第3話 九尾

 ここまで来るのはとてもしんどかった、長時間馬車に揺られ、途中からは魔物に怯えながら歩き。

 生きた心地がしない道のりだった。


 だが帰りは違った、道を歩いても疲れることも魔物に怯えることもなかった。

 ゴブリンなどの低級の魔物にあっても瞬殺、俺の動きが早すぎて目で追うことすらできていなかった。


 が、その代わり俺も急激に強くなった自分の体に振り回され、何度も失敗をした。

 使っていた武器を折ってしまったり、軽くつかんだコップを割ってしまったり、今まではそんなことにはならなかったのに。

 

 強くなったという実感を得ることができてとても嬉しくなった。

『どうじゃ?強くなるというのは楽しいじゃろう?』


「はい!」


『お主がもっとレベルをあげればもっと契約の深度を深められる、そうすればもっと強くなれるぞ!』


「そうなんですか!?」


『そうともそうとも、おお忘れとった!そういえばスキルも増えとると思うぞ?』

『ステータスを開いてみよ』


「ステータス」

名前

デルド・ビール

レベル3

スキル

九尾化(一尾)


 九尾化、始めて聞くスキルだった。

 文字かしてなにかに化けるスキルだろう、だがそんな化けるスキルなんて始めて見た。

「これって?」


『おそらくまだ尻尾は一つじゃろうが九尾に化けることができるスキルじゃ!』

『わしと同じ狐になれるってことじゃよ』


「すごい…」

 九尾といえば昔話に出てくる伝説の生物だ。

 そんなすごいものになれるなんて…。


『とりあえず次の戦闘で使ってみるかの?』


「はい!!」

 楽しみだ、自分が強くなればそれは冒険者になることのできる確率があがるということだたから。


 しばらく歩いていると戦っている音が聞こえた。

『少し様子でもしに行くかの?』


「そうしましょうか」

 獲物の横取りはご法度、悪質であれば罪に問われることもある犯罪だ。

 気配を抑えながらゆっくりと近づく。

 すると襲っているオークの群れと襲われている商人の集団がいた。

 明らかに商人の集団が押されておりこのままではやばいということはわかる。


 俺は強くなった、今ならば戦うことができる。

 それはわかっているが恐怖で体が動かなかった。

「やっぱり俺、冒険者には…」


『今こそ九尾化を使うときじゃろう!そう怖がらなくとも良い、わしがついておる』


 その言葉に勇気づけられた、そうだ俺には神様とがついている。

 行ける、はず!


「す〜」

 深く息を吸って清新を落ち着かせる。

 そして、

「九尾化!」

 スキルを発動させた、すると頭からは狐の耳、お尻からは狐の尻尾が生えてくる。

『どうじゃ?より力がました気がするじゃろ?』


「はい、感じます」


『行ってくるのじゃ!』


「ふっ」

 俺は勢い良く飛び出す、スキルが体に馴染み使い方、そして戦い方が手にとるようにわかる。

 壊れて半分以上先がない剣でオークのお腹を切りつけ。

「狐火」

 燃やす。

 オークの体はみるみる焼けていきすぐに力尽きる。

 スキルの強さに俺は驚いた。

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