第3話 ある日の幼稚園……(3)

 でも彩が彼女達へと声をかけてもこの通りだよ。


 彩の娘の友人達のお母さん、ママさんかも知れない彼女達は、幼稚園から駐車場までの距離を全速力、休む事もなく走ってきたのだろうと傍から見てもわかる程の荒々しい息遣い。


 そう、自身の背を丸め、両腕を足の膝に手をかけ、屈み込みながら。


「はぁ、はぁ」


「やっと追いついた」


「間に合って良かった」と。


 三人組の女性達は彩の前に到着すると。自身のの乱れた息遣いを整えながら呟くのだ。


 そんな三人の様子を彩は少しばかり困惑しながら見詰め続けていると。


「隅田さん」

「沙也ちゃんのママ」

「沙也ちゃんのお母さん」


 三人組の幼稚園のママさん達は、『はぁ、はぁ』と艶やかな唇が開き、漏れていた荒い息遣いが整え終えると。


 自身の下げていた頭を上げ。背筋の方もピンと張り。伸ばせば。


 今度は彩へと笑みかけながら三人仲良く言葉をかけてきた。


 だから彩は、自身の首を傾げながら「はい」と、また返事を返したのだ。



 ◇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る