第17話 彩は、大変に気分が、心地が良いのだ(1)

「彩さん、今日はこの台に座り、プレイをしてみると良いよ」


 淳史は、いつもの通りの優しい微笑み。


 そう、夫健太とは違う微笑み。


 以前は夫健太も、彩へとしてくれていた大変に優しく見える微笑み。


 でも淳史の事、様子を、良く見ればわかる通りの、大変に違和感のある笑み。


 未だ他人である彩へと気を遣う、と言うか?


 彩の御機嫌窺いをとる為だけの笑み。


 そう、彩が結婚生活の中で、既に忘れていた、雄が雌の機嫌をとる為だけに作られた笑みで淳史は、彼女の御機嫌伺いをしてくるのだ。


 それも、大袈裟過ぎるぐらいの笑みを彩へとくれるから。


 彩は大変に心地良い。


 そう、彩は、女性は、産まれてから結婚をする迄は、蝶よ花よと、両親から、お姫様扱いで育てられるのだ。


 だから彩の夫健太も、結婚前の恋人時代には、彼女へと良く微笑んでくれていた。


 でも結婚、一緒に生活を始めれば。


 彩はいつの間にか夫健太から、この作られた笑みを貰えなくなった、どころではない。


 妻達皆、感じているだろうと思われる違和感。


 そう、彩自身もふと気がつけば、健太の妻である自分自身が、雄に養ってもらっているから。


 毎日夫への御機嫌伺いばかり。


 夫が仕事から帰れば。


「あなた、お帰りなさい。今日もお疲れ様」と。


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