第2話 キスで強くなる!!
「ふふん、わしは偉いんだぞ!わかったか!!」
とてもいいドヤ顔でふんぞり返っているのは自称狐の神様であるシロ様だった。
「で、お主は何か悩みがあるんじゃろ?言うてみぃ言うてみぃ、大事な眷属であるお主の願いならば叶えてやろう」
「け、眷属…?」
聞き覚えのない言葉だった、少なくとも俺の家の付近では聞かない言葉だ。
「ん?知らんのか?ならば教えてやろう」
「眷属とは下僕ということだ!」
「……下僕って?」
「下僕は……奴隷かの?」
奴隷、これならば聞き覚えのある言葉だ。
今でも売買されていることがある奴隷。
奴隷とは隷属させられた人間を指す言葉であまり良いものではない。
俺が…奴隷…、そうビビってしまっているのに気づいたのだろう、慌てて言い訳をし始める。
「ま、まてまて!奴隷と言ってもこれは比喩じゃ比喩」
「ほんとに隷属しているわけでも命令に絶対服従というわけでもない!!」
「かる〜い契約みたいなものじゃ!」
「契約ってどんなの?」
「え〜と、わしが困っていたら助けてくれるっていうものかの?」
「あ、でもその変わりにお主の悩みを一つ解決してやるぞ!」
「そのくらいなら…」
そのくらいならば俺にも出来そうだ。
そう感じた、これは甘い考えかもしれないが少なくともこの狐の神様からは悪い雰囲気は感じられなかった。
「で、お主の悩みはなんじゃ?」
「ほうほう、それは辛かったのぉ?よし、わしが何とかしてやろう!!」
「強くなれれば良いんじゃろ?ならば簡単じゃぞ!わしとの契約の深度を深めれば強くなれる」
「どうやって深めるの?」
「鈴の音を聞いてからは疲れが少なかったろ?それはわしとの契約で少し強くなったからじゃ!」
「だからより強くなるために深度を深める、それを知った上で聞いてほしいのじゃがな?」
「深度を深めるためにはより濃厚に接触しなければならない、ということでキッスをしてほしいのだ!」
キス、それは好きあった異性がする神聖な行為で。
だからその、あの。
「キスすれば…強くなれるの?」
そう聞くと真っ白な狐の神様がほんのりと赤くなった気がした。
「そ、そうじゃぞ!わしとキッスをすればそれでいいんじゃ!」
「わかっ…た…それで強くなれるなら…!」
「ほほほ、そうかそうか、それはよいことじゃなぁ」
鼻の下が伸びている気がする、がおそらく気のせいだろう。
そのはずだ!
ちゅ
口と口が繋がり小さくリップ音が聞こえた。
すると俺の首筋の一部がほんのりと光った。
「よし、これで完了じゃ!わしと離れていても会話をすることができるようになったぞ!」
「あとは一番の都会まで行って冒険者とやらになりに行くんじゃ!」
「ほんとになれるのかな…」
不安げにそう尋ねると狐の神様は、
「それならばそこにあるあの大木、思おっきり押してみぃ」
言われるがままにぐっ!と押し込んだ。
するとものすごい音を立てながら大木は倒れる。
やばいと思いそれを思いっきりつかむと止まった。
「す、すごいですよ!こんな力が出るなんて…これならいけます!」
「そうじゃろうそうじゃろう!それでは行って来い!あ、でも数年に一回はここまで帰って来るんじゃぞ?わしに顔を見せに来るんじゃぞ!」
その言葉を聞きながら俺は山を下る、最後の
「わし好みの色男じゃったなぁ」
という言葉は耳に入らなかった。
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