」


女「ねぇ、私の体で研究してもいいわよ」


男「それって‥‥そうゆう事ですよね」


女「私もその気でいたから拍子抜けしたけど夏色さんに協力したいの」


男「分かりました。でも後腐れなく、ですよ」


女「分かってるわ」



 ぎこちなくスタートした二人は終わる事にはすっかり恋人のようになっていた。


 

 うーん。これは複雑ですね。二人共本心で向き合っているのか、どちらかが嘘をついているのか見極めない事にはなんとも言えませんが、その後、後腐れなくと言っていた男の方は積極的に女にチャットを送っていました。


 女の方はと言うと数回に一回返事を返す程度。連絡先の交換まではしなかったと言う事は‥‥。


 私的には悪くない展開ですが、少し物足りない気もしますね。

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いちご狩り @cakucaku

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