第2話 ある日の幼稚園……(2)

だって彼女のことを『隅田さん』と呼んだ。呼び止めた三人の女性達に関して彼女は、ほとんどと言って良い程面識が無い三人組……。


 まあ、偶に幼稚園内で会えば、偶然的に会えばね。すれ違いざまにお互いの口から。


『おはようございます』

『お疲れ様』

『さようなら』と。


 軽い程度の会釈や挨拶を交わす程度の認識しかない女性達。ママさん達なのだ。


 だから彼女自身が三人のママさん達に声をかけられ、振り返った瞬時に、自分に対して三人が何のようだろうと思うだけではなく。


(このママさん達、良く私の名字を知っていたな)と。


 首肯しながら感心したい衝動に駆られたぐらいだから。


 そう、彼女、自身も思ったぐらいだからね。


 でも彩自身の事を息遣いを荒くしながらも、駆け足で追いかけてきてくれた三人組だから。彩自身も彼女達の事を無視、無下に扱う訳にはいかないのだよ。


 だって三人組の女性達は、彩自身と同じ幼稚園に子供を通わす母親達であり。


 彩の娘沙也の名を呼び、呼んだよんだ叫んださけんだと言う事は?


 彩の娘である沙也の仲の良い友達のお母様方、ママさん達である可能性が大なのだ。


 まあ、そう言った訳もあるからね、彩自身は彼女達の事を無視、放置して、自身の愛車に乗り込み、エンジンを始動、パーキングからドライブへとギヤを入れ急発進──。


 その場を去る。立ち去っていく訳にはいかない。


 だから彩は、彼女達に対して当たり障りの無い表情と口調で。


「あの、私に何かようですか?」と問いかける。


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